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4話
「むっちゃん、それはっ‼」
颯介が止めようとしたが遅かった。
むつの手のひらから、大きく燃え上がる炎がうまれた。そして、それは、颯介や狐たちを避けるようにして広がり、窓を割って外に出ていった。
狐たちが外に目を向けると、社務所の周囲一帯が火の海になっている。
バチバチと燃え盛る炎を前に、むつがにやりと笑った。
「前方にいる蜘蛛だけに絞ったよ」
「ど、どうやったのだ?」
「妖気をつかまえて、糸をつけたの。さ、今のうちに出よう。狐さんたちもどっか安全な所に」
割れた窓からむつが、ヒラッと飛び出していく。颯介と狐たちも後に続いた。
安全な所にと言ったにも関わらず、狐たちは、しっかりと後部座席におさまっていた。
「一緒に居るのが1番だろう」
颯介は、呆れたような顔をしつつも降りろとも言わず、狐たちを乗せたまま、祐斗が居る駐在所に向かった。