110/157
4話
慌てて颯介とむつが出ていこうとするのを、険しい顔の狐たちが押し止めた。
「邪魔するっつーのか?」
濡れたままの髪の毛をむつが、きゅっと縛りながら低い声で狐たちに聞くと、そうではないと首をふった。
「出るのは、かなりまずいぞ。今」
「人間には聞こえぬか?この音。囲まれてしまっているようだ」
何に、と聞かなくても二人には、察する事が出来た。
「ちっ、こんな時に…んー?こんな時だから、かな?」
ぎゅっと靴紐を縛ると、むつは土足のままで居間に上がった。
「後で、諸々弁償するからさ、大目に見てくれると有り難いんだけど」
「な、何をするつもりだ?」
「焼き払う、全て」
「むっちゃん、それはやばいって」
「なら、静かにしてて。ある程度に止めておけるよう努力するから」
そう言うと、畳をはがして、床に手をあてた。目を閉じてむつは何かをしているようだった。
何をするのか分からないぶん、颯介も狐たちも口出しせずに見守った。
「捉えたよ…ノウマク・サンマンダ・バザランダ・カンッ‼」