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4話
夕方近くまで辺りを歩き回り、むつは何体かの式神を放った。周囲が暗く視界が悪くなってくると、足場もよくないしと言う事で、三人は引き上げた。
そして、車内は誰も喋らずだった。祐斗を駐在所で降ろし、颯介がまた朝、迎えにくるからとだけ言った。
むつは、何も言わなかった。
社務所に戻ってからも、むつはほとんど喋らずに食事の支度をし、片付けまで済ませるとさっさと風呂に向かった。
何やら気まずい雰囲気に、狐たちも顔を見合わせて黙っている。
沈黙に耐えかねたのか、狐が颯介に話しかけようと口を開いた時、バンッと大きな音がして、バタバタと廊下を走ってくる足音が近付いてきた。
「颯さんっ‼」
勢いよく居間に入ってきたむつは、髪の毛はびしょびしょで、バスタオルを巻いているだけだった。
「何?てか、服くらい着て‼」
颯介は、慌てて身体ごとむつから反らしたが、むつは、颯介の前に回り込んだ。
「だから、先に服を‼」
「そんな事より‼祐ちゃんにつけといた式がやられた‼式を簡単に破れる程の力のあるやつなんだよ‼」