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4話
祐斗を車に乗せ、三人は巨大蜘蛛と対峙した場所に向かっていた。まだ、居るのか移動したのかを確かめる為だ。
だが、祐斗は心ここに在らずの様子でぼんやりと二人の後を追うのみだった。
「湯野さん、今夜も俺…」
「女の所に居たいのか?仕事中だぞ」
藪をかきわけ進む、むつの姿が見えなくなってから、祐斗はぼそりと呟いた。
「可哀想じゃないですか‼あんな傷だらけで記憶もないなんて…心細いですって」
「んで?俺が支えになりたいってか?」
服や頭に枯れ葉をつけたむつが戻ってきて、からかうように言った。
祐斗は怒るでもなく、ただ頷いた。
「お前に何が出来るっつーんだよ」
「むつさんに何が分かるんだよ‼」
むつは、見下すようにじっと祐斗を見ている。そんなむつに、怖じけずいたような祐斗だが、すぐにむつを見据えた。