4話
「湯野さん、どうしましょ…救急車呼んだ方が」
祐斗がそう言うと女は、大きな瞳に涙を溜めて、ゆるく首を振った。どうやら、救急車を呼ばれたくないようだ。
「困ったな。…確か近くに交番が…駐在所?があったから、とりあえずそのに連れて行こうか」
颯介と一緒に女を支えて車に乗せ、すぐ近くの駐在所に連れていった。
駐在所で警官の質問に、あまり答えたくないのか、女は黙っていた。住所もどうして倒れていたのかも分からずだったが、名前だけは聞く事が出来た。
「で、みかさん。住所も教えてくれないんじゃ、送る事も出来ませんけど、どうするんですか?」
颯介と祐斗は、みかを面倒みる事は出来ない。駐在所の警官が、この裏に自宅があるから、そこに今夜は泊まれば良いと言っていた。
みかと名乗った女は、不安そうに祐斗を見つめ、また少し涙を流した。祐斗が励ますように寄り添っている間に、颯介は警官からあれこれ質問を受けていたが、そこはある程度、受け流した。
住民でもないのに、うろついていて怪しまれてはいるようだが、本当の事を頼み話しても胡散臭さが増すだけだ。
「さて、もぅそろそろ良いですか?私どもも帰りたいので」
颯介がそう切り出すと、警官も引き留める事が出来ない為あっさりと帰っていいと言った。
「わたし…一人になるのですか?」