朱と蒼
重力を操っていた彼のいた町から三日。
ようやく県をまたぎ次の町にやって来た。
どうやらここは自衛隊が奮戦していたらしく、戦車の残骸や人の白骨体等があちらこちらにさんけんできた。
また敵の白骨体等も多いいため、相当ここでの戦闘の激しさを余計に感じられた。
そのなかを私は歩く。
能力を使わなくてもいい町中はひさしぶりだ。
エネミーの姿も見ない死の町。
それがこの町にふさわしい名前だろう。
私は歩くなか見つけた半壊したコンビニにはいった。
店舗にならんでいる物はほぼないが、あの当時の面影か朽ち果てた雑誌や雑貨が床に落ちていたり、そのままになっていた。
どうやら店の奥は壊されていなかったので、入ってみた。
缶詰め等を拝借し店からでる。
ついでにあった1㎏の米をもらってきたのは内緒だ。
鞄から水のはいった水筒をとりだし、水を店のなかにあったガスボンベをもらい自前の鍋にいれ、お湯にしてこれも店のなかにあったインスタントコーヒーに注ぐ。
砂糖やミルクは、賞味期限がとうにきれていたが、インスタントコーヒーだけはかろうじて賞味期限がきれていないものを見つけた。
ひさしぶりに飲むブラックのコーヒーはやっぱり苦い。
でもかつて文明が生きていた時と変わらない味だ。
ただ満喫したそれはやっぱり苦くて、もう飲むのをやめようと思わせる味だった。
人心地ついたので缶詰めを開け食べる。
ひさしぶりの味のついた食事だ。
普段は鞄にいれたじゃがいもを水で蒸かして食べているので、ひさしぶりの味のついた食事に少しほっこりする。
鞄には他にも物資と交換して貰うために煙草や塩、胡椒等もはいっておりりとし充実している。
ただ重いのが難点だ。
私の能力なら車やバイク何かを運転してても気づかれないが、運転の仕方などわかるはずもない。
運転の練習でもしてみようかな?等と考えていると、じゃりっと音が聞こえた。
とっさに鞄にいれていた包丁を抜き身構える。
「あーキミそれってコーヒー?」
と聞いてきたのは、目が細く狐目のような目をした細身の男性だった。
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それからしばらくして、とりあえず自己紹介と相成った。
「俺トウドウスエヒロね。藤のとうに殿堂入りのどう、末のすえに広いって書いて藤堂末広ね。お嬢ちゃんの名前は?」
「宇宙のうに井戸のい里芋のさとでウイサトって言います。下は美しいに冬でミフユです。」
「そっかーミフユちゃんて言うんだーとりあえずコーヒー俺ももらっていい?」
私は残ってたお湯でコーヒーを煎れてマイカップを藤堂さんに渡した。
「ん~ありがとう。ひさしぶりに飲むね~それにしてもミフユちゃんどこからきたの?ここらへんの子じゃないよね?」
「そうですね。ここから1ヶ月ぐらい歩いたところから来ました。」
「へぇ~長旅だったんだ。よくここまでこれたね?君も能力者?」
「君もってことは藤堂さんも、能力者ですか?」
「そうだよ。俺の能力はパイロキネシスってのが一番あってるのかな?とりあえず火や炎を産み出して自在に操る能力だよ。」
「そんなに簡単に能力を教えてもよかったんですか?」
「別に隠してないからね。まぁアヤネちゃんに聞かれたら怒られちゃうけど。」
「アヤネサン?」
「俺と行動を共にしてる子だよ。お互いに子供好きでね。基本孤児になった子を守りながら、あっちにフラフラこっちにフラフラしているよ。 」
「へぇそうなんですか。」
「まぁね。ミフユちゃんも一緒に来るかい?僕これでも小学校の教師やってたんだ。 」
「あぁ……だから白衣着てたんですね。」
「そう言うこと。まぁ気が向いたら来てよ。今はこの町の中心にある役所後にいるからさ。コーヒーご馳走さま。」
そう言って彼はもと来た道を歩いていってしまった。