幕間~とある将官の憤怒~
何か台本書きみたいになってしまった。
時代を間違えたような白い士官服を纏った青年が、空を見上げながら空中にただようディスプレイを見ながら、上官であろう者から本国からの命令を聞いていた。
「はい。はい。はい。了解いたしました。可及的速やかに本国に兵を戻します。ついては命令書の転移をお願い致します。はい。……えっ!!千年龍全頭の帰還ですか!!いやっしかし!!はい。了解いたしました。空中戦力の全撤退……?たったしかにこの世界の残存空中戦力などたいして残っていませんが!!っく!!了解いたしました。速やかに戻します。ぇっ?ラバァーゴーレム及びゴーレム種全ての帰還??それではほぼ戦力が!!いやっ!!しかし!!わかりました。では私しは、残っている猿人族の兵と士官及び魔獣種植物族のみで、残りのこの世界の知的生命体の全滅を可及的速やかにおこなえばよろしいのですね。承知いたしました。ですが全軍帰投しなくてもよろしいのですね?相手はあの八百万の神々なのですよね?っ!!失礼いたしました。では我が國に栄光あれ。」
青年は胸に手を当てて最高礼をとりつつおじぎをした。
それを合図にするように、ディスプレイはかき消えた。
それを待っていたかのように、暗がりから執事服を着た老齢の男性が現れた。
「若。いかがでしたかな?本国の方々からの命令は?」
青年は転がっている椅子を蹴り飛ばしながら肩を怒らせ振り向いた。
「どうもこうもあるか!!やってられん!!八百万の世界の奴等が攻めいって来たそうだ!!」
老齢の男性は蹴り飛ばされた椅子をなおしつつ青年に近づいた。
「ふむ……上はその世界の方々の何名かを籠絡していたのでは?」
青年はため息をはきながら
「どうやらロキに露見したらしい。」
老齢の男性は目を見開き
「それはそれは。不味いことになりましたな。あの御仁自らが関わらぬ策謀をひどく嫌う方でしたからな。」
青年は天井を見上げながら
「はぁ……どうやらとても怒っているらしいよ。既に神々の世界の協力者との連絡がとれぬようになっているらしいからな。」
老齢の男性は青年の後ろにたちながら
「自らがうって出てきたと。」
青年は見上げた天井を虚ろに見ながら
「そうらしい。上級中位の化け物が万を些か越える人数で攻め寄せてきたそうだよ。」
「それはまた厄介な。ですがまだシヴァが一人で来るよりはまだましなのでは?」
青年は自嘲気味に
「奴が出てきたら我が世界は終わりだな。38の同列世界を単体で滅ぼして、1298の同列世界を隷属下においた本物など出てきたら、それこそ同列世界を巻き込んだ大戦に発展してしまうわ。」
老齢の男性も頷きながら。
「さよう。なればこそのロキ殿なのでしょうな。」
青年は立ち上がりため息をはきながら。
「そのロキもやってくれたものだよ。この下位機械世界に能力の種子を蒔いてくなんてな。」
老齢の男性は道を譲り
「致し方ありますまいて、彼等が管理する世界に、戦争を仕掛けたのは我らが世界きっちり利子付きでとられるでしょうなぁ。」
扉に手をかける青年は老齢の男性を見て
「されど我らの世界の資源が尽きようとしてるのも事実。仕方ないのさこれが我らの生きるための道なのだから。さぁ仕事だぞプロムスお前は帰投する戦力に事のしだいを伝えよ。俺は他の将官と策を練ることにする。」
プロムスは恭しく礼をとりながら青年を見送った。
「願わくば、この世界に蒔かれた種子があまり芽吹きませんように。」
そう言って彼もその部屋を出る。かつて超大国の主が居たその部屋を。