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第五話 落ち込んでるなんて言えません!

閑話。前話がグダったのでワンクッション。そしてこの場をお借りしてTwitterで本垢、サブ垢でいつも応援してくださっている方々、いつもありがとうございます。最後に補足ですが、麗愛と夜月の差別化のため、文章の言い回しを代えさせてもらいました。今後も閑話の際は言葉遣いに変化をつけていくつもりです。

 学校生活二日目にして麗愛ちゃんが学校をお休みしました。

 先生が言うには風邪らしいですが・・・・。

 私は麗愛ちゃんがどういう人かはクラスメイトの中では一番分かってるつもりです。

 だから、もしかしてまた・・・。

 どうしても小学校後半頃からの麗愛ちゃんの印象が根付いてしまっています。

 麗愛ちゃんはあの頃とは変わってるはずなのですが。

 私は悪い子です。昔の印象で決めつけちゃっているのです・・・・。

 私はフードを深く被って机に突っ伏しました。

 


 ・・・・・正直、寂しいです。

 私にとって初めてできた友達は麗愛ちゃんでした。

 小学校に入って学年が上がるにつれて交流が少なくなってしまうと、忘れられてしまうのは無理もないことでしょうか。

 思い出して欲しいのは、私の我儘でしょうか。

 私は目を瞑り、何も考えないことにしました。

 


「・・・・・つき、夜月(よつき)さーん」


 名前を呼ばれ、寝ぼけ眼で声がした方を見る。

 ハッと目を覚ます。

 そうだ、授業があるじゃないですか!!

 声をかけてくれたのは拓真君でした。

 

「た、拓真君、起こしてくれてありがとうございます!えと、どれくらい寝てましたか!?」

「まだ授業は始まってないし、四、五分くらいじゃない?」


 よかった、きっと疲れてたから眠りが深くなるのが早かったようです。

 

「その目、どうしたの?おっきな欠伸でもしたの?」

「え?」


 私は自分の目元に指を当てると、指が湿った。

 ま、まさか私は泣いて・・・

 

「あ、欠伸なんてしてません!」

「じゃあ泣いてたの?」

「泣いてません!!」

「そんなムキになんなくたって」


 拓真君はニコニコしながら私をからかってきます。

 あれ?そういえば私と目が合うってことは。

 いつの間にかフードはずれ落ちていました。

 私は顔を真っ赤にして慌てて被り直しました。

 は、恥ずかしいですぅ・・・。


「夜月って麗愛に負けず劣らずのコミュ障だよね?」

「そんなこと、ない、です」


 私の言葉は少しずつ自信がなくなって拓真君に適当にあしらわれてしまいました。

 


 授業は例の芸術で私は拓真君と共に行動しました。

 二人共無言で集中して見学してると、拓真君が周りをキョロキョロして落ち着かないようでした。

 そして私に耳打ちをしてきました。


「今日帰りに麗愛のお見舞い行きたいんだけど、家教えてくれないかな?」

「拓真君、忘れられてるくせに随分距離近いくらいに接してるんですね」

「う、痛い所を突かないでほしいな」

「別にいいんですけどね。それに私もお見舞い行きたいです」

「決まりだね。じゃあ放課後に」


 話も収まり、また粛々とした態度で見学してましたが、眠くて全く覚えていませんでした。

 



「遅いです・・・」


 放課後になって私が玄関で拓真君を待っていましたが一向に来ません。

 というより、放課後すぐに拓真君の席へ向かった時には既に彼の姿はなかったので、てっきりもう来てるとばかり思ってましたが・・・。

 

「靴もあるし、一体どこをほっつき歩いているんでしょうか」


 ・・・・・地味男。


「地味男とは、酷いなあ・・・はあ」

「・・・ホントに考えてることが分かるんですね。そして遅いです」

「ごめんごめん、ちょっと野暮用でね」

「野暮用?」

「そろそろ来るかなー」


 拓真君の焦点が私から廊下に切り替わりましたが・・・・。

 一体何のことでしょう。

 私も拓真君と同じ方を見る。

 

「あ・・・」


 そこには長身でどこか『彼女』と似た雰囲気の男の人が手を振りながらこちらに向かってくる。


「夜月ちゃん、久しぶり」

「紫電さん、お久しぶりです」


 麗愛ちゃんの兄、紫電(しでん)さん。

 どうやら拓真君は面会謝絶の可能性も加味して、あらかじめ紫電さんの了承を得たようです。


「ねえ夜月聞いて!紫電先輩、僕のこと覚えてたんだよ!!」

「そ、そうですか。あの、顔近いです、怖いです」


 今まで散々忘れられていただけあって、こうして覚えてくれている人がいたことが嬉しくて興奮気味の拓真君。

 正直怖いです。


「じゃ、寝込んでるバカ妹にでも会いに行きますか」

「「はい」」


 私は拓真君を怖いと思いましたが、もしかして私も。

 私も、麗愛ちゃんに思い出してもらえれば、こんな風に舞い上がるのかな。

 うーん。やっぱり昔の付き合いがあるせいか、ダメージが大きいです。


 



 そうこうしてるうちに麗愛ちゃんの家に着きました。


「あのバカ起こしてくるから、二人はリビングで待っててくれ」


 紫電さんは私たちをリビングに案内すると麗愛さんの部屋に行きました。


「寂しい?」

「!?」

「あ、ごめんね。朝から様子変だったからさ。でもやっぱりそうなんだね」


 図星を突かれ、ただ黙って首を縦に振る。


「まあ、その気持ちは分かるよ。けど麗愛だって悪気は無いし。本当にしょうがないことだったと思うよ?本人は否定するだろうけどね」

「拓真君の言う通りだと思います。私は幼馴染だけど忘れられて、ちょっぴり寂しいです。でも確かに麗愛ちゃんには悪気は無いと、私も思っていますよ」


 拓真君は相変わらず、笑顔のまま黙って私の話を聞いていました。


「あれ?でも本人は否定するってどういうことですか?」

「・・・今に分かるよ」


 笑顔を絶やさず静かに天井を見る。

 いつもは何も考えていないような笑顔なのに、今回ばかりは何か思惑があるような・・・。

 何かを知っているような笑みを浮かべていました。

 その笑みは怖くはないけど、ちょっぴりドキドキしました。

 

「・・・・・・たまには、かっこいいんですね」

「ん?何か言った?」

「いえ、独り言です」


 思わず言葉にしてしまいました。

 少し顔が熱くなるのを感じます。


 私は、拓真君と同じように天井を仰ぎ見て、静かに彼女が来るのを待った。

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