同じ一日
その日も時々刻々と時間は過ぎてゆき…
その日は彼女にとって重大な日。
大学受験合格発表の日。
朝から胃が痛いくらい。
思えば、合格の為に随分努力もした。
カラオケに行きたいのも我慢したし、映画も我慢した。
これで受かってなかったら、もう泣いちゃうから。
発表は正午ちょうどの予定。朝ごはんも喉を通らない。
***
その日は彼にとって大切な日。
ずっと好きだった彼女に告白をして、その返事がもらえる日。
返事は明日まで待ってもらえる? そう彼女が言ったから。
待ち合わせ場所は港が見える公園にて。
正午ちょうどに時計の前で。
朝からずっと落ち着かない。
***
その日は家族にとって特別な日。
ずっと入院していたおばあちゃん。容態が急変したって。
授業を受けていた僕に 先生が言った。
「早く病院に行きなさい。おばあさんが…」
頭が真っ白になって、でも、病院に向かった。
おばあちゃん、僕が行くまで待っててね。
もうすぐお昼だ。町はいつもと同じなのに。
***
その日も俺にとってごく当たり前の日。
今日も目が覚めたら午前十一時。
いわゆるニートの俺。
今朝方までネットでゲーム。
家族はみんな出払っている。
ちぇっ、何もかも無くなっちゃえばいいのに。
もうすぐお昼だ。腹など減ってないがカップラーメンでも食うか。
***
その日は人類にとって恐るべき日。
ついにある国の核搭載ロケットの発射ボタンが押された。
それを確認した某国も その国に対して核攻撃の指示を。
ロケット到達時間はちょうど正午の予定。
「ああ、ついに世界は…」
ボタンを押した張本人が嘆いた。
***
その日は夫婦にとって記念すべき日。
病院の産室から妊婦さんのうめき声。
旦那さんの しっかり! の声。
「もうすぐですよ!踏ん張って!」
看護師さんの励ましも。
「おぎゃぁ~!」
「ああ、生まれました。健康そうな女の子ですよ!」
正午ちょうどに元気な産声。
喜びの涙、幸せそうな二人。
***
その日、は誰の元にも同じ様にやってきた。
いつもとは違う特別な日。いつもと同じ日。
待ち望んでいた人。希望を持っている人。
恐れを抱いている人。普段通りで変化など予想もしない人。
当然、誰かの思惑など関係なく。
その日もいつもと同じ時が刻まれ。
宇宙、地球の自転規模では いつもと変わらぬ
同じ一日。
いつもと変わらぬ 同じ一日。
誰かの思惑など関係なく、時間は過ぎてゆきます。その日も同じ一日なのです。