似たもの公爵
評価。お気に入りありがとうございます(^^ゞ
なんか申し訳ない……m(__)m
そう言えば。子供の頃街にいた時綺麗な男の子がいたな……。町娘の頃ーー町にいた頃。名前なんて覚えてないけど、あの子元気かな?
金の髪と緑の目。あ、色味的にはリディによく似てたな〜。人形みたいな子供だったな。
その子に、『お嫁さんになって』と言われて木の指輪貰ったっけ?私が貴族になってお別れしたけどさ。
……。
嘘など言っていない。
嘘など言っていないんだから。
私の妄想ではないよ? だって、まだ指輪もってるもん!
……
……私だって。モテ期はあったんだ。あったんだよ。あっあんだから!声を大にして言いたい!
虚しいわ!
「ーーァ? リア?」
透った声に私は我に返った。
『リア』は私の愛称。『マテリア』の『リア』。そんな事なんて私ですらすっかり忘れていて『誰』状態だったんだけどーーなぜ目の前の知らない人が知っているんだろう。そして、愛称を知っているという事はーー本名も知られているってことで。
なぜ?
というか、誰?
ええと。目の前にはアホ王子並みのイケメンが立ってるんですが。王子よりは線が細くてなんだか薄幸の美青年って感じ。
サラサラ流れる金の髪。緑の目は誰かを思いだすなあ。あの子は鍵屋の息子だったから違うだろうけど。元気かな。もう一度あってみたかったけどーー無理だよね。
そんなことを考えているとアホ王子にガッシリと肩を抱き寄せられた。
ひいー!! 怖っ!
何なの!?
触るな。こらぁ。
……うぐ。でもここは舞踏会で人前。堪えよう。一応、王族メンツもあるはずだ。そう、あくまでも御行儀よくーー私はつま先で王子様の足を静かに踏んだ。捻り込むように。積年の恨みも込めて。
痛いよね。さっきの傷口の上から踏んでるからね。えへっ。
って。
顔色一つ変えないのはさすがです………が。離せよぉ!! アホ王子〜!!
心の中で地団駄を踏みしめていると目の前の青年かクスクスと笑う。なんだかこっちの方が王子様っぽいんですが。誠実そうだし。賢そうだし。
おなじキラキラでも随分違うなぁ。
よし。チェンジだ。あっちの方がいい王さまになれるよ。きっと。国の破綻が見えきったアホ王子と違ってさ。
「リアが嫌がってるでしょ? ウェル。離してあげたらどうですか?」
「なんか知らんが、お前が狙ってるから嫌だな。一応、俺の嫁だし」
おいーーっ。みんながお前じゃないからな? そして私の意見はどうした? ブスッと不機嫌そうなアホ王子。子供か?
そして何時まで肩を抱いてるつもりだ?
「借り物、のでしょ? それにウェルを好きでないと言う目をしてるけど? 珍しいね。落ちない女の人が居るなんてーー」
「うるさい。落としてねぇだけだ。俺忙しいし」
ああ。女関係で忙しいね。ま、落としにかかっても困るけど。こっち向かないで欲しい。
ん?
そいえば、やけに突っかかるなぁ?このイケメンに。
……。
まさか。
男もイケるクチとか。禁断の恋に悩んでいて女に走ったーーとか? ガン見していると半眼で奴は見返してきた。心底、居心地悪そうだね。私が考えてることに気付いた?
「なんかやな視線だなーーリディ?」
ま、んなわけないか。自分自身のアホな思考にため息しか出ない。で、やっぱり名前は忘れられてるのね。私。一瞬間があったのはその証拠。
いいけどね。別に。
「彼女の名前はリアだよ。ウェル」
当然のように言うイケメンにアホ王子は整った眉を跳ねた。知り合いか?みたいな顔をされてもーー。
知らない人だけど。こっちが聞きたい。取り敢えずおずおすと私は手を上げて口を開く。
「あのぉーー何で私の名前知ってるんですか?」
「だって公爵だし」
……は? 当然のように言う言ってるけど何? その理由。そこっ、それ以外に何かあるのか?みたいな純粋な目をしない!
そっか。と納得できる王子はある意味凄い。
「俺の従兄弟。今日の主賓でサイ=カルディアナ公爵だ」
あ。婚約したとか言う〜? あは。私がここに引きずり出された原因だね。
呪。
「婚約者が居るのに俺の嫁取ろうなんて、酷くねぇか? なぁ」
だから。お前の物差しで測るなって。それに、お前だけには誰も何も言われたくないと思うよ?
一回死んできたら治るかな? 私は大きくため息をついた。
「取るだなんて。失礼です。サイ様に。そんな訳ありません。婚約者を放って不倫だなんて紳士の風上にも置けませんから。紳士は誠実であるべきです」
「……」
なんだよ。アホ王子。言いたいことがあるなら言ったほうがいいよ?
冷たい目でこっち見んな。私にストレスだから。
「ーー当たり前です。私が正妃様を取るわけ無いでしょう?これでも婚約したばかりなんですよ」
「便乗するなーーったく。なら良いけど」
ああ。ようやく王子から開放!なんなんだよ。早く離れろと言わんばかりに突き放すのやめろ。
思わずフラフラとしてしまう。それを公爵が抱えてくれた。わぁーーいい匂いがする。フローラルな香りだ。
え? アホ王子? ドクダミなーー嘘だけど。ま、柑橘系の香水みたいな匂いがしたかな(どうでもい)
えっと、そんなことより視線が痛いんですが。なぜ睨んでいるんですか。アホ王子。
「ありがとうございます」
ふわりと笑って見せる。そう言えば最近笑ってなかったな。筋肉が強張ってる気がする。
「そんな事よりあそこで小さくなってるのはお前の婚約者だろ?ーー紹介してくれないのか?」
言うと公爵は軽く笑う。
「あ、気づきました? はは。ウェルには紹介したくなかったんですけどね。ーー仕方ない」
紹介したくないよね〜。そうだよね。食われたらやだもんね。見たところ小柄で可愛い娘だな。10代後半ってところかな? 艶やかな蜜色の髪を頭の上でまとめ、淡いピンクのドレスを身に纏ってる。
公爵が近づいていくとピンクに頬を染めてーーやだ。かわいい。何あの子。
昔のリディを思い出すじゃない。苛めたくーー何でもない。自重しろ。私。
「もう少し俺の嫁らしくしてくれると良いんだけどな? ええと。リア?」
あ、名前学習した。そして、なぜ疑問形? 私はじろりと睨み返した。
「頑張ってます。なにか?」
「……頑張ってるんだな。それでーー顔に物凄く皺が寄ってるんだけどーー」
だから、ヴェールを返せと言うに。アホ王子はため息を深く落とす。
「頼むから、俺にも笑いかけてくれない? 笑えるなら」
「楽しくもなんともありませんので」
明日は処刑だ!ヤッホイ。で、脳天気に笑えるはずもないし。
「……笑ったらーー正妃(偽)から解放してやってもいいけど?」
「本当ですか!!」
そんなものなら幾らでも。パッと見せる笑顔に王子はいささか面をくらったように見を見開いた。
そんなに不細工か?ブサイクすぎて驚いたのか?
でも、いい。開放? してくれるなら。怒らないよ。私ココロ広いから。
「……嘘だ。出来ないし」
ち。
だよね。き、期待なんてしてなかったんだからね!!
クソお。
「……しね。このクズ」
「……」
凍てつくような冷気を込めながら私は精一杯の殺意を込める。同時にアホ王子の起動停止ーー。以外と真っ直ぐな悪口に対するメンタル弱そうだ。女に言われたことなんて無いんだろうな。モテるから。
ケケケ。なんだか楽しい。
そこに公爵が表れ困ったように私達を交互に見返す。
「ーーなに? この空気」
呟く声の横で少女が怯えたように私達を見つめていた。