世界の中心ーー終話
はい。本編唐突終了☆
ここまで付き合って頂いて本当にありがとうございましたm(_ _)m
この後、え?国母? 忘れてたけどヤダ!!
と云う流れになりますがーー
まぁ、ブツブツ言いながら乗り越えてくれるでしょう(¯―¯٥)
外伝をポツポツと上げていく予定。気が向いたら覗いてやってください。
感動の再開。ーーだったら良かったのに。
心の中で呟いて項垂れる。
ウェルと見覚えのある青年に両脇を抱えられ、近くの宿屋まで連行された私はまるで、罪人のようだった。
明日には噂になるんじゃかいかな? どういう噂か想像もつかないけどある事ないことーー。
助かったのはいいんだけど。明日からどう街を歩こうという難問に私は頭を抱えてしまう。
が、その前に。
「おまえ、聞いてんの?」
ああ。デジャヴ。軽く顔を引きつらせた。
ええと。私は正座ーー明らかにリディ仕込ーーさせられてます。目の前には昔も今もそれほど変わらないーー幾分幼さが顔から消えているけれどーー整った顔立ちの青年が立っていた。ええ。仁王立ちで。銀の髪が逆立っているように見えるのはきっと気のせい。うん。
その奥にはもうひとりの青年が大欠伸をしていた。興味なさそうに。帰りたい。そんな温かな目でこちらを見つめている。
助けろよ! ユーリス!!
「あ、うん。はい。キイテマス」
思わずぴんと背を伸ばして私はウェルを見つめた。久しぶり過ぎて何時もより3倍増してキラキラしているように見える。眩しすぎて目を逸したかったがきっと逸らせばテンションがさらにヒートアップしそうだ。
ここは我慢するしか、ない。
「無いのか? 危機感が? っうか、あったのは俺に関する危機感だけかよ?」
盛大なため息、ゴリゴリと頭を掻いたあとで私を半眼で睨んだ。
うっ。なんだか泣きそうなんだけど。じわりと汗が背中ににじむ。
「それにーー結婚って。お前」
「こ、この国で暮らすにはーー保証が必要で。それに、いい年だし」
なんだか、自分で言っておいて何だけど悲しい。その為か語尾がおもわず弱くなってくる。
「……ユーリス。おまえ、何時までいるんた?」
「行っていいの?」
目を輝がやかすな! って、行かないで欲しいんですけど? いや、何となく。なんとなくね。
だって、怖いもの!
「いや、護衛でしょ? 居なきゃーー」
「行け」
了解。軽く声を上げるとユーリスは軽く伸びをして、窓から滑り降りた。いや、扉から出ようよ?
扉からさ。
そんな事どうでもいいけど。
「ーーあ、じゃあ私も。約束が」
ついでに逃してくれないかな、なんて思った私が馬鹿でした。あはは。がっと、首根っこを掴まれて再び正座。『なにか?』と言いたそうな顔に私は『何でもない』とだけ答えた。
相変わらず不穏な空気を放つのやめてください。
「で?」
で? って何? 取り敢えず言葉を探しながらやけくそ気味に笑顔を浮かべてみせた。
引きっっていると思う。
「あ、ええと。久しぶり? この度はーーお、王様に昇格するそうで」
「……」
沈黙反対。泣きたい。
「こっちには何をしに? てか、覚えてーー」
「おまえ、俺に言うことは?」
言うことーー。少し考えたあとでお礼を行っていないことに気付いた。そうだよね。明日から街をまともに歩けないとしてももう少しで大変な目に合うところだったんだし。
けど、そうお礼を強要されると言いたくなくなるのはなぜだろう?
「ありがとう?」
思わず疑問型の言葉。求める答えではなかったのだろうな。ウェルは顔を軽くしかめて私の頬を抓る。
痛い! そして顔が近ーー。
「相変わらずのーー。俺がこうして迎えに来たのに。言わないつもりか?」
「ラにを、レスか! いラい。いラいから」
はぁっと息を大きく吐き出してつねっている指を離した。その代わり温かな手が頬を撫でる。
まるで割れ物を触るようにそれはとても優しく思えた。痛みの熱なのかそれとも違うものなのかそれが赤く染まるのを感じていた。
「ーーリア、次俺に会ったら言いたい事があると言ったよな?」
あーー。言ったか。言ったかも。言ったな。ええと、でもあれはもう会わないと思ってたし。本気で笑えるようになってからだとーー。
第一、なにも頑張ってないし! 普通に生きて来てゴメンナサイ!
涙混じりに考えているとコツンと額にウェルの額が当たった。伏せがちの長い睫毛が軽く揺れる。
ついでに私の心臓も震えるように揺れた。
「ーーつ?」
「何度も言うけど、俺はお前が好きだ。五年経っても、それは変わらない。信じようが、信じまいがーー変わらない。それに好きでないと会いに来たりしないだろ?」
嘘。
嘘だよね。そう思う。だって、私を好きになる要素は相変わらず何も思いつかないからーーけれど。けれど。分かっていても嬉しいーーとても嬉しいと思うのは私の頭が変だからなのかもしれない。
もう、いいや。
もう、いいよねーー。
ポツリと溢れ落ちる涙。それを拭うようにしてキスを落とされる。目を開くと軽く瞼に。
見つめる先には淡い光をたたえた両眼。すべてをーー気持ちさえも絡め取るようにして見つめている。
それを失くしたくないなんてーー思ってしまうんだ。とても、悔しいけれど。
失いたくない。
……。
幸せには、なれない。わかってる。
けれど、幸せになるために頑張ることはできるかもしれない。そう、思うんだ。それは今失いたくないためだけの言い訳なのかもしれない。弱いな。ほんと、笑えるくらい。
でも、なんとなくお義父様もそうだったような気がする。ママと私達と幸せになるために頑張ってたんだ。きっと。
ふいに微笑むと彼は目を見張った。少しだけ目元を赤らめたけれど、ストンと私の方に顔を埋める。頬にかかる髪が少しむず痒い。
「リアは俺にどんな言葉をくれるの? 俺ーー頑張ったんだけど?」
「私は」
いつの間にか肩に手を回していた。彼の背中を抱きとめるように。ぴくりと跳ねた背中はまるで、何かを恐れる小さな子供のように見えた。
顔を上げるダークグレーの双眸に視線を真っ直ぐに返す。その間も心臓がはちきれそうなほど鳴っているのが聞こえてくる。
うるさいほど。
私はすっと大きく息をついた。落ち着かせるように。
「ーー私はあなたが好き。その声も顔も。子供みたいな性格も」
ずっと昔から。初めて見た時からーー愛していると。
ただ、最後の言葉は口元を塞がれて発する事なんて出来なかった。
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ユラユラと揺れる色とりどりの花。光の下、皆つややかな笑顔を浮かべている。広い世界の真ん中で人々に取り囲まれているのは一人の美しい少年。銀色の髪とダークグレーの両眼。だけれど全てが輝いているよう見える彼は鮮やかな笑顔を人々に向けていた。
誰も気付く事ない壁際に少女が一人。淡いピンクのドレスと些かくすんだ様な金色の髪。どちらかといえば地味であったが、全体的に見れば小柄で愛らしい少女であった。
彼女が見つめるのは世界の中心。切なそうに。あるいは苦しそうに、どこか諦めきった視線で何時も見つめていた。
重なるはずのない時。世界。自身など歯牙にもかけられないと言う事を彼女は知っている。
だけれど。
『今度は』間違えないーー。彼女は口元を噛むと歩き出す。ぐっと前を見据えて。
どっちに転ぶかなんてわからない。
けれど終わらせるため、あるいは始めるためにそれは必要なことだった。
彼女は軽くスカートを上げ礼を取ると世界の中心に笑いかける。
踊ってくれませんかーーと。世界の中心は嬉しそうに目を細めると彼女の手をとっていたーー。




