表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

こういう軽いのりの方が好きです。短くてすいません。

 私は部屋に帰り簡単に支度を済ませると城から飛び出していた。その間にリディが何か言っていたような気がするけどきっとろくな事では無い。



 本当はね、睡眠をむさぼりたかったんだ。けれど、眠ればいらない事を考えそうでーーなにも、考えたくない。思いたくない。



 すべてから逃げるようにして城を出ると私は公爵邸の前に立っていた。



 もちろん、ここまで走ってきたわけではなく馬車で来た分けだけど。町を少し外れた所にあって少し遠いので。



 お金? 取り敢えず持って来たピアスを渡しておいた。わ、私のじゃ無いけどーー。



 いいよね? だって、む、無一文だし。一番安そうなものを渡したつもりだよ?



 閉ざされた正門の前には思っていた通りで治安隊の人が警護にあたっていた。逃げる可能性は低い。そう思ったのだろう。二人と少なかった。



 入れませんか? と上目遣いで瞳をウルウルーーママ直伝ーーさせてみたりして頑張ったが冷たい視線を返されました。



 ママのバカぁ!



 挙句の果てに眼科を紹介されたよ。心配そうに……。



 チクショウ。



 あっ! 笑うなそこ! ユーリス! 後から追いかけてきて大爆笑する無し!!



 仕方ないので護衛のユーリスを伴って公爵邸の裏に回る。当然だけどそこにも治安隊の人がいたりします。一人だけど。彼は眠そうにあくびをしている。



 その様子を伺いながら私達は端にある小さな窓の近くへと移動した。



「マジで? マジやんの?」



 なにげに楽しそうだな? この男。どうせならもう落ち着いたルジュがいいんだけど。渋いおじさまだし。なんか騎士って言葉がよく似合う人なのに。



 なのに、なぜここに居るのがコイツだけなんだよ?



 私はユーリスを一瞥した。



「やらなきゃ入れないじゃないよ?」



 公爵にも会えないし。会わなければなんないんだから。ーー今の苦境を伝えて。それから、もっと意思をーーやって無いと示すように言って。励ますんだ。



 レンズを見つけるからーーと。



 そんな事を考えていたのだけど、直ぐ現実に引き戻される。



「すげーな! 俺、泥棒じみた事するのってはじめてだぞ! あんたの護衛してて良かった! はじめは芋だと思ってたけど、すげーな! ただの芋じゃなかっだんだな!」



 ええと、そろそろ殺してもいいかな? 笑顔で芋、芋と人の事を連呼してからに!



 ええ、どうせ芋ですよ! 芋だもん!! ただの芋って何ーー!!



 私は軽く頭を抱えていた。



「あの、ね? 泥棒じゃないってーー。私はサイ様に会うだけだし。そんなウキウキされても……遊びに行くんじゃ無いんだから」



「朝から夜這いって積極的だな! あのイケメンだってしたことねぇぞ! 多分。どっちかって言ったらされる側だし」



 ちょーー話がおかしな方へ行ってる!



 心の中で悲鳴を上げるが心底楽しそうにユーリスは続ける。



「しかし、あのイケメンの泣き顔が楽しみだなぁ! 実はさ俺達の願いなんだ! あいつが女に振られることがさ。だから、応援してるぞ! どんな敵からもあの男を泣かすために守ってやる!」



 イケメンって……アホ王子か。どんだけ疎まれてるんだ? 男には人気ないんですね。



 それにしても私の肩はユーリスにガッチリと肩を捕まれているんですが。



 痛いーー。



 目をキラキラさせながら何宣言してんの? この人。大体私を守ることって仕事だよね? 



 だいたい違うからね? 夜這いなんてしないからな? 痴女でもママでも無いんだし。



 生温かい目でしばらく見ていたが、否定するのも面倒になって私は再び窓に目を向けた。



 蔦の絡まった古びた壁。小窓の奥は物置か何かだろう。トイレかもしれないけれど、仕方無い。



 高いなぁーー。



 指がギリギリ届くぐらいだろうか? 何かーー踏み台をと考えて、ユーリスと目があった。



 おい。ーーあからさまに嫌そうな顔をするなよ。まだ何も言ってないよね?



「重いのは嫌なんだけど。ほら、俺剣ぐらいしか能が無いし」



 殺したい。だいたい重くないし私。リディよりも軽いんだからな! 胸も身長も無いけど!



 う。悲しくなってきた。



 ともかく、今現在こいつしか居ないんだから仕方無い。私はかつてあった筈の『お姉ちゃんモード』を必死に思い出しながらユーリスを見据えた。あくまでもニコリと余裕ぶった笑顔を浮かべて。



 悪女に見えるように。



「煩いわねーーいいから馬になりなさいな? そんな事ぐらいあなたにも出来るでしょう? 私を守る事があなたの仕事でしょう? ここから私が落ちたり捕まったら、貴方はどうなるのかしら?」



 うわぁ。



 ーーあの頃の私凄いな。もっと酷いことを平然と言っていたような? 今では心臓が早鐘の様に動いて今すぐにでも土下座を試みたいくらいなのに。



 嫌な汗が汗がジワリと掌に浮かび始める。それでも平然を装いながら私は立っていた。



「どうかしら?」



 何を言われたのか理解できない様子でユーリスは目を瞬かせたが、少しだけ困ったような顔をして私を見つめた。



「何言ってんのかよくわかんねぇ」



 ……。



 バカだ。



 逆上するでも怯えるでも何でもなく、ただの馬鹿だったーー! 頑張ったのに! 何こいつ!



 なんか疲れるんですけど?



「ま、でも確かに入れないし。うんーーいいぜ、でもパンツ見ていいか?」



 うがぁ!!!!



 なぜパンツなんだよ!



 もう黙ってろ! ちなみにスカートのすぐ中は下着じゃなくてワンピースと下履きだからパンツはみえないんだ!



 でも。ひと睨み。



「見たら殺す」



 と呟いていた。当然だけど通じるはずもなく『パンツ!』『パンツ!』と連呼している。なんなんだよ! 確かこいつ優秀って聞いているんですけど!? どう見ても近所のアホガキで王子より質が悪ーーつ!



 大体芋のパンツは嫌だろうが!



 こいつを誰かどうにかして欲しいんですけど!!



 私は馬になったユーリスの引き締まった背中を踏みつけるようにして脚をかけると窓枠に手を伸ばしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ