表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/32

少しの本音

全体的に改稿しました。すいません。

書き直してもあまり変わらなかった現実。

そして短くなった……。


 どうしようか?



 私は考えながらウロウロしていた。ええ、ーー知らない部屋で。髪はバサバサ、服はそのまま。寝ていたためシワシワだけど、何とかなるかな? これ。幾らだろう?



 ……。



 うーん。と考えながらあたりを見回すと人影はなく、静かな部屋には窓から朝の心地よい風が入ってきていた。ひらひらとレースのカーテンが揺れる。



 青を基調にしたシンプルな部屋。ゴテゴテとした飾り付けはなく、必要最小限の家具だけが置かれていた。しかしそのどれもに洗練されたデザインや細かい彫刻ご施され、流石としか言いようがなかった。



 客間だろうか。初めはそう思ったけれど、机の上に重ねられた読みかけの本や、メモ。転がるペンは誰かの部屋なのだろうなーーそう思うけど、誰の?



 そう問うた所で思考停止。



 私は頭を抱えていた。


 ……。



 どう考えても一人しか思いつかないんですけど?



 頭を過るのは昨日の光景。いや、だって死にかけたしーー抱きついたのは……ええと、とね。



 頭の中に『諦めて降参する』と言う選択肢が浮かんだが私は頭を振った。



 いや、負けないし、そんな事ありえない。それをらその想いを『肯定』してしまったら待つのは灰色の未来だ! 嫉妬にかられて生きるなんて冗談でしょ?



 しっかりい! 私!!



 ふと、湧き上がりそうになる想いを封印。それはいい。それでいいんだけどーーあの王子がどうやって流してくれるか、だよね? 昨日のことを。



 頼むから忘れてと言った所で忘れてくれ無さそうだし。 な、なんか忘却の薬とか売ってないかな? 頭に強い衝撃を加えて見るーーとか?



 近くの椅子を持ち上げてみる。



 あら? なかなか軽くていい椅子ーーじゃ無くて。武器にならなかったーー!



 え?



 不意に後ろから抱きしめられて私の心臓は大きく跳ね上がった。跳ね上がりすぎて一瞬死ぬかーーそう思うほどに。



「ーー!」



 声にならない声。本能的な恐怖を感じて慌てて身体を離そうとする。半ばパニックに陥りながら。



「落ち着け! 落ち着けって! 俺だから! オ・レ!!」



 ダークグレーの双眸。サラサラ流れる銀の髪。ペチンと私の額に乗せる手は冷たくて心地良かったーーが、それはそれで嫌だ。混乱は何とか収まったものの私は半眼で相手を見つめた。



 頬が高潮するのはパニックの反動だと信じたい。



「抱き着くのやめてもられますか?」



「……昨日抱きついてきたのお前じゃん」



 忘れてなかった! てか、忘れたら色んな意味で問題だけども! そこは空気読んどこうよ!



 コツン。頭のの上に載せるのは相変わらずの顎。この……。軽く私は呻く。



「ーーご迷惑をお掛けしました。わざわざここに運んで頂いてーーベッドまで独占を」



「覚えてねぇの?」



 何処かからかうような、期待の入り混じった表情で私の肩に頭をもたげるようにして奴はのぞき込んだ。



 思わず瞠目してしまう。



 ーーつ! だから、反応するな! 頑張れ私! 虹色の未来のために!! 百戦錬磨に絆されるわけにはいけない!



「な、なにがよ? てか、近い」



 い、息かかるし。私は軽く身じろぎした。耳まで真っ赤になるけどきっと気のせいだよね。そう、信じたいんだ!



 私の反応に満足したのか、奴は口元を歪めて目を細める。低い声ーー。どこか艶が混じっている気がしてぞくりと背中が粟立った。



「……俺が何もしないと? ここで」



 ーー!?



 私は弾けるように王子を凝視した。相変わらず人を食った笑顔からは本当か嘘かは分からなかった。

 


 ともかく、何を言ってるんだ? コイツは。いやいや、何もなかったよね? だ、だだ、だって服だって着てるし。み、乱れているけど。



 ベッドを凝視してみるけどーー分からない!! 必死に記憶をたどるけど思い出せない!!



 いやいやーーでも。



 ……。


 ……。



 あ、思考停止してしまった。ともかく何かされてたら嫁にいけないんですがーーいや、ね? 行く気はあまりないけど。仕事に生きるって決めてたからーーでもね。



 でも。



 ぽつりと涙が零れた。



 でもーー酷い。



「あ? え?」



 ふっと肩から重みと温もりが外れる。狼狽したように覗き込む双眸。どうしていいのか分からない。そう言ったように揺れていた。私はそれをきっと睨みつける。



「酷い!」



 本当にそうなのであれば、酷すぎる。そう、思う。同時に色々なことが湧き上がってきて、自分ではもうどうにもならないほどに思考が混乱してきていた。



「……え、いや。あのーー?」 



 困惑した表情。こんな反応が帰ってくるとは思ってもいなかったのだろう。



 ーーつ!



 どうしよう? 自分でも何を言っているのかよくわからない。



「どうしてそんなことができるの? 一体どんなつもりでーーリディごどんな思いで……私がーーっ!?」



 どうしよう?



 このままでは言いたくないことも、知りたくないことも言ってしまいそうで、必死で言葉を切って私は身を翻しその部屋を慌てて後にした。いま王子がどんな顔をしているかも知らずに。



 まずい。



 本格的にまずい。



 大きな回廊を必死に駆け抜けながら私は何もかも全て封じ込めていた。何もかもーー。なかったことに出来ればいいのに。



 私は軽く唇を噛んでいた。



 大丈夫。



 そう言い聞かせながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ