脱出後の彼女達
サブタイトルが彼女達だけど男居ます。(●´ー`●)
今回前後編分けたかったのですが、分けた時長さが微妙だったのでそのまま書きました。
坂口史花回です!
「史花ちゃんどうだった?」
「後から合流するって。先に帰ってよ?」
すぐに追い掛けてこれない理由でもあったのだろうか。それだけが気掛かりだった。でもずっとここに居るのも危険だ。今は見つかってないから大丈夫だがゾンビに気付かれたら最後。駐車場に彷徨いてる百体ぐらいが一気に襲ってくる。
さっさと逃げて帰りを待とう。
ふと思った。このまま樹達に付いて行ったらどうなるのだろうか。みんな優しいし一緒に居て安心する。でも生き残れるのだろうか。学校で友達同士が食い合う様を見てからというもの、私の中で何か大事なネジが抜けている気がする。日に日にその数も増えている様で最近は本音丸出しだ。
樹達に付いて行って未来はあるのだろうか。あいつに見せられた映画の中の大半は世界が滅んでいて、生存者のヒューマンドラマやバドルになっていてバッドエンド系のもあった。
もしかしたら樹達に付いて行って生き残れても最後はバッドエンドなんじゃないだろうか。
いや、やめよう。何事も前向きに楽しく。今生きている。それだけで良いや。
「「あ”ぁぁぁ」」
「危ない!!」
「へ?」
先頭を歩いていた私は鈴木さんの言葉に振り返った。するとすぐ左の道に三体のゾンビが居て今にも私に飛びかかってきそうになっていた。
「うぉりゃっ!!」
鈴木さんが持ってきていたプラスチックのつっぱり棒でゾンビの目を潰した。すると目を潰されたゾンビの頭をつっぱり棒は貫通した。どうやら脆くなっている様でスッとつっぱり棒を抜くと今度は残りの二体も同じ様に倒していった。
あまりにも咄嗟の出来事に悲鳴すら上げられなかった。
とりあえず鈴木さんに礼を言わなければ。
「あ、ありがとうございました。鈴木さん」
「良いよ良いよ。こんな時くらい役に立たないとカッコ悪いしな」
つっぱり棒に引っ付いた肉を払い落としながら笑う鈴木さん。結構優しそうで安心安心。このノリならこれからもうまくやってけそうだ。
「とりあえず火鷹くんの家に急ごうか」
「あ”ぁぁぁぁ」
「鈴木さん!?」
「史花ちゃん離れて!」
先程三体から遅れてゾンビが二体現れ鈴木さんの右肩に噛み付いたのだ。私がゾンビを引っぺがそうとしてる所を友梨さんが止め、包丁を取り出しゾンビの頭を刺した。するとゾンビはスイッチが切れたかのように倒れた。
「こいつ!! この!!」
友梨さんは動かなくなったゾンビを更に滅多刺しにし始めた。
「あ”ぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一体が離れた鈴木さんの首に背後から二体目のゾンビが噛みつき悲鳴が上がる。私は首から溢れ出す血を見て吐き気も無いのに口元を押さえた。首の辺りに嫌な感覚が走り、身体中鳥肌が立って腰が抜けてしまった。
今度は怘がバッグから包丁を取り出しゾンビの顔目掛けて突き刺した。ゾンビと共に鈴木さんも倒れた。首からはドクドクと血が流れ出ている。怘はゾンビを引き剥がし刺さっている包丁を抜いた。
それを見て希美ちゃんが鈴木さんに近寄った。屈んで肩を揺らす。
「鈴木さん……起きて下さいよ……もうやだぁぁぁぁ」
「……希美ちゃん。泣いちゃダメだよ。声でゾンビが集まってくるかもだよ」
希美ちゃんはまるで赤ん坊の様にその場で泣き出してしまった。気持ちは分かる。辛い思いもいっぱいしてきただろうし目の前でさっきまで喋ってた人が突然死んだんだ。私だってどうしたらいいかわからない。 知り合って日も浅いからか全然涙が出てこない。酷いとは違うがすぐに悲しまず泣きもしない自分が少し嫌に感じた。
血を見たくなくて空を見た。何時ものように晴れだ。空だけは変わらないのが少し助けになる。空までおかしくなってたら私もどうにかなってしまうだろうし。
「あっ……あ……あぁ」
「鈴木さん!?」
「あ”……あぁ」
「待って! 希美ちゃん!」
鈴木さんが手を希美ちゃんに向けた。それを友梨さんが止めたのですぐに何が起こっているのか分かった。私は希美ちゃんの元に駆け寄り鈴木さんの手を払おうとした。が、一足遅く、
「あ”ぁぁぁぁ!!」
「ひゃっ!?」
「危ない!」
咄嗟に希美ちゃんを突き飛ばした。直後、起き上がった鈴木さんが私の肩を掴み地面に押し倒した。ガンッと思いっきり頭をコンクリートの地面にぶつけたが痛がっている暇はなく、鈴木さんは目が合わず口をパクパクさせて今にも私に噛みつきそうになっている。頭を押さえていなければ直ぐに噛みつかれそうだ。
オマケに力が半端じゃない。顔がどんどん迫ってきて首からは血が流れ出てポラポタと私の顔に落ちてくる。
「誰か早く!!」
「あ”ぁぁぁぁ。あ”っ!? はぁぁぁぁっ!! はぁぁぁぁ!!」
怘が鈴木さんだったゾンビの首を後ろから包丁で刺した。一瞬力が緩まりその隙に思い切り蹴り飛ばして何とか脱出した私は自分のバッグから包丁を取り出し思いっきり正面からゾンビの首を突き刺した。
「はぁぁぁぁ!! はぁぁぁぁ」
「なんで……なんで死なないの!?」
首に突き刺したのにゾンビはちょっとひるんだだけで起き上がろうとする。
「史花ちゃん! 頭を刺さないとダメだよ!? 早く!!」
「あ、そうだった!」
ゾンビは頭に直接攻撃しないと殺せないらしいのはホームセンターで聞いたが、やはり緊急事態ではそんなの思い出せなかった。動いているゾンビから包丁を引き抜く勇気は無かったのでもう一本の包丁を取り出し頭目掛けて突き刺した。
「あれ? ……なんで当たんないの」
「史花ちゃん早く!」
「わ、分かってますよ! このっ! このっ! このこのこのこのっ!!」
何度も何度も突き刺したが顔に当たらない。肩や胸に当たるだけで樹や宮元さんの言っていた弱点に当たらない。なんで、狙ってるのに手が言う事を聞いてくれないの!?
「どいて!」
「うっ……」
友梨さんが自分の包丁でゾンビの頭を刺した。包丁を引き抜くと少し歪んでしまっていた。友梨さんはしゃがんでいる私に向き直ると両手で肩を掴んだ。
「頭をやらないと死なないの!! 体ばっかり刺してたらさっきまで人間だったから包丁なんてすぐに駄目になっちゃうでしょ!?」
「……あ」
私達が使っていた包丁は凄い安物でかなり軽い。見れば先っぽが欠け持ち手から少し曲がっていた。
「あ”ぁぁぁぁ」
「やばいです、結構な数来てますよ」
「ごめんね、……大丈夫?」
怘が指差した方向からゾンビが十体程きていた。その後ろにも来ているようだ。
「立てる?」
「は、はい」
私達はひたすら走った。走って走ってようやく樹の家に辿り着いた。友梨さんが鍵を開け中に入った。リビングに荷物を起き私はそのまま寝転んだ。希美ちゃんや光梨ちゃんも倒れこむ。息を切らしてもう立てない。こんなに走ったの久しぶりだ。一人でいた時だってあんまり走らずに済んだし。
少し経って起き上がるとめまいがしたので持ってきたペットボトルの水を一口飲む。見れば友梨さんと怘が居なかった。フラフラしながらも二人を探すと二階から声が聞こえてきた。階段をゆっくり上がって行くと次第に会話の内容が聞き取れるようになっていく。
「鈴木さんの事大丈夫?」
「俺は大丈夫っすけど、坂口が」
私の名前が出てきたので、聞いちゃマズイ話なのかと思いその場で立ち止まった。声の方向から階段を上がって直ぐの所にいるのだろう。私はギリギリまで階段を登り耳を澄ませた。
「うん、でもちょっと混乱してるだけだと思うよ」
「でもやっぱり人殺したのとあんまり変わんないし……俺もちょっと……何て言うか動揺してます」
「でも避けては通れないと思うよ。逆に史花ちゃんがあっさり殺せなくて良かったと思うよ私は。まだ人間らしいって言うか、私みたいにすぐに殺せる様になって欲しくない。宮元さんも殺す事と怒りの発散がイコールになってるみたいだし」
友梨さんの声のトーンが宮元さんの所に入って少し下がった。どうやら宮元さんの事をあまり良く思っていないらしい。確かに見ず知らずの人だが私達の事を助けてくれてるのに……そりゃ警戒するのは悪い事じゃないけど流石に信用してあげないと可哀想だよ。
「てか、何故に俺呼び出したんすか? 弟心配しましょうよ」
相変わらず話帰るの早いな怘は。そんな怘に対して友梨さんは、ちょっと吹き出してから答えた。
「心配してるよそりゃ。てか君も妹の心配しなよ。耳に障害とか嘘ついてまで庇ってんだからさ」
「……マジなんすけど」
「いやいや、普通障害持ちならそんな軽く言わないし。一応年上なんだけど?」
「でも騒がしかったり人多い所マジで嫌いなんで、お願いします」
「おーおー、そのくらい任せんしゃいな!」
あんまり気にしてなかったけどあれって嘘だったのね。過保護というかやっぱりシスコンなんだね怘(笑)
ちょっと盗み聴きが面白くなって来た私はそれからずっと階段に隠れ二人の会話を聞いていた。
次回から楽しくポンポン進むよ!(予定です)




