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見張り

今回はセリフ多目になってます。

「ここが屋上だ。鍵は見張りが持ってるから交代の時に受け渡しよろしく」

 俺は坂口達と屋上で見張りの仕事について説明を受けていた。高さ的には3階くらいに位置しているので風があり結構寒い。説明してくれているおじさん達も毛布やジャンパーを羽織っていた。


「あ、あと誰か生存者を見つけた時はすぐに報告よろしくな。でももしかしたらなんだが、暴走族っぽい事してる野蛮な連中がまだこの辺りにいるかもしれないから気をつけてくれ」


 説明が終わりおじさんが俺達に背を向けた時、何かを思い出した様に急に振り返った。


「ここでの暗黙のルールってもう聞いたか?」

「あ、暗黙の?」


 思わず聞き返してしまった。暗黙のルール?何だか危険な香りというか中二病というか、どっちにしろ先日の死体に関係している事は間違いないであろう。


「昨日司会役だった男はこの辺りの元ガキ大将的な奴でな、今は人当たりが良くて一番信用出来るんだ。そいつが決めたんだが、ここでは自分の名前を聞かれた時は嘘をついても良い権利がある。あの死体を見た君達なら分かるだろ? ここの奴らは生きる為に人を殺した。俺やここの奴らはそれを助かっても絶対に警察に喋らないと誓ったんだ」

「でも……宮元さんにバレた」


坂口が言った。顔にはいつもの様なワクワク感は無く、どこかビクビク怯えている様な感じだ。


「その通り。でも宮元は約束した。絶対に喋らないとな。だから君達にも約束して欲しい。あとで司会役にも聞かれるだろうからその時無駄な話を省く為にも今俺と、ここの見張りと約束してくれ。出来るか?」


 おじさんの言葉で周りの見張りがここに集まり始めた。4人。人数は決して多くは無い。俺達の方が多い。

 決断を迫られている俺達は今何て答えればいいんだ?

 こんなゾンビだらけの世界ではもう元の社会は戻らないだろうし、ゲームだって、映画も見れないし、何が 正しい行いか教えてくれる基準がもう無い。

 困った俺は他の人の様子をチラッと確認した。

 皆バラバラの方向を見てどうしようか迷っている。




 それを見て気付いた。




 何で今の俺達に選択肢があるんだ?

 選択肢何てない。

 このおじさんは約束する事を要求している。

 だとしたら、それを拒んだらどうなる?

 追い出されるか殺されるかも知れない。

 現に今、おじさんの手には包丁の様な物がチラついている。


 なら答えは一つしか無い。



「はい。約束します」

「私も約束します」

「僕も約束します」


 俺に続いて坂口と椿が答えた。それに続いて他の連中も全員答えはYesだ。


「よしっ! なら君達はもう仲間だ! つっても万が一の時はいつでも裏切られる覚悟はしとけよ? あと本名は控えな。あだ名とかにしとけ。特にそこのお嬢ちゃんは名前口にし過ぎだ」

「うっ……以後気をつけます」

「よしっ! 俺の事は友田ともたって読んでくれ。あと屋上っていってもゾンビが来ないとは限らねぇからここにいる間は武器は常に持っとけ」


 友田さんはそう言うとさっきからチラつかせていた右手の小さな包丁を出して見せた。


「ひッ!?」

 日向野光梨が怯えて兄に引っ付いた。

「あーすまんすまん、怖かったかな? ごめんな。屋上は持ってて当たり前だから気にしないでくれ」


 これが普通か。……ゲームの初期武器っぽいな。


 そう言えば時間帯ってまだ決めてなかったな。


「時間帯ってどうしたら良いですかね?」

「その事については今夜話し合おう。夜の見張りが起きてからの方が都合も良いしな」













「これでグッスリ眠れるぜ……」

「だなぁ。深夜はこりごりだ」

「あぁ。朝はもう嫌だな。早く暖房効いた部屋に戻りてぇー」

「そうっすね。せめて自衛隊とかに保護して貰いたいっすわ〜」

「俺はとりあえず早く寝てーよ。ふぁーわぉっ。あ"ー寝みー」


 夜23時。

 ホームセンター2階の屋上入口前に深夜の見張りと朝、昼、夕方の班が全員揃った。朝の班は寝ている時間なので皆あくびが絶えない。

 人数はあんまり多くは無いな。見た感じだと10人くらいだろうか。ここにいるのは屋上の見張りのみらしく室内の見張りは固定だそうだ。

 昼間説明をしてくれた友田さんが進行役で班決めが始まった。


「みんな座ったな? じゃあまずは朝の6時から12時まで。やってくれる人居ませんか?」

「俺やります」

 手を挙げたのはジーンズに紺色のシャツを来た若い男だ。かなり寒そうにしている。

「よしっ! 決まり! 出来れば人数増えたしもう1人欲しいんだが」

「あぁ、なら俺やりますよ」

 今度は見た目20代のスーツを来た男だ。服には少し返り血がついている。

「よし来た!朝はもう決まりで良いな?次はーー」


 時間かぁ……どうしたら良いんだろう。何と無くで従ってたから正直何も考えてなかった。誰かに合わせるっていってもなぁ。

 でも寒いのは嫌だな。


「昼が良いっす」

「あ、私も昼が良いです」


 日向野と坂口が答えた。ちッ!先をこされた。


「ちなみに夜は3人〜4人だから掛け持ちしてくれると助かる。昼間と深夜とかな。よし次はーー」

「なぁ火鷹?」

「ん?」


 悩んでいた俺に話しかけて来たのは椿だった。どうやらこいつも悩んでいる様である。


「深夜やらない?」

「え、寒くねーか?」

「あ、いやほら、人少ないし!」


 は? 何こいつ? 俺とふたりっきりになりたいの? 悪いが俺にはそんな趣味は無いしこれからも普通でいたいんだ。


「なら私も!」

「うっ……」


 椿の腕に引っ付いたのは日向野光梨だ。さっそく髪の毛をクリクリ弄り回している。元引きこもりには見えないその動きはおそらく椿に原因がある。

 こいつ、嫌がってもやめさせようとしないのだ。性格の所為もあるのだろう。こいつはかなり優しいし、俺のゾンビトークも聞いてくれた。

 深夜なら光梨から逃げられると思って残ってる俺に話しかけて来た。そんな所か。


「……なるほどな。わかった」

「う……作成失敗だ〜」

「よしっ! これで全班決まったな! ちなみに俺は夕方と戦闘班掛け持ちだからよろしく。んじゃあ主な見張り方でも教えるか」


 決まった深夜班はこんな感じだ。

 俺、椿飛鳥、日向野光梨。

 結局椿は光梨から離れられず、話は勝手に進む始末。

 友田さんよく喋るなぁ。


「周りを見渡せば分かるだろうが、見んな出入り口と住宅地、駐車場をマークしてゾンビに中に侵入されないかどうか見張ってる。それと花火は常に置いてあるか確認な。理由は生存者達が居たら助ける為だ。助けるって言っても食糧の問題もあるから慎重にな。それとーー」



 なげぇ。こんな話退屈で聞いちゃいらんねーよ。早く時間過ぎてくんねーかなー。


 そういえばこの辺りってゾンビ少ない気がするな。屋上からならゾンビの大群が安全に見れるけどセンター周りしか見当たらないんだよな。映画みたいに大群で動いてるイメージあったけど2〜300体いるか居ないかだし。どこに行ったんだ死者ゾンビは?


「ーーって事だ。んじゃあ今日から早速新しい班で頑張りましょう。解散!」

「え、あれ? もう話終わりか?」

「火鷹聞いてなかったのか?」

 

 椿が俺の顔を覗きこむ。周りではみんな解散して座ってるのは深夜班の俺達3人だけだ。


「あぁ。聞いてなかった」

「うっ……やっぱりか。まぁ今日からだし早く夜食貰いに行こ?」

「は? 夜食?」

「……ホントに聞いてなかったんだね。賞味期間切れてるパンを貰うんだよ」

「な、なるほど。行くか」

「あともう一人深夜の人いるからね」

「え?3人じゃないの?」

「いきなり見ず知らずの僕らに任せる訳ないじゃん」

「言われてみればそうだな」


 友田さんに夜食を貰い0時頃3人で屋上の扉を開けた。

 瞬間、とんでもない勢いでブリザードの様な風に晒された。暖かい中に冷たい空気が流れ込んだのだ。それをまともにくらい俺たちは一気に凍えた。


「おー! 交代か!」

「お前ら遅せーぞ。早くこっちこーい」

 交代待ちのおじさん達て既に来ていた俺達と同じ見張りがいた。赤いジャンパーにジーンズで口にはマスクをしていた。寒さ対策だろう。

 対するこっちはただパーカーやら毛布を持ってきただけで何の対策にもなっていない。


「は、はぁーい……うぅっ、寒みッ‼」

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