始めての食料調達という名の万引き
書くペースを上げたいと思うのですが、その度に誤字脱字が増えて困ってます……
うちにある木刀と、双眼鏡、腕時計、空のバッグを持ち、俺と宮元さんは家を出た。
天気は快晴。だが夏の終わりの空は、見ていると肌が乾燥してきそうな感じがする。
これから秋になるがこの異常事態はいつ収まるのだろうか。そもそも収まるのだろうか。大体の映画って収まらないから現実に起きると生き残れるか不安だ。
俺達がコンビニに行く間、坂口は家で留守番だ。
何かあった時の為に部屋には包丁やトンカチを置いておいた。その何かが起らない為に家を出る前、防音対策や窓の鍵を全部閉めたりと、地味に準備は万全だ。
「最初はコンビニ行きますか。あんまり遠出しても危険ですし」
慣れない敬語を使うのはもちろん俺が認めた目上の人だからだ。だから学校の先生に敬語を使った事なんて一度もない。話さないしな。
「うんそうだね。にしてもこの辺りにはあんまり奴らが居ないな?」
宮元さんが周りを見渡しながら俺に言う。確かに周りにはこれでもかと言うほど人影が無い。風の音が聞こえるくらい静かだ。
「それは俺も気にはしていたんですよ。俺の知ってるタイプのゾンビに、音に反応して寄ってくるのがあるんですが、それとは違うみたいですね。動きも個人差がありますし」
今まで俺が目にしたタイプは、集団行動するタイプ、バラバラで動きも鈍いタイプだけだが、何れにも個人差があった。走れる者もいれば、そうでないものもいた。今後救助が無ければ更なる観察が必要だ。
俺は空っぽのリュックを背負い、宮元さんは木刀を持って俺の右側を歩いていた。曲がり角などには注意して立ち止まったり、双眼鏡で遠くを見たりと、かなり警戒しているが全くゾンビが見当たらない。
あいつら何処に行ったんだ?
この一週間の間に外で何があったんだ?
しばらくしてコンビニが見えてきた。
「あれが俺のよく行くコンビニです」
俺はコンビニを指差して宮元さんに言った。この辺りはコンビニが多く学校も近い為多くの学生の溜まり場になっていた。出来れば今は溜まっていて欲しく無いな。
「なんか駐車場が散らかってるなぁ。僕が先頭を行くよ」
「うっす」
宮元さんを先頭にコンビニへとゆっくり前進を始めた。
「は?」
思わず口が開いた。
コンビニの裏の方から駐車場へゾンビが1体出て来た。
しかもうちの学校の制服だ。よくみればなんかあいつに似ているような…………似てない様な…………。
「あのー、もしもし? 甲野だよな? 何してんのお前」
俺は甲野と思われる血塗れのそいつに近づき質問した。もちろん帰って来る言葉は「あ"ぁぁぁぁ」だ。
俺は近づいて来る甲野らしき、いや、甲野と一定の距離を保ちながら甲野に問う。
「待って、落ち着け俺……。状況を整理しよう。お前は確か川口とか坂口と一緒にいたよな? んではぐれてからはどうした? なんでゾンビライフ満喫してんの?」
「火鷹君どいて!!」
宮元さんが俺の前に立ち甲野の頭に木刀をおもいっきり振り落とした。そして甲野は倒れて動かなくなった。
甲野を倒した宮元さんは俺の肩を掴みぶるんぶるん揺らしながら俺に怒鳴った。
「しっかりするんだ火鷹君! 今のはもう君の友達じゃないんだ!」
「いや、友達って程の仲でも……」
ホントだよ? 川口はともかく甲野となんてあの日始めて喋ったもん。もしかして俺がイカれたと思っているのだろうか?
そんな宮元さんに俺は冷静に対処する。
「あいつホント、友達って程の仲では……」
「でもだ、だからと行ってむやみに近づくな! 分かったかい?」
「あ、はい。すみません」
ホントに友達じゃないんだけど……。今のはあれだ。歴史上初めてのゾンビとのコンタクトを俺がやったという功績が欲しかっただけだ。うん。
コンビニの中に入ると中にも1体ゾンビがいた。すかさず宮元さんが木刀で倒す。店内の物は結構無くなっていた。だがこの辺りの住民は馬鹿らしい。缶詰が大量に残っていた。
缶詰、水、カップ麺、調味料、お菓子を持って来たバッグに入れ、入り切らない物はレジ袋に詰めた。
しかし、警察がこうして堂々と万引きしているというのはとてもレアな光景だな。そんな事をいちいち思っていたら生き残れないのだが。
外に出てからまず周りの安全確認、次に甲野の死体を分かりやすいゴミ箱の隣に置いた。
扱いが酷いと言われるかもしれないが、火葬も出来ないし分かりやすい場所に集めておかないとおそらく腐りだした時に臭いが酷い。なら最初から臭いの酷い所に集めておけばそんなに気にならないだろう。
それにしても坂口の奴、なんで黙ってたんだ? 単に言い出せなかったなら分かるが。
他の4人の行方も心配だ。日向野は行き先は分かるが川口は分からないし、笹木も今何処にいるか心配だ。
全く、みんな引きこもりしてれば一週間楽に乗り切れたものを。
それから何事も無かったかの様に俺と宮元さんは帰宅した。リビングに荷物を置き部屋に行くと、坂口が俺のゾンビゲームを勝手にやっていた。
「あ、おっかえりー! いやぁこれ面白いね!」
「なにしてんだよ……。熱はどうした?」
「あー、寝たら治ったからさっきからこれやってた」
そう言って坂口はプレイ中の俺のお気に入りのホラーゲームを指差す。内容はかなりエグいし、確か18禁なシーンもあったはずだ。まぁ、それもゾンビの捕食シーンだが。
「やるのは良いけど熱ぶり返すなよ?」
「了解了解……って、あぁーー!! また殺られたーーっ!!」
リビングに降りると宮元さんが木刀を濡れ雑巾で吹いていた。洗剤を付けながらやっているのはおそらく消毒のつもりなのだろうが、果たしてその行為に意味があるのだろうか。
「あ、火鷹くん。史花ちゃんの様子はどうだった?」
「絶賛プレイ中でした」
「へ?」
「そりゃあもう楽しそうにしてましたよ。部屋に居るのもあれなんで出て来ましたが」
「ちょっと待て、火鷹くん。最近の高校生ってみんなそうなのか?」
「いやいや、あいつだけですよ多分。なにそんな深刻な顔してるんですか?」
あれか? 絶賛プレイ中を何か勘違いしたのだろうか?
だとしたらなんて卑猥な刑事なんだ。けしからん。
今日の夕飯はトマトの缶詰で作ったトマトスープだ。家がトマト臭くなるのは仕方ないが、俺もこれから料理のレパートリーを増やしていかないとだからな。我慢だ。
「完全にトマトだね」
「そりゃあトマトっすからね。じゃあ俺坂口にお粥あげて来ますわ」
滅多に使わないお盆に作ったお粥を乗せて階段を登る。こんな時にしか俺の地味な料理スキルが発動しないのはそういう星の元に生まれてしまったからなのだろうか。
まぁ、正直な所、あんまり他人と話す機会が無かった俺にとってはこの異常事態はむしろ転機にすらなり得る。
やっぱりゾンビってすげーわ。うん。
坂口に占領された自分の部屋の前に立ちノックをした。
「おい坂口ー、お粥作ったから持ってきたぞー。入るぞ?」
なんで自分の部屋なのにこんな事をしなくてはいけないのかは、分かり切ってはいるのだがやはり納得出来ない。
「ありがとぉ〜〜……ゲホッゲホッ」
「言わんこっちゃねー、また熱出てんじゃねーかよ」
坂口はTVゲームを付けっ放しにして俺のベッドでぐったりしていた。
「あ、お粥サンキュー……お、梅干し入りですかぁ」
「あぁ、塩だけじゃ飽きるだろ?」
「トマトの匂いしない?」
「トマトの缶詰め開けたからな。お粥にトマト合わねーだろ?」
ちなみに俺は塩しか無いお粥で吐いた事がある。ホントに飽きて気持ち悪くなるんだよなぁ〜あれ。
「地味に料理出来て家庭的だったりするのに、なんでクラスではあんなに静かだったの? 私とか宮元さんとあんだけ話せるならクラスでも友達作れば良かったのに」
俺は正直者だ。質問されたならちゃんと答える。
「まずな、料理は出来ない。やるけど下手くそだしな。ラーメンくらいだ。中学の頃は普通に友達はいたんだけど、なんか急に話すのが面倒になってそれっきりあんまり会話とかしなくなった」
「なんだそりゃ? じゃあ特に理由とか無かったの?」
「正直、自分でもよく分からん」
ホントに分からない。なんで急に話すのが面倒だなんて思い始めたんだっけ?
「熱ッ! ふぅー、ふぅー」
「火傷すんなよ? 流石にあーんとかやらねーからな?」
「ふぁいふぁい、ホッ、ホッ」
「食いながら喋るな、んじゃ俺下に戻るわ」
「うん、ありがとね」
俺は部屋を出た。階段の一段目に足を運ぼうとした辺りで何か思い出した。
確か俺何かあいつに聞こうとしてたような…………。
「あ」
急いでドアを開けお粥を食べる坂口に問いただした。
「なぁ、甲野にあったぞ。あいつ何であんな事になってんだ? 何ですぐに言わなかった?」
この質問の所為で空気が一気に重くなったのは言うまでもない。
実は書いている時熱出してました。
健康管理はどうも苦手です。
これからもよろしくお願いします。




