約束をした。
今回短いです。サラっとどうぞ!
私です。
笹木美乃梨です。今は日向野先輩の家に隠れてます!
早速ですが今日は朝早くに火鷹先輩、川口先輩、史花先輩が家から出て行きました。目的は『火鷹先輩の家を見に行く』だそう。
固まっていた方が私は安全だと思うのですが、先輩達に楯突くのは助けてもらった側としてはあまりしたくは無いので、今は先輩達に従っている。
そういえば火鷹先輩のあの自信は何処から生まれてくるのだろうか?
考えてみれば、映画はフィクションであり現実に置き換えて考えるのは危険なはず。ましてやこんな時だ。
目の前で私はそれに遭遇しました。集団で襲いかかる様はもはや人間ではなかった。単なるゾンビでも無い様。
ですが先輩はそれを知って行動してるらしい。
今度あった時は、私もゾンビ映画について教えてもらおうかな?
時刻は13時。お昼時だ。冷蔵庫の中はほとんどありません。昨日火鷹先輩のラーメンで使ってしまったからです。
あのラーメンはホントに美味しかったなぁ〜
ダンダンダンッ!!
「開けてくれ!! 早く早く早く!!」
川口先輩の声だ。
私は鍵を開けた。すると勢いよく先輩が入って来て私は突き飛ばされてしまった。その後ろから史花先輩も息を切らして入って来た。
話によれば、途中でゾンビに遭遇し火鷹先輩が囮になって逃げ、それから何度かゾンビに襲われたりしながら帰って来たそうだ。
夕飯は私が作りました。簡単にベーコンと卵焼きにご飯です。火鷹先輩程ではありませんが、というか誰でも作れますね。
無言の夕飯。お代わりの一言も無い。時折史花先輩が会話をしようと話題を出してもみんな頷くだけで会話にならず、光梨ちゃんは部屋に篭って出て来ない。
史花先輩はともかく川口先輩は帰って来てから人が変わってしまいました。今までの頼れる先輩から一転。物凄く臆病になってしまいました。私の様に。
甲野先輩は体格のわりに凄く大人しいというか、何というか、大っきい猫みたいだ。あまり口を開かずぼーっとしている事が多い。
川口先輩と甲野先輩はある意味、現実を知って当然の行動をしていると思う。私も夜は怖くて眠れない。帰って来た先輩達の話を聞く度にゾッとする。今まで映画の中だけだと思っていた物が現実に起きたのだ。
早く助けは来ないのかな。
そもそも助けてくれる人がいるのかな。
怖いよ。
お母さん、お父さん、会いたいよ……
2日経った夜、真っ暗な部屋。中々寝付けない私に一緒の布団で寝ていた史花先輩が話しかけてきた。
「ねぇねぇ、美乃梨ちゃん。明日みんなで美乃梨ちゃんの家まで行かない?コンビニとか寄りながらさ」
「え?」
分からない。何で私の家?どうして急に?
「美乃梨ちゃん、覚えてないかもだけど昨日の夜中泣いてたでしょ。「お父さん……お母さん」ってずっと泣いてた」
「私、泣いてたんですか。恥ずかしいです」
暗いが目が慣れてくるにつれて顔が少し見えてきた。何だろう。お母さんみたいだ。
そのまま先輩は少し笑い、話を続けた。
「いやぁ、無理もないよね。知らない先輩達の家でこうやって寝てさ、ご飯食べながら外の奴らに怯えてるなんてヤダよね。だからさ、美乃梨ちゃんの親が無事か確かめに行こうよ。美乃梨ちゃんもそうしたかったんでしょ?」
「………………はい。でも良いんですか?」
私は少し泣いていた。何でかはよく分からないが、自然と涙がまくらに零れていた。
「もちろん!私が明日みんなに言ってみるからさ!でも約束ね。もしどんな結果になっても取り乱しちゃ駄目。辛いだろうけど、受け止めて。絶対に死のうなんて考えたら駄目だよ?」
「考えませんよ。それにそんな事言ったら死ぬって選択肢を出してる様なものじゃないですか〜」
「あっ……それもそうだね」
先輩はちょっと吹き出した。でも何だろう。今の約束……全体的に何か違った気がした。暗くてはっきりとは分からないが、これまでとは何か違った。
「じゃあ明日みんなに言ってみる!だから安心して寝なさい!」
「はい……おやすみなさい」
「おやすみ」
翌日。
あの日以来初めてよく眠れた。これも史花先輩のおかげだ。
でも何であんなに優しいんだろう?
女子高生ってキャッキャしてる人ばっかりだと思ってたけど、先輩みたいな人もいたのかな?
昨日の約束通り先輩は私の家に行こうとみんなに提案していた。当然だが疑問と反論が出る。
「なぁ……史花。外の奴ら見たろ?絶対やばいって……」
「ふみ……史花、何で笹木さんの家に行きたいんだ?」
川口先輩、日向野先輩に史花先輩は言った。日向野先輩はまだ名前で呼ぶのに慣れていないらしく、少しためらっている。先輩だけどちょっと可愛いかも。
「美乃梨ちゃんの親が無事か確かめに行きたいの。もちろんみんなの家にも行く。でも今は美乃梨ちゃんの家に行きたいから着いて来て」
「……正気かよ史花」
「なるほどな。俺は賛成だ」
「ホント!?」
「本当ですか!?」
驚いた。自分と関係ない、しかも危険な事をするのにOKしてくれた。無口らしかったけど妹思いだしやっぱり良い人なんだ。
「おまっ、正気か!?あいつらに囲まれたらひとたまりもねーぞ!?」
日向野先輩は賛成してくれたが川口先輩は反論をやめない。これが普通の反応だ。そこで日向野先輩が川口先輩の方を掴みブラブラ揺らした。
「しっかりしろよ。囲まれなきゃ良いんだ。そうだろ?いつものリア充はどこ行ったんだよ?」
見えない。とても無口に見えない。その真剣な眼差しに川口先輩は思わす目を逸らした。そして私の顔を見て嫌々ながらにも、賛成してくれた。
「あぁーーっ!分かった分かった!行くよ。だけど途中で何か武器になりそうなものを探そう。念のためな」
「おぉ、賢太が復活した」
「うるせーな!ほらさっさと行くぞ!」
「み、みんなが行くなら俺も……」
「皆さん本当にありがとうございます……」




