7: 交戦
夜の暗闇の中、それは近くまで来ていた。
ーー午後十一時三十分。
作戦開始の三十分前。
蓮と胡桃、そして唯の三人は今回の目的地ーーつまり唯の友達である中野芽依の家の近くにある公園にいた。
しかし少し予定より早く着いたので三人は暇つぶしにブランコに乗って雑談していた。
「夜の公園って何か怖くない?」
「全然。そこらへんに浮遊霊が二、三匹浮いてるだけだろ」
「十分怖いよっ」
「蓮、あまり唯ちゃんからかったらダメだよー」
「え、蓮の話嘘なの?」
「え、浮遊霊ならいるよ。ただ唯ちゃんを怖がらせたらダメだよー、って注意しただけ」
「じゃあやっぱりいるんじゃないのー‼」
唯は蓮と胡桃の言葉でキョロキョロ周りを見渡しながら恐怖する。
ーーしかし普通の人間がどれだけ目を凝らしても霊は見えないが。
唯があたふたしているところを二人は笑いながら眺める。
「ほら唯、今お前の後ろに一匹いるぞ」
「ひっ‼」
さらに蓮が唯の今の状態に拍車をかける。
唯は唯で振り向いたらハエが耳元を飛んで行くのに驚いて、ついに気が動転してしまう。
「も、もういやぁぁぁー……」
ーーいやぁぁーーいやぁーーやぁぁーー
からかわれ続けた唯はつい叫んでしまい、公園には唯の叫び声だけが虚しく響いた。
ーー作戦開始十分前。
「やだ、私お家帰る……」
さんざんからかわれ続けた唯はまるで子供のようにいじけていた。
それを見て蓮て胡桃は苦笑している。
まさかここまで怖がりだと思わなかったのだ。
ーーしかしもうすぐ目標が来るのにずっとこの状態でいられたら困る。
「おいシャキッとしろ唯。友達助けんだろ」
「でも、うぅ……」
「芽依ちゃんが死ぬぞ」
「そ、それは嫌だ……」
「じゃあ立て、時間だ」
「わかったよ」
蓮に励まされた唯はゆっくりと立ち上がる。
そして改めて自分の覚悟を決めた。
「そうだよね、私がやらなきゃ」
「そうだ」
「うん、がんばれ」
二人にも背中を押され、唯のやる気が上昇したその時ーー
(さっちゃんはね、さちこっていうんだ本当はねーー)
あの歌が聞こえ始める。
「来やがったか」
「唯ちゃん、作戦通りにね」
「う、うん‼」
ーー作戦通りに。
その言葉を聞いて唯は歌のする方へ飛び出す。
そこには予想通りさっちゃんがいるのを確認する。
そして歌いだした。
「さっちゃんはね、さちこっていうんだ本当はね」
唯の歌に反応したのかさっちゃんは唯の方え体を向けて、
「きぃぃぃぃぃぃっ‼」
奇声をあげながら走りだした。
(ーーよし、ひっかかった)
唯は作戦通りにさっちゃんが走り出すのを見てそう思った。
今回の作戦はこうだ。
一、唯がさっちゃんを公園までおびき出す。
二、待ち伏せていた蓮と胡桃が交戦。
三、私達が勝つ
この内容を思い出しながら唯は公園の蓮と胡桃がいる場所に辿り着く。
「よくやった」
「がんばったね」
ーーポン。
ーーと、唯は二人に肩を叩かれて少し嬉しくなる。
そしてこの行動は今から蓮と胡桃が交戦をし始める合図でもあった。
「さあきやがれ化け物‼」
「おとなしく浄霊されなさい」
二人が唯の後ろにいるはずのさっちゃんに向かって駆け出す。
唯はその姿を捉えるために振り向く。
「うっ……」
そりして激しい嘔吐感に襲われた。
ーー始めて見るさっちゃんの醜い姿に。
いままでも見たことはあったがそれは暗がりでよく見えなかったのだ。
「何なの、あれ……」
さっちゃんは赤いワンピースーーいや血で染まった白いワンピースを着ている。
さらに片足は血で真赤に染まり髪はボサボサ、顔だけが青白く可愛いのがより怖さを増していたーー。
(くそっ、しぶとい‼)
蓮は対魔銃を撃ちながら、中々倒れないさっちゃんを見て焦れていた。
隣では胡桃が身の丈より長い長刀をさっちゃんに向かって切りつけている。
しかし二人の攻撃は怯ませることはできても決定打には至らない。
(奴の弱点は何だ、ただ闇雲に撃つだけじゃダメなのか⁉)
蓮は銃でけん制しながら考え続ける。
そして考える間にも体力は消耗され、徐々にさっちゃんのナイフが体にかすりはじめ、蓮と胡桃の身体を血で濡らしてゆく。
(くそっ、どこだ‼頭か胸か、子宮かっ⁉)
体が傷つき蓮に焦りの色が濃くなってゆく。
その時、後ろから声が聞こえた。
「赤く染まっている方の足を狙って‼」
その声の主はーー唯だった。
蓮は唯の言葉の意味を考える。そして思い出す、都市伝説として語られるさっちゃんの四番目の歌詞を。
そこではさっちゃんの足はなくなったものとして語られていた。
「なるほどな、冴えてんじゃねえか唯‼ 胡桃、足だ、足を狙え」
「分かった」
唯の助言により二人は攻撃の狙いを上半身から下半身に帰る。
それにきずいたさっちゃんは足を引こうとするがーー
「遅い‼」
胡桃の長刀が足を引くよりも早く足を捉えるーーはずだった。
さっちゃんが足に力をこめ上に飛び上がり、胡桃の長刀は空振りをする。
しかし、その光景をみて蓮は口の端を持ち上げる。
(今の奴の反応、間違いない‼ それにーー)
蓮は空中にいるさっちゃんに銃を向ける。
「ーーそれに空中じゃ身動き取れないだろ‼」
ーーパァン
蓮の銃から撃ち出された弾丸がさっちゃんの足にあたり、さっちゃんは地面に落ちた。
「除霊完了」
「だねっ」
蓮と胡桃が身体の力を抜く。
二人の体はこの戦いでもうボロボロになっていた。
そして、そんな二人のところに唯が駆けていく。
「終わったの?」
「ああ、終わったぞ」
「唯ちゃんも大活躍だったね」
「そ、そんなこと……」
「ーー」
さっちゃんが煙になって消えてゆく中、公園には三人の話声が響いていた。
久しぶりの投稿です。どうでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら嬉しいですが。
次回も頑張ります‼
ではまた




