作戦
恐怖する者は恐怖の対象に喰い殺される。
ーー午後九時五十分
「唯ちゃんこないね」
「真紀が姉なら必ず来ると思ったんだがな」
蓮と胡桃は学校の校門で唯のことを待っていた。
その唯はまだ姿を見せてはいないが。
しかしーー
「しかし胡桃。毎回毎回その格好で来る必要あるのか?」
「この格好にも意味があるんだよ。それに蓮だって真っ黒じゃない」
二人は少々奇抜な格好をしていた。
胡桃は巫女さんスタイルで、蓮が上下黒で腰には昨日さっちゃんに放った銃が黒光りしている。
「この格好見たら唯ちゃん笑うかな?」
「笑うだろ、普通に」
「えー?」
のん気な会話が夜の校舎に溶け込んでいく。
誰が考えるだろうか、この二人が人を殺す怪異を殺しに行くと。
そんなこんなで雑談続けて十分。
まだ珠里の姿はなかった。
「本当にこねえな唯」
「こないね」
時間になり二人が諦めて向かおうとした時ーー
「ちょっと待ってー‼」
「ん?」
「え?」
唯が進行方向から姿を現した。
何故が息を切らしている。
「遅いぞ、何してたんだ」
「唯ちゃん心配したんだよ」
「ご、ゴメン」
唯は二人に頭を下げる。
ーー二人とも思わないだろう。身だしなみを揃えていたら予想以上に時間がかかった上に電柱にぶつかって落ち込んでいたなど。
そして唯は顔を上げると同時に驚愕したーー
「胡桃さん……。その格好って……」
ーー胡桃の巫女姿に。
「え……、あ、うん」
唯のリアクションに胡桃は顔を紅くしてしまう。
少しかわいそうに思った蓮は一応フォローをいれる。
「その格好は胡桃が仕事するときの正装だから気にするな」
「そ、そうなんだ。あれ、でも私の家に来た時ーー」
「あの時は緊急だったから着る暇がなかったんだと」
「はあ」
「一応俺のこの格好も正装みたいなもんだしな」
「へー、そうなんだ」
「反応薄いな、おい。ま、立ち話はここらへんにしといて部室に行くぞ」
まだ胡桃は紅くしていたが、三人はオカ研部室に向かい始めた。
ーー部室にて。
「い、いいの?こんな時間に学校の中に入って」
唯は夜の校舎に平気な顔をして入って行った二人を見て戸惑っていた。
「あー何だ、特別なんだ。この部」
「唯ちゃんは気にすることないよ」
「そ、そっか……」
問題が無いわけないのだが胡桃に何の屈託もない笑顔で言われると唯は何も言えなくなる。
「そんなことより作戦説明すっから椅子に座れ」
「あ、うん」
しかし唯の戸惑いを知ってか知らずか蓮はどんどん話を進めていく。
「で、さっちゃんなんだがまずこの怪異には一般人でも対処できる。できるがーー」
「無理なんだよね。私が怒らせたから……」
「そうだ」
自分のやってしまったことの重さに唯は俯いてしまう。
胡桃は黙って唯の手に自分の手を重ねる。
「だが俺と胡桃なら武力行使で抑えこめる。しかし一つ問題がある」
「問題?」
「ああ、そうだ。俺たちだけじゃ出現する場所を予測出来ない」
「予測出来ないと何か問題があるの?」
「ある。それだと出現してからじゃないと俺たちは対処出来ない。ーーつまり、現場についたら手遅れだった。ってことになりかねない」
「そんなっーー」
蓮の言葉に唯は顔を青くする。
ーーだってそれでは被害者が被害にあってから犯人を捕まえると言っているのと同じことなのだから。
しかし今回はーー
「だが今回は唯、お前がいる」
「ーーえ?」
「俺たちもなるべく被害者は出したくない。だからさっちゃんの噂をした友達を教えろ」
そう、被害に合う人間を知っている人物ーー唯がいる。
蓮の言葉を理解した唯は友人の名前をあげる。
「一緒にやったのは欄って子と、芽依って子」
「ふむ、その二人の中で怖がりなのは誰だ」
「えっ、怖がりな子?」
「そうだ」
「唯ちゃん。霊は自分を強く意識している方に惹かれていくの。ーーそれはつまり、怖がっている人のところに行くってことなの」
胡桃が蓮の言葉を補足して唯に説明をしていく。
唯は今日の放課後に蓮が言ったことを思い出す。
「ーー怖がりな子。多分、芽依だと思う」
「そうか。じゃあそいつの家は分かるか?」
「うん、分かるけど」
「じゃあそこまで案内してくれ」
蓮は唯にお願いし、唯は蓮のやろうとしていることを理解する。
「わかった。で、この作戦ってーー」
「ああ、何のひねりも無い。待ち伏せてぶっ潰すだけだ」
そい言った蓮の口元はゆがんでいた。
読者の皆さんあけましておめでとうございます。
正月はどうお過ごしでしょうか。
作者は初の夜中初詣に行ってきました。
そして正月は投稿が遅くなりました。
すいません。
ではまた。




