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1-4 HRと担当教諭

帳とともに職員室までの道のりを歩く。

この学校はとてつもなく規模が大きいので歩いて移動するのはなかなか難儀だ。

知り合いのクラスに話をしに行こうものなら

その移動だけで休み時間が終了してしまう場合もある。

まあ俺にはそんな知り合いはいないが。

不知火はというと何も言わずとも魔術を行使せずに歩いてついてきていた。

俺は単純に興味本位で帳に質問をした。


「担当の先生ってだれだっけ。」


なぜか帳はなぜか嬉しそうな顔をして即答してくれた。


「京先生っていう方らしいですよ。何でも美人の新任の女性教師さんだそうです。」


……

いやな汗をかいてきた。まさか。

同名の人物くらいこの世の中にはたくさんいるよな。ありえないよな。

そういって自分を信じ込ませながら俺は足を進める。


「なんでもすごい雷陣術師でこないだ都心に落ちた超巨大雷はその人の陣術だそうですよ。」


たしか5日前の事件だったか。超巨大落雷が首都中心部で発生した。

それは当初、自然現象とされていたが後々の国家の発表で真相が明らかになった。

あの雷は個人による陣術であると。

とある非合法魔術結社のテロ活動がその日の深夜、

この国の首都の中心部で発生した。

国家も当然治安維持のために戦力を投入した。

しかし結社の行動は迅速で国家側の対策はどれも一手遅れてしまい、

その結果首都中心部の施設の一つである

国立魔法学図書館を占拠されてしまうという芳しくない状況に陥った。

結社は政府に自分たちの活動を公認することをもとめて図書館に立てこもり、

籠城戦を繰り広げた。

膠着したその状況を打開するために国が最終手段として行使したというのが

とある陣術師の戦線投入であった。

その魔術師はその申し出を快諾すると図書館全域に陣を構築し

その範囲内のものを塵も残さず焼き払った。

もちろん数々の文献もともに。

その行使した魔術が超巨大落雷観測の種である。

この後その魔術師は貴重な文献を魔術で一掃してしまったことを

国家上層部にこっぴどく叱られたらしい。

おっと。これは一般的には知られていない情報だったか。

しかし不知火の発言は聞き捨てならない。

もしそうであるならば俺の学校生活は終了したといっても過言ではない。

まさか黒髪の藍色の目をしたわがまましかいわない、

割と美人の女性なわけはない。そうであってはいけないのだ。

しかし。まさか。そんな。と自己暗示をかけていると帳が丁寧にもダメ押しをしてくれた。


「何でも「雷神」って呼ばれているすさまじい方だそうです。

そういえば宣人さんのことを知っているみたいな口ぶりでしたけど知り合いなんですか?」


あ。終わった。俺の緩やかで安泰な高校ライフは終了した。

そういえば先ほどは見逃していたが

先生が名指しで帳に俺に手伝いを頼むよう伝えたことはとても不自然だ。

そして俺の知る限りそんなたいそうな二つ名をもつ魔術師は一人しかいない。

教員室の目の前にたどり着いた。少しおなかが痛い気がする。


「帳。俺少しおなかが痛いみたいだからトイレ行ってきていいかい?」


べたな逃げ方だが許せ。俺は先生とあってはいけない。


「もう少しなんだからがんばってください。」


帳は思ったよりスパルタだった。


「やばいんだ。かなり。いてて…」


「大丈夫ですか。ええと。どうしましょう…」


急にうろたえる帳。やはり優しい子だ。

しかし今回はそれを利用させてもらう!


「トイレ行けば治ると思うからちょっと待っててくれ」


といってそこを離れようとすると帳が何かを思い出したようだ。


「あ。そういえばお薬持ってました。ちょっと待っててくださいね」


といって薬を探し出して差し出してくる。優しさが過ぎるだろう…。

万事休す。俺はそれを受け取って飲むふりをする。

先生との邂逅は避けられないようだ。


「だいぶ良くなったよありがとう」


もちろん最初から調子など悪くない。


「いえいえ」


どうやら俺はこの子にはかなわないらしい。




意を決して扉を開ける。そこはよくある教員室であった。

先生方はプリントをまとめそれぞれの教室へ向かっていく。

ただ一人の女性を除いては。


「あれ。あの書類どこだっけ。あれ。

これ片付けないと。も~。ものが多すぎるのよこの机!!。」


いきなりきれた。理不尽すぎる。

机の上には明らかにその女性のものとしか思えないガラクタが転がっていた。

俺はたまらず進み出た。


「姉さん。この書類はこっち。んでこれはそっち。

あと歯磨きは学校に持ってこなくていいから。」


「そうね。ありがとう宣人。って宣人なんでいるの?

あ。お姉ちゃんが心配できてくれたの?ありがとう」


そういっていつも通りに飛びついてくる姉さんをすらっと避ける。


「よんだのは姉さんでしょ…。

それよりも姉さん、ここの教師になってたんだね。」


「そうなのよ。正直めんどくさかったんだけどね。

理事長にお願いされちゃって。断りきれなかったの。」


新しい職業が見つかったというのはこういうことだったか。しかし

理事長クラスと交友があるとはさすが「雷神」だ。

しかし理事長、どういうつもりだ。俺を招きながら姉さんまで。

いじめか?


「で。まさかとは思うけど1年R組の担任って姉さん?」


「うん。一年間よろしくねっ。」


「それじゃ先生。ホームルームの資料をください。

クラスに持って行っておきますから。」


あくまで俺は一人の生徒としてふるまう。過敏には反応しない。


「じゃあ宣人。これとこれとこれとおねがいね。」


どさっどさっどさっ。結構な重さの紙の束が俺の腕に乗っけられる。

まぁなんて言うことはない。あと名前でいつも通りに呼ぶのはやめてほしい。

となりでは帳がぽかんとしている。


「廓義君って力もちなんですね…。意外です。」


「ああ。これでも一応は体鍛えてるからな。」


想定外の質問に少し驚く。

てっきり俺と姉さんの関係でも問われるのかと身がまえていたんだが。


「あれ宣人。あんたが苗字を呼ばせるのって珍しいわね。

どうしたのかしら?もしかしてこれ?」


といってニヤニヤしながら小指を立てる京先生。

間違いなく先生のしていい仕草ではない。


「それでは「京先生」お先に教室に向かっておりますので。」


片づけをすべて終え、それを無視して俺たちは教室へ戻った。

教室への帰り道に帳が思い出したように俺と姉さんの関係について問いただしてきたが

軽くごまかしておいた。

その中で「教師と生徒。兄弟…。はわわわ」

といって赤くなっていた。なぜそうなったのかは

またしてもわからなかった。

この子は謎が多い。




少年が去った後、京はなぜか真剣な表情で考えにふけっている。


「…なんであの子が教えもしない教材の収用法がわかっているのかしら。」


京の言うとおり机は先ほどと比べ用がないほどに整理されていた。

それはすべてがそのようにあるべきことが最善と思われる位置に配置されていた。

少年がすべてを知り得ていたかのように。

少年の整理スキルが高かった、といえるレベルではなく、

京が唯一こだわりを持つマグカップの位置までも一寸たがわない位置にあった。

家でともに生活しているとはいえ、職場での配置は宣人は見ていないはずである。


「あの子。何者?」


姉が弟に言う言葉ではないがそれを咎める者はそこにはいなかった。

なぜならすでに授業開始まで3分をきっており、

教員室には京一人しか残っていなかったからである。


「あ~。時間待って。ストップ!私を置いてかないで!」


響く絶叫。



帳とともに教室に戻ってそろそろ5分が経過する。

しかし気を抜いてはいけない。

なんといっても俺たちの担当教師はあの京なのだ。

教室の席で静かに京の到来を今か今かと待ち構え、

視覚、聴覚、嗅覚、空気中の具現子の動き、すべてに神経を研ぎ澄ましていると、

廊下に人の歩く気配が感じられた。

それは次第にこちらに接近してきた。

歩幅から考えて身長は170程。

足音の特徴から少しヒールのある靴を履いていると推測。

性別は女性。ということは…。そして扉の手前で立ち止まった。

何をしているのか探るためにさらに感覚を鋭敏化。

その瞬間、その人間の周囲の具現子がありえない速度で運動を開始した。

刹那

轟音。

廊下が光でいっぱいになり、廊下方向を向いて話をしていた生徒は

あまりの閃光に目を押さえている。

そうでなくともほかの生徒は爆音に耳をやられて平衡感覚を失っている。

俺もあと一瞬魔術障壁を張るのが遅ければ危なかった。

今ごろそのあたりで目を押さえながらのた打ちまわっていたかもしれない。

今、行使された魔術はおそらく「叫雷(たけび)」。

名の通り雷系列の魔術で具現子を高速で振動させ、

光の特性を持たせることで発生源の中心から周囲に

激しい閃光と轟音を巻きちらす初歩の魔術である。

創造が容易であるこの術は法3の生徒でも多くのものが扱えるが

この規模、そして具現子の運動開始から

魔術の発動までの時間をかんがみると

その創造力はとても高いもので並みの魔術師ではないことは明らかだった。

そして開く教室の扉。

そこには予想通り…


「はーい。こんにちは。今日からみんなの担任になりました。

(ひかり)(きょう)です。よろしくね☆。」


京が立っていた。

俺以外はおそらく誰も聞こえていないだろうに自己紹介をする京。


「京先生…。何やってるんです…」


「やっぱり初授業だしみんなの様子とか実力を知りたかったし。

こうするのがわかりやすくないかしら。

ちなみに今のに反応できたらは魔術警官クラスの反応速度だからね。」


「俺たちは成績の良くない代表みたいなクラスです。

それぐらいわかってますよね。

それにいきなり魔術警官クラスの反応力を試すのは

エリート相手でもいかがなものかと。」


俺は姉さんのいつも通りさにあきれながらも冷静に返す。

それに対して京は澄ました顔で答える。


「あら。そうかしら。案外無事な人も多いみたいよ」


そういってニコリと笑う姉さん。そんなことはないと俺はあたりを見回す。

しかしそこには京の言うとおり3人、先ほどの影響を受けていない人間がいた。

一人は九重。相変わらず席にだらしなく座って漫画を読んでいる。

そして帳。少し先ほどよりおどおどとしている程度の変化しか見られない。

あと1人は名前を知らない男子だった。整った少し強めの顔立ち。

短い銀髪と銀色のフレームのメガネがよく似合うさわやかな男子だ。

しかしその眼は研ぎ澄まされた刃のように鋭く、とても遠くを見つめていた。


「しかし力抜いてたっていってもショックだなあ。

4人ね。面白くなりそうだね。宣人。」


「こっちを見ないでください。先生。」


しかし俺は感じていた。大きな違和感を。

俺の読みでは自分以外にあの轟音と閃光からは身を守れないと思っていった。

あれから完全に身を守るためには目を閉じ、耳をふさぐことでは間に合わない。

目と耳、両方を共に守り抜くことはその方法では不十分だ。

この魔術に対する対応方法の最善策は具現子の運動開始を最短で感知し、

それの運動パターンから術式系列を判別、魔術の効果判断後に轟音、

閃光に備え自分の身体表面上に薄く魔術的な障壁を展開することだ。

しかしこのためにはたぐいまれなる情報処理能力が必須になってくる。

それだけのことを実践できる人間がそういていいはずはない。

あの叫雷を完全に防ぎ切った九重、帳、

そして銀髪の少年の反応力はその域に達していると考えていいのだろうか。

反応力、分析力だけに特化しているのか。

それとも常に自らの周りに魔術障壁を展開している?

しかしそれは彼らの実技の成績を考えるとかなり厳しいはずだ。

それならば別の方法で自らを守っているのか?

そうして思慮にふけっていると担任の京が声を上げた。


「はい。じゃあみんなが落ち着いてきたからホームルームを始めるわね。礼。」


そして大きな疑問を抱えたままに俺の波乱に満ちた学校生活が始まった。

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