表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/28

2-9 教主と御子

お久しぶりです。遅れて申し訳ありません…

残心。武道の心得の一つで、一連の行動の後に名残、その攻撃の軌跡を残すことでさらなる高みを目指す修練方法。九重はその性格も相まってその行為を好んでいたようだがそれは今回では間違いなく悪手であった。新人戦は死合を求めているものではない。だが少なくとも戦闘続行の余地を奪うことぐらいは必要であっただろう。確かに九重の一閃は伊形を的確にとらえ、一度は地に付した。しかしそれで試合が終わるわけなどもちろんない。彼にとってこれは惑うことのない死合であることはほぼ間違いなかったのだから。





「あ……」


九重は残心を解き、伊形から一歩離れ、刀をおさめようとしたところでその異変を察知する。


「……………」


無言。何も生み出さないはずのその虚無が、唐突に黒を噴出した。それは倒れている伊形の周りから天をとらえようかという勢いで立ち上り、螺旋を描く。そしてその螺旋を彩るように妖しい黒がその軌跡に従い塔を成す。その波は広がり、俺たちの方向まで迫ってきていた。その様子にあっけをとられている暇はない。まず最初に一番近い位置にいた九重が倒れ伏す。そこにあらがう猶予はなかった。黒い霧が伊形を包んだ時点で彼は地面にふしていた。そしてその霧は俺や、白銀委員長、綴紙さんの引くラインまで迫っていた。その中でも二人は冷静に対抗するための攻撃術式を構築し始めていた。しかしそれもおそらくは悪手…


「防御に専念してください!!とても耐えられるものではありません!!」


俺は叫ぶ。しかしそれも遅い。二人は術式の構成完了後にその術式ごと「打ち消し」されて九重同様に地面に膝をつく。二人は信じられないといった表情のままたおれていった。そしてそれは客席の生徒までせまるかと思われたがそのすんでで止まった。


「ッ…魔力許容量が…」


事実、俺も自らの防御に手いっぱいであった。自らの杖を伊形に向け全力で防御術式を展開。相手の術式の解析も同時に行っているがほころびがわかろうともそれを揺るがせるほどの振動の術式を用意できそうにない。それほどにひっ迫していた。今その黒の切によって構成された塔の中で意識を保っているのは俺と…伊形のような何かだけであった。


「いやはや…久しぶりに出てきたけどこれはこれは…相変わらず醜悪な世界だな。そうは思わないかい?少年?」


そういって伊形は生き生きと笑う。しかし奴はもはや奴ではない。あいつの中には別の誰かがインストールされている。それは間違いなかった。そしてその人物に最悪の想定が俺の中にはあった。


「しかもこの体…もろいな。これ以上の負荷はまずいか…」


そういって両手を広げる。何とも間抜けな絵だが今の俺にはそれに対処できない。


「いっそのことここで大きく翼を広げて次の機会まで待つのもいいのだが…せっかくの現世だ。大事にしようじゃないか…それは君から教えてもらったことだったね…御子No.30789君?」

「だまれ…教主…何のために出てきた…」

「覚えてくれたのかい!それは冥利に尽きるよ!!いやいや現界したかいがあったな…うん。あ、僕がどうやってこのタイミングに出てきたかって?それはこの子が「黒の英知」を愛用してくれたからさ…しかもその近くには元御子様までいるじゃないか!!驚いたよ」


そういって伊形の形をした最悪の男はうなずく。「教主」それはこの時代、一つの特別な意味を持つ。堕法教団の当主。最悪中の最悪の称号である。


「こっちとしては本当に帰ってほしいですがね…」

「つれないことを言うなよ…せっかくだ、少し成長のほどを見てあげるよ」


教主はそういって腕をかざす。するとその塔の形状が変化した。塔の内壁から数多の矢があらわれて俺を狙う。その一つ一つが人一人ほどあろうかというバリスタの包囲網。


「そのままじゃあ…耐えきれないんじゃないかな?No.30789。さっさと「御子」二なりなよ?ま、この霧の中で意識を保ている時間で十分すごいか。さすが御子様」

「そんな番号は俺の名前じゃない…一応は廓義っていう名前があるんでな」

「あら、つまらない方向に成長しちゃって…不愉快だな…御子風情が…」


それが引き金。俺を囲んでいた矢が一斉に放たれる。黒矢の集中豪雨。それは俺へすべて殺到する。間違いなく俺はこの攻撃を防ぎきれない。俺は防護壁の出力を上げる。少なくともこの術式は打ち消されない。それはこの男の力をある程度知る俺には断定できた。しかし、かといって耐えられる見込みは皆無であった。少なくとも今のままの俺では無理だろう。だが…


「御子様?そろそろ御業をふるわれるべきでは?」


黒の災厄の中心の男が言う。その眼は今にも倒れそうな俺を笑っていた。


「だれが…」

「そうも言っていられる段階ではもはやないと思うけどね?」

「確かにそうかもしれないな…この状況をあれならひっくり返せるかもしれない。だが何も解決方法はそれだけじゃない」


そういって俺は己が杖である拳銃を投げ捨てる。この銃は長らく重すぎた。その瞬間、俺の視界に輝きが帰ってきた。久しい感覚に導かれながら俺は防御術式の強度をより頑固なものとする。その中で俺は高らかに唱える。


「我、虚空に問う、数多の軌跡、その流動の系譜を絶つものよ」


具現子とは別の輝き。すべての輝きを差し置いてそこに存在を示す、黒い粘性のある塊が俺の手に集まっていた。徐々にそれは形を成していく…


「忘れていましたね…あなた、概念系統の魔術を扱えたのですか…」

「しっかりと敬虔な御子の情報ぐらい把握しておけよ、それがお前の敗因だ」


俺の手には一振りの大剣。俺の背丈ほどあろうかというそれには重さがない。まるで空気のように俺の手に絡みつく。まるで過去の呪縛のように。しかし今はこれが必要だ…


「断ち切れ…戦争と平和の剣(クリアリ-)!!」


振るう。俺が振るった「終了」の概念が教主の術式を強制的に「終了」させる。そこに軌跡は存在しない。残るのは結果のみ。「終了」の結果のみであった。霧は瞬く間に晴れて元の色が返ってくる。そこには俺と相変わらずの伊形ならば見せない類のにやけ顔を続ける教主がいた。しかし満身創痍といった風で、肩で息をついていた。


「やりますね……しかしこれは…いい収穫になりました…どうやらこのたびはここまで、この体はお返ししますよ」


そういって伊形の体は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。そしてそれに続いて…俺もその場に崩れ落ち、意識は闇に沈んだ。

ありがとうございました。更新のペースは落ち込んでしまっておりますが、よろしければお付き合いください。


このお話ではそこどうなってるの?というところが多々ありますが後々解決します。お待ちください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ