2-7 黒の英知
新人戦三日目……
すでにここまでに勝利を連ねた生徒は8人にまで絞られていた。ゆえに今日執り行われる試合は準々決勝となる。
その中には俺が知っている人間が3名いた。文執、九重、そして伊形……
「伊形は何かがおかしい」
不自然なほどの変貌。もはや人間が許容するような変化ではないだろう。それに合わせて生まれた強大な闇の魔術のスキル。
この情報を合わせて得られる伊形変貌の原因。それはおそらく……
「黒の英知……」
教団が生み出した魔薬。飲んだ者に爆発的な魔力の上昇、そして闇の術式に対する適性を強制的に押し上げる魔の薬。「魔力」には個人で不変の絶対量がある。その大本の定義を根底から覆した黒の英知は製造元が教団にもかかわらず、当時は様々な人間がその魅力にひかれ、不法に入手していた。飲んだ人間はそろって闇の術式に特化し、その力は以前の実力とはかけ離れたものになっていたらしい。代わりに使用者はそれ以外の系統の魔術適性を完全に失い、闇の術式以外の行使ができなくなってしまった。しかし使用者の面々は失ったものと比べても得られた力のほうが大きいとその対価を受け入れた。
「だがそれだけではなかった……」
使用者はしばらくすると肉体的な副作用に襲われ始める。飲用者全員の肉体が徐々に壊れていったのだ。最初は筋肉の減少。それだけにはとどまらず、感覚がはく奪されていった。末端の感覚が消える。音が消える。味が消える。光が消える。そして世界が閉じていく。最後には聞き覚えのない声が頭の中で鳴り響き、我を完全に失ってこときれるそうだ。しかしそれと対を成すように彼らは闇の力を得ていった。彼らにはそれしかよりどころがなくなっていく。自らの力の証明、そのために彼らは生きていくようになった。あるものは犯罪行為に走り、あるものは国の戦闘機関に所属した。しかしそのような存在を秩序は許さない。教団の手ごまにされている可能性がある人間たちを伸ばしにはできない。次々ととらえられ、その薬も流通を完全に断絶された…はずだ。
この「黒の英知」の副作用と同じ症状が伊形には表れていた。彼の背後には教団関係者が控えている。それは間違いない。何が目的かは知らないが…
「平穏を汚すなら容赦はしない」
俺は会場へあがった。
今日のカード、一枚目は九重が出場する。対戦相手は伊形穿人であった。
かなり短いものですが、区切り的にここかなあ…と思ったので切らせていただきました。少し更新が開いてしまったにもかかわらず申し訳ありません。もう少し早い更新を目指します。




