1-16 傍目
私は夕闇の校舎の屋上にいた。その後ろでは糸式がウサギを抱えて立っている。
「どうだったかな?久しぶりにみる我が子の姿は」
糸式がいう。その姿は相変わらずの少年であり、気味が悪かった。
「大したかわりはないな。相変わらずの腑抜けだ。」
私は心のままにいう。囲まれた時の反応、黒装束の私に気がつかなかったこと、
どれをとってもふぬけたままであった。
「あはは。きびしいねえ。顔を見せてあげればよかったのに」
糸式は相変わらずの笑顔でいう。厳しくなどはない。当然のことである。
「もう少しできるようになっていたら考えていたな」
そっけなくいう。
「けれどどうして堕法教団なんかをつかったの?すこしリスクが多きすぎやしない?」
奴は奴ならわかっているような事をわざわざ聞いてくる。
それがわざとらしくてむず痒い。
「奴の芯には常に教団がいる。それを排除するために介入させた」
しかしそれに答えないのもひどく不自然であろう。
「なーんだ。結局は親バカか」
やはりそれがいいたかったのか。私は予期していた発言にすぐさま答えた。
「なんとでも言うがいい。但し私と奴は血縁ではないぞ」
「わかってるよ。まるで親子みたいだなと思っただけだよ」
「皮肉にしか聞こえないな」
「僕がいうと自虐にしか聞こえないね」
そういって糸式は笑う。
「時間だ」
私はそうとだけいって腕を振るう。
それに呼応して空間が裂ける。凝縮された空間は不規則に揺らめいた。
「じゃあね。今度はいつ頃にくるの?」
「当分は会うことはないだろうな」
そういって裂け目に入る。その中は変わることない
黒で埋まっていた。
私は振り返らずになにもいわずに歩き出す。
目指す先は黒の奥。地面さえ不確かな空間の狭間をあゆむ。
「じゃあね。魔法使い」
「元…だがな」
私はそうとだけ答えて再び黒に沈んでいった。
こんにちは。これで1章は終了です。
堕法教団?魔法ってそもそもなに?
などなど明らかでない部分は多々ありますが
それもここから書いていきたいと思います。
次回からは2章二なります。
どうぞよろしくお願いします。