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1-10 授業

「お前が風紀委員副長!?それまたどうして?」


九重がクラスに響き渡るほどの声量でいう。

廓義は九重のここ二日についての追求に折れ、その重い口を開いていた。


「わけがわからん…。千手会長がいうには俺の分析力を買いたいらしい」


「そう言えば廓義君、こないだもそうでしたよね…

相手が術式の展開をしている最中に既に防御の形を完成させていたというか…」


不知火のいう相手とは伊形のことだろう。


「おい、それってすごいことじゃないか!」


「もうそれ何回もいわれて飽きたよ…」


好奇の表情をみせる九重とは対照的に廓義はげんなりとしている。

そんな中不意に不知火が声を上げた。


「廓義君!あの時なんかみませんでしたか?こう大きな犬みたいな…」


その声はどこかひきつっていたが廓義はそれよりも

あまりの話題の転換にきょとんしている。


「いやみてないな。どうして急に?」


その問いかけに不知火の表情が焦りに彩られる。


「よかった…」


「よかった?」


「いえ、何でもないんです。今犬を探していまして!

あの時いたかもと思ったんです。本当ですよ!」


両手をブンブンと振り回して主張する彼女は違和感の固まりであった。

しかしそれを追求するほど廓義は気が利かない男ではなかった。


「みつかるといいね」


廓義が不知火に励ましの声をかけると今度は別の方向から突拍子のない声が聞こえてきた。


「まてよ廓義。生徒会に入ったと言うことは…

美少女に囲まれて日々を過ごせるってことじゃないか!」


そのあまりの剣幕に周りの生徒が一様に振り返る。


「廓義…お前はそれが狙いか」


彼はひどく落胆していった。しかし廓義からすればそれはひどく的外れであった。


「んな訳あるか。俺はどこかの色ぼけワーストとは違うんだよ」


「だれだそれは?」


ため息。しかしそれは意外にも廓義と不知火両名から生まれたものであった。


「確かにみんな美少女であるところまでは認めよう。

けどみんながみんなまともじゃないな」


廓義が続ける。ここで会話を終えなかったのは彼なりの良心だろう。


「どういう意味だ?それ」


九重が顔を寄せていう。


「なんだか得体が知れない。魔術師としての練度が非常に高い気がする。

ただの生徒会にあそこまでエリート中のエリートを選抜する意味がないだろう」


「あれ、お前知らない感じか?」


「なんのことをだ?」


「この学校の生徒会は実力主義で決定しているんです。」


「まあ実力で決定するのは生徒会長と風紀委員長のみだから

一応お前はルールには引っかからないな。

けどこんなルールのせいで実力不足のワーストであるお前が生徒会に入ることは

若干のタブーになるんだよ。その中の副長だとは言ってもある程度やっかいごとが

起きることは間違いないからな」


「しかも風紀委員なんていう危険な役職…」


「間違いなく一部のエリートの反感をかうな。

もしかしたら風紀委員副長の地位を利用してまた伊形の時みたいになるかもしれない」


淡々とこれからの危険性を提示する九重の様子とは裏腹に廓義は緊張感のない顔でいった。


「なる程、どうりで…」


「どうした?」


「いや、関係ないさ。次は何の授業だったか」


「次は実技の練習ですね。情報展開の練習だったと思います」


「うげっ、そういうの苦手何だよなあ俺」


「安心しろ俺もだ」


「私も苦手ですよ」


それにしてもこの3人はなかなかの相性だ。


「さて授業始めるわよ。そこの3人、席に着きなさい」


いつの間にか現れたこの授業の担任がいう。

もちろん3人というのは廓義たちのことだ。そして鳴り響く本鈴。

彼らの戦いが始まった。





「…」

「…」

「…」


「君たち大丈夫?」


「「「大丈夫です…」」」


「そう…」


そういって教師は去っていった。

そしてこの三人は今にもこの世から去りそうなほどに疲れていた。

今日の課題はある機器を用いたものだった。

その器具は魔術情報をデジタル的に表示する機械である。

これに特定の図形を表示させる、それが今回の課題だった。

これは魔術情報の処理能力をあげるための練習だ。

さほど難易度の高いものではなくこのクラスでも続々と成功者が生まれたのにも関わらず、

この3人は居残りをしてやっとのことでクリアしたのだった。

その中でも一番疲労の色が濃い九重がいう。


「疲れた~、マジでおれ苦手なんだよこういうの。

けど意外だったのは廓義だな。こないだの伊形の件どうやったんだ?

校内では軽い噂になってるぞ。

「下克上のワースト」って。それが今の処理能力でどうやって勝ったんだよ?」


廓義は二人にあの勝負には勝ったとしか伝えていない。彼は軽くごまかすことにした。


「魔術以外にも色々あるんだよ」


「武道とかか?確かにそう言われればお前って結構それっぽいよな。足運びとか」


廓義は内心で驚いた。

彼はいらないいざこざを避けるためにあえて

「一般人」のような歩き方をしていたはずである。


「なんか無理して歩いてるだろ?もっと最適化された歩き方知ってるでしょ?おまえ」


九重は軽い気で言ったはずであったが廓義から見ればそれは九重への認識を

改める一つの要素になった。


「ああ、昔少しだけ武道をかじってな」


「少しだけねえ…まあいいや。これからどうするよ?」


九重は少しだけいぶかしんでいたがそれもつかの間で普段通りの彼に戻る。


「私、あそこの喫茶店に行きたいです!」


帳が声を上げる。


「そうしようか。店の選択は帳に任せるよ」


廓義はこないだの帳の権幕を思い出して、選択の権利を譲渡する。

あまりにもたくさんのことが起きた数日間を思い返しながら

廓義は帰路についた。

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