月兎
掲載日:2026/08/24
何もしらないままに
宍道湖の水輪となった
それは一筋だけ伝う雨
曇り空を写す淡く白い水鏡は 止まったまま
鮮やかにいない 鮮やかにいないひとを
鮮やかに 映している
鉄橋を渡るあの山と海の合間に
傘を閉じた姿で落花した朝顔
淡い青色に紫が一滴ほど滲んだ色
何もしらないまま
宍道湖の水輪となった
一筋だけ伝う雨
曇り空を写す淡く白い水面は 動かない
鮮やかにいない 鮮やかにいないひとを
鮮やかに 覚えている
湖の底に沈んだ線路 電車は通過しないまま
標識だけが水面上に浮かんで
白鷺が止まり木にしている
羽ばたき
波紋を広げて
微かに揺れる水面
しじみを掬う籠
どじょう掬いの籠
豆絞りの手拭いを被り
ひょっとこお面で 踊っていた
戯けていた
泣いていた
笑っていた
夜の光 還る舟
あの月ウサギとなり
優しい光に包まれ眠れよ




