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クラスメイト

「じゃあ私は、もう行くから宿題サボらないようにね」


「はい。俺は授業は午後からなので少し休んでいきます」


幸い今日の授業に実技はない。それに、一応教科書等も持ってきているため寮に戻る必要はない。

木陰に腰を下ろし、時間を潰す。


「確か授業は午後からだったよな」

ちょうどいい頃合いを見て移動し、教室に入る。

教室にはまだ誰もいなかった。

俺は席に荷物を置き、先輩から言われた“宿題”に取りかかる。


「先生からバレないような魔法と言ってもな…」


バレないだけならどうとでもなる。

けど、せっかくなら実戦でも使える形にしたい。


射程は三メートル以内。

さらに目立たないよう、サイズも最小限。


防御用――せっかくなら自由に動かせる盾のような役割を持たせたい。


試しにイメージ通り組んでみる。

空中に、六角形の薄い氷板が静かに浮かび上がった。


「イメージ通りだな」


既に制約はかなり重い。だから細かい効果は自由につけられる。

今全て決める必要はないだろう。

基本魔法は間合いが広い時に攻撃に使われることが多いからな。

そんな遠いところからの攻撃なら見てからでも防げることが多い。


それよりも――魔法じゃない攻撃。

純粋な物理にだけ反応するよう限定した方がいい。


実際先輩やクレイさんは魔法だけでなくシンプルな体術を使うイメージだしな。

とりあえず今はこれでいい。


一応魔法は考えることができた。

机の下で隠すようにして発動させる。


授業の時間が近づくとゼクスをはじめ、段々と人が入ってくる。

来た者同士で魔法について話し合ったり授業の予習に励んだりしている。

しかし、既に何個かのグループが作られているようでどこもまとまって動いている。


笑い声があちこちで上がる中、俺の周囲だけが妙に静かだった。


昨日は誰も知り合いらしいそぶりをしていなかったはずなのに。いつのまに?

いや、昨日は俺だけ実践の後教室に戻っていなかった。

その間に、友人を作っていたのか。


誰とも話すことなく座っていると、先生が入ってきて授業が始まる。


「1限目は、魔法と魔術の違いを話していく。そこまで難しくはないが、大事な基礎だ。ちゃんと聞くように」


魔法と魔術。小さい頃は、違いがわからず魔法を魔術と言ってよく治すように言われた。

結局違いがわかる前に一緒にしてはいけないということだけ覚えてしまったんだよな。


「まず魔法とはなんでもできる不思議な力ではない。制約を課すことで術者の求めている能力を具現化した物。それが魔法だ」


黒板にチョークを擦らせて説明を記載しながら話し始める。


「しかし制約のルールは複雑で、解明されていないことも多い。例えば小さい魔法。相手から身を守る魔法の場合、それは欠点になり得る。だから制約になる」


「逆に相手からバレないことを目的とするならば、それは能力の効果の一部となる」


「つまり、一見制約になりそうなものも術者が求めているか否かで制約から外れてしまうことがある」


なるほど。

机の下の魔法に意識を向ける。ならこの魔法の場合、小さいという条件は制約に入るのか。

先生から隠すための魔法ではなく、あくまで盾としての魔法だからな。


前を向くと先生と目が合った。

すぐに視線は切られてしまったが、何かしでかしたつもりはない。

昨日のことについてだとしても、今目が合うのはおかしい。


先生は再び説明を始める。

「これが魔法だ」


「次に魔術についての説明をする。魔術と魔法は仕組みは同じだ」


何か先生の姿が霞んで見える。


「では魔法と何が違うのか。それは、制約の内容だ。魔法は、どれだけ重い制約を課そうとしても倫理的に問題がない内容だ。しかし、魔術はその逆で非倫理的な内容の制約になっている」


「例えばそうだな。使ったら術者が死ぬという制約や、人が人であるために必要な感情を犠牲にする制約などが、それにあたる」


激しい眩暈がして、疲労が込み上げてくる。

「これが、魔術だ。魔術は国が禁止している為使わないように」


なんとなく魔術が何かは、わかった。

だが、それよりも先輩の宿題が想像以上にきつい。


「レイさん?気分が悪いんですか?」


先生が、様子の変化に気づいて聞いてくる。


「大丈夫です。授業を続けてください」


それを聞いて先生は授業を再開する。その瞬間、足の感覚が消失し、軽い浮遊感を感じた。

視界が横になっている。微かに意識は保っていたが、先生の声を拾うことはできず。

俺は意識を失った。


目が覚める。

視界には白い屋根やカーテンが見える。

俺はベッドの上にいるようだ。


「目が覚めたんですね。良かったですぅ…」

小動物のように縮こまった雰囲気の少女が話しかけてくる。


「えっと?…あなたは誰ですか?」


「そうですよね…私なんて落ちこぼれですし、覚えてないですよね……私、レイさんと同じクラスのサラって言いますぅ…」


同じクラスだったのか。それは、悪いことをした。けれど昨日からほぼ誰とも話していないからな。正直ゼクス以外名前がわからなかった。


「その…すまない」


「いえ…私がパッとしないのが悪いんですぅ」


それにしてもこの人自己評価が低いな。とても戦闘学科には見えない。

そうだ!今の時間は?

壁にかけられている時計を見ると既に6時を指している。


「こんなに寝てたのか…流石に授業終わってるよな」


「はい、20分前に終わりましたぁ」


終わってしまったものはしょうがない。ここは保健室のようで俺の鞄もすぐそばに置いてある。

帰ろうと鞄を持ち上げる。すると、外から先生が入室してきて話しかけてくる。


「レイさん。授業中の魔法の使用は基本的に許されています。しかし、体が異変を感知するまで能力を解除しないのはやめてください。次倒れたら禁止にします」


「気づいてたんですか?」


「国から認められたものだけがここで教員を務められます。あれぐらい授業中でもわかります」


バレていたから授業中に目があったのか。

あの時のことを思い返していると、『グウゥ〜ウ』

俺のお腹が音を鳴らす。

そういえば今日は、朝食以外食べてなかった。


「はぁ、食堂は夜でも空いているのでそこに行くことをお勧めします。学生は無料なので」

ため息を漏らしながら、先生は部屋を出て行った。


「食堂か…どこだ?」

この校舎も広いしあまり校内地図も見たことがない。


「あのぉ…昨日、校内の施設について説明されていたので私わかります。教えましょうか?」


困っていたところに女神のように手を差し伸べてくれた。


「いいんですか?」


「はい、私も…お腹減っていたのでぇ」

かなり無理しているようにも見えるし、ただ人見知りなだけにも見えた。

けれど一人じゃ時間がかかりそうだ。それに、好意を無駄にするのも悪い。

そう思い、食堂まで案内してもらう。

彼女の立ち上がる動作は、妙に静かだった。


「じゃあ早速下駄箱行きましょう」


「本館にあるわけじゃないんだな」


「はい、この学園はサークルの活動を放課後にそれぞれの研究室でやっている人が多いんです。そんな人たちが帰る前などに手軽に寄ったりできるように研究室が密集している付近に食堂専用の建物が建てられているんです」


そう言いながら歩いていく。俺はサークルにも所属していないからな。本館や寮の場所ぐらいしか知らなかった。案内してもらわなければ確実に迷っていただろうな。


「本当に案内してくれてありがとう。一人じゃ確実に迷っていた」


「ふぇっ!?そ、そんな〜いいですよ〜」


少し褒められると調子に乗りやすいタイプだな。

サークルの施設を遠目に見ながら歩く。


「あれが食堂ですぅ」

かなり綺麗な作りをしている。2回にはテラスがあり、もしきたのが夕方ではなく昼頃なら日が差し込み輝いて見えただろう。


なかへ入る。カウンターの端っこに食券取り場がある。俺は唐揚げ定食をとる。


職員に渡すとそれほど待つことなく出来上がり渡される。

サラは、生姜焼き定食を食べていた。

お互いのことをあまり知らないこともあってか食事中は特に話すことなく、食堂で分かれる。

去り際に、「じゃ、じゃあ今日は安静にしてよく休んでくださいねぇ」

と、告げられ寮に戻った。


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