冷酷な観察者
腕は掴まれてしまった。
しかし、サラさんに私の姿は見えていない事は変わらない。
手数で転送されるまで削り続けましょう。
「風刃」
ザシュッ
四方八方から放たれる風刃が、サラさんを切り裂いていく。
それにしても流石ですね。この量の攻撃をほぼ全て擦り傷で済ませるように避けている。
しかし、出血は止まらず寧ろ勢いが増している。
動きも鈍くなっていっている。
まだ、これほど警戒されてしまっていては相打ちに持っていくことなんてほぼ不可能ですぅ。
目が…霞んできました。
こうげきを…捌ききれない——。
ついにサラは、膝をついてしまう。
さっきまで暑く感じていた体が緩やかに冷えていくのを感じる。
そろそろサラさんも限界そうですね。
だからこそ気をつけて確実に倒しましょう。
しかし、魔法の使用頻度が多くなってしまっている。この試合は問題ないが次の相手と戦う時に魔力不足になるかもしれない。
「早く倒れてくださいもう勝負は決まりました。貴方の負けです」
まだよろけながらもサラさんは攻撃を避けている。
倒れない…何をしようとしている?ここから逆転なんてそうそう出来ることではない。
少しでも魔力を減らそうとしているのでしょうか?
早く…倒れ——。
後ろの地面が盛り上がったのを感じる。
人の気配!?
まさか、今まで攻撃していた相手は偽物!
本物は地面を辿って来ていた!
「惜しかったですね」
なんらかの攻撃をしてくる事は容易に想像できました。
だから、予備の風刃を常に一つ残していましたしね。
「終わりです」
風刃が背後に現れたサラさんを真っ二つに切り裂く。
「これで終わ…」
いや、さっきまで攻撃をしていたのが偽物だとしたら本物はほぼ無傷のはず…なのにこんな攻撃に反応できなかった?
本物じゃない…
まさか——。
ズドンッ
背後から衝撃が走り直後痛みが全身を駆け巡る。
「本体が自ら傷ついて隙を作る。全く普通から逸脱した考えですね」
幸いサラさんとは違って致命的な傷を負わされたわけじゃない。
まずは距離をとって…
ガシッ
サクヤさんの足を掴む。
「逃がさないです」
このまま、一気に相打ちへ持っていきます!
ドゴォ!
サクヤさんを吹き飛ばすとすごい勢いで地面へ叩きつける。
攻撃の手は緩めません。私はこの怪我ではいずれ転送されるのは時間の問題。
だから絶対に彼女も脱落させていって見せます!
次は殴打じゃない。
少し大きめの刃物を作り出す。
「これで決めます!」
刺さった!
いや…何かおかしい。
手応えが、
「痛ッッッ」
なんとかナイフを手で受け止めて攻撃を逸らした。
まだ致命傷を受けるわけには行きませんしね。
よっぽど相打ちをしようと必死だったんですね。
連撃の途中に攻撃が来なかった違和感にも気づかずに。
「掌風」
「この魔法は、貯めた時間に比例して威力が上がる技」
狙いを定めながら話しかける。
「この程度じゃ、たいしたダメージにならないでしょうけど吹き飛ばすことくらいはできます」
ブワッ
砂埃が舞い上がりながら風がサラさんを吹き飛ばしていった。
そして、サラさんは気を失い時間切れ。
転送されていった。
試合の終わりをレイ達は見届けていた。
「シンプルに戦闘のセンスでサラはついていっていたが、終始昨夜のペースだったな」
相手が回復する前に次の人が出るべきという考えでゼクスがレイに問う。
「次はどっちが戦いに行きます?」
「お前が言ってもいいが、情報は次戦う相手に見せたくないな」
「他チームの記録は全ての試合が終わるまで見る事は出来ない。だから僕が今出てもトーナメント中は問題ないんじゃない?」
「おそらくそうだろうけど、一応なんらかの方法でバレるかもしれないし一応な」
「そう?じゃあいいけど、勝てそう?近距離戦メインの君が見えない状態であんな遠距離から攻撃する相手に」
思ったよりも難しい相手とは思わない。
「あぁ、これだけ外から見ていれば対処法くらいは思いつく」
そしてサラと交代して俺がサクヤと戦う。
「よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
挨拶を告げるとサクヤも愛想良く挨拶を返す。
刃物が手を貫通している。
かなり痛いだろうに平静を装っている。
凄いな。
お互いに闘技場へ入場したことをが確認とれたところで試合が始まる。
開幕
「視覚遮断」
いきなりか、
風が砂を巻き込んで俺の視界を奪っていく。
これをまずどうするか。
「氷鎖槍《繋》」
氷の槍を作り真横へ魔法で勢いを付けながら投げる!
更に槍が魔法の射程範囲を出る前に鎖を作って繋げる。そのまま鎖を作り続け、槍の位置を把握する。
次は左に投げて——。
これでいい。
槍との距離を作った鎖の長さで測り、更に槍の角度を大体で把握する。
やっぱり、
真横に投げたはずなのに少し前方に刺さっている。
これでやはりこの魔法の風はサクヤから出現し前へ向かって吹いているのだろう。
俺の後ろにぶつかった風は左右に分かれて回るように前へ向かって進んでいく。
俺の顔に砂が当たり続けるのに左右の遠くに投げた槍が前方に落ちているのがいい証拠。
さっきのサラとの戦いでもサクヤの方には砂埃は飛んでいなかった。
これらの点からこの魔法は前方に砂を巻き上げるだけの魔法だ。
いや、外からじゃ見えないはずのサラの位置を把握していたことを考えれば空気の流れかなんかで相手の位置を知ることもできるようだな。
ならば次に気をつける事は、
「六花」
ガガガッ
六花がサクヤの攻撃を防ぐ。
「当然相手の攻撃だよな」
相手の位置を把握できるのは大きなアドバンテージだろうが俺もお前の位置は大体予想できる。
そして、ここからどう近づくか…
この砂埃じゃ目を開き続けるのはまず無理だろう。そして回り込もうとすれば風向きの変化に混乱して余計迷ってしまう。
大前提として真っ直ぐ突っ切る事は変えられない。
「初めて属性が役に立つな」
六花を目のすぐ前に持っていく。
「氷でできているから透き通っているな。これなら簡易版のゴーグルとして使える」
二つゴーグルに使うとして残りは4枚これは全て防御に徹する。
お相手さんは俺の位置がわかるからな。ちまちま近づいたところで逃げられるだろう。
ならば、
素早く近づけばいいだけだ。
足元から斜めに氷の柱を作り出す。
風を切り砂埃を掻き分けながら俺はスピードを上げていく。
普段の俺では絶対に出せない速度になり更に加速を続ける。
こうする事で早いスピードで近づくことが——。
サクヤの魔法から脱出する。
世界が開けた。
そして——。
サクヤの姿を確認する。
「見つけた」
多少予想とはズレた場所に出た。
まぁ感覚だしなこれくらいのズレはしょうがない。
それに、見つけて仕舞えばこちらのものだ。
素早くサクヤに近づく。
「視覚遮だ——。』
「雪室」
ドーム状の氷でサクヤと俺自身を閉じ込める。
「これでさっきみたいに逃げられないな」
サクヤは悔しそうな表情をするがすぐに切り変える。
「風刃」
見えてさえいれば避けるのは俺でもギリいける。
やっぱり、俺の言葉を信じて攻撃してきたな。
あいにくお前の風刃を同時に出す技はここでは使えない。
大きさ的にも一つはできたとしても二つ以上は中に作る事は出来ない。
出来ても致命傷を負わせるほどの大きさのは出来ない。
そして俺は雪室を使っている間攻撃魔法は使えない。
だけど、閉じ込めて一騎打ちっていう俺のブラフに引っかかってくれて
「ありがとう」
雪室を解く。
サクヤが混乱した瞬間——。
「氷鎖槍」
氷鎖槍で胸を貫く。
サクヤは刺された胸ではなく俺を見続けている。
これは——。
「風刃」
最後にサクヤが力を振り絞って打ち出した風刃を六花で防ぐ。
「最後に相打ちに持っていく事は俺も既にやっている」
「だから、1番警戒している」
そうしてサクヤは転送されていった。
「対策が立てられたからこそ全てうまくいったが、正直初見じゃ確実にもっと削られてたな」
こうして残りチームは1対2。
俺たち有利で相手チーム最後の生徒が出てくる。




