砂の監獄
サラはそのまま次の相手を迎える。
次、あちらの入り口から姿を現したのはサクヤという生徒だった。
「お願いしますぅ」
毎回相手が変わると緊張がリセットされるのかもう一度緊張しながら挨拶をしている。
「はい、お願いします」
サクヤは水色の髪をかすかに揺らしながら丁寧に頭を下げ挨拶を返している。
サラもつられて頭を下げている。
「これから戦うとは思えないほど穏やかだな」
「まぁ、2人の立場になったら流石に緊張がすごいと思うけどね」
ゼクスの言うことはもっともだな。
見てるだけでは分からないその場の空気感というものもある。
二人が構えた時スタートのコールがされた。
「どうしましょう…」
お相手さんはどう攻撃してくるんでしょう?
こっちは相手の戦い方が分からない。
けれどあちらはさっきまで私の戦い方を見ていたはず。
なのに攻めてこない…?
様子見?
それとも自分から攻めずらい能力でしょうか?
いや、応用力が高いとの情報があったはず。つまり攻めるのを待っている可能性もある。
幸いさっきまでの闘技場の状態のまま戦っている。
つまり、さっき作った壁は残っている。これを使ってバレないように近づく。
「視界遮断」
世界が閉ざされる。サラを急激な閉塞感が襲う。
周りが見えない。
閉じ込められた?
いや、違いますぅ。これは、土煙で周りが見えないようにしてるんですね。
さっきの戦いを見ていてサラさんについてわかったことがある。
まず一つ目感覚派であるという事。
危ない瞬間があってもギリギリで回避をしていた。
あの反応速度で頭で考えてから動いているとは思えない。
そして二つ目考えて動いているという事。
大まかな動きを考えてそこからは感覚頼りで動く。
おそらくそれが、サラさんの戦闘スタイル。
だからこそまずは視界の情報を奪った。
これで考えなければいけない情報が増える。
説明できないサラさんの感覚を解明して確実に潰して見せましょう。
どうしましょう?
ジジッ
ナイフを作り出し構える。
これで少しでも違和感があれば攻撃をしましょう。
サクヤさんはどうやって攻めて来るんでしょう?
この視界では私はサクヤさんに近づけない。
つまり土煙の外から攻撃をして来るんでしょうか?
それとも奇襲を仕掛けるために近づいて来るのでしょうか?
「と、考えているといいんですけれど」
それはそうと、あまり時間を使ってはいられない。
「サラさんが吹っ切れる前に早く動きましょうか」
「実験を」
サラさんの感覚は、なんの情報をメインに判断しているのか。
本当に少し先も見えないですね。
「それだけじゃないですね」
目を細くしていないと砂が目に入ってしまいそうですぅ。
視界不良でその上瞼もギリギリまで狭めなければいけない。
これじゃあ流石に相手の位置をなんとなくで感じることが出来るはずもない。
チクッ——。
何かが腕と胸付近に刺さった。
ガンッ
すぐにナイフで叩き落とす。
「これはさっきカイウスさんが使っていた土槍闘技場に刺さったままのやつを…風で飛ばしたんですね」
サクヤさんは、同時にふた方向から攻撃して来る事が出来る。
今回は二つだったから深く刺さる前に落とせたけど、
「本当に人なんですかね。あの人」
視界ゼロの状態で射撃されたんですよ。
確かにカイウス君の土槍を風で無理やり打ち出したのでそれほど威力もスピードもありませんでしたけど…。
それでもあれは——。
自分に当たってから深く刺さる前に反応して叩き落とす。
こんな芸当が出来るなんて、
見たばかりなのに——。
既に信じられない。
「これで、音とか何に反応してるのか調べたかったんですけどね」
知るべきことではあるけれど、正直知りたくなかったですね。
サラさんは一定以上の威力または、一定以上の規模の攻撃でなければ単体で効果はない。
そんなの、
そんなのって——。
「なんて、楽しそうなんでしょう」
あぁ、読まれやすくなるので控えていたので控えてたんですけどね。
笑みが止まらない。
倒すつもりで攻撃をしましょう!
「烈風」
本来相手を吹き飛ばす攻撃、
これの範囲を縮めて、縮めて
ゴゴゴゴッ
今にも破裂しそうに風が渦巻いている。
「これで土槍を飛ばす」
少し角度をつけて頭に当たるように調整しよう。
「発射」
ズバァン!
烈風が破裂し土槍がものすごい勢いで滑らかな軌道を描き、サラの頭へ向かっていく。
これだけは被弾してはいけない。
それだけはわかる。
べキンッ
ナイフが折れた。
けれどなんとか弾く事ができました。
これが当たっていたら…頭であればもう終わり。
違う場所でも…想像したくないですね。
「弾いたね」
この攻撃は当たらなかった。
サラさんからしたら魔法の破裂音は真横から聞こえたはず。
なのに、上からの攻撃を弾いた。
つまり音で判断していない。
視界でも音でもない。匂いもこの場では関係ないと思いますしね。
いや、何か外的要素で攻撃を判断しているのであれば最初の攻撃も当たってから弾くなんて事をしなくていい。むしろするだけ危ないだけなはず。
じゃあ、最初と今回の攻撃の違い…倒す気があったかどうか…とかですかね。
危険なものを本能で察知しているという事でしょうか?
なら知りたい事は知れましたね。
ここからは一方的に攻撃して終わらせましょう。
「そういえばおかしいですよね」
サクヤさんはどうやってこちらの位置を把握しているんでしょう?
そういえば風魔法は探索に使えるって聞いた事があります。
確か理由は——。
そうです!何があるか風魔法で把握できるからでした。
見えてなくても風魔法で確認する事が出来る。
つまりこの『カーテン』は相手の視界を奪うついでに相手を捕捉し逃さないようにするエリアを作る能力。
砂埃が多いこの場所が見えるわけないですもんね。
なら、今度はこっちが騙しましょう。
土のシェルターを作る。
「なんでしょう?」
カーテンのエリアのサラさんがいたところに大きな円状の物体が現れる。
サラさんはその中にいるようですね。
「引き摺り出しましょう」
「風刃」
何度も攻撃をするとだんだん物体は削れていく。
するとサラさんが外へ出てきた事を感じ取った。
「風刃『檻』」
風刃がサラさんの周りを飛び交って囲うように配置される。
サラさんは気づいているんですかね自分の喉元に大量の魔法が迫ってきていることに。
そう思い切りつける。
サラさんが地面へ崩れ落ちる。
「やっぱり見えてるわけじゃないんですね」
操作していた土人形の反応がない。
おそらく壊されたのでしょう。
なら、沢山の情報を押し付けてあげましょう。
「弱すぎますね」
さっきまで人外とも思える反応速度を発揮していたサラさんがこれで切り刻まれると思えない。
逃げ場こそないですけれど、
終わりかと自分に問いかけたら違和感を感じる。
それに、まだ自分の中の警戒が解けない。
土人形を増やし一斉に動かす。
「私も…」
土人形に紛れて動く。
「よかった」
正直今相手の状況がわかっていなかったけれど複数のサラさんの反応を感知したおかげで偽物がいる事がわかった。
属性的に土人形みたいなものを作ったのでしょう。
「今気をつけるべき事は…」
土人形と本人をどう見極めるか…なんだったらこの中にもまだいない可能性もあり得ます。
とにかく攻撃して数は減らす。それでもこのペースではおそらく全てに攻撃する前にこっちにこられてしまうでしょうね。
「あ、」
そうです!全て倒す必要はない。
「風刃」
次は威力を下げる。
全てのサラさんの反応に攻撃するために数を増やし、
発射する。
全てのサラさんに攻撃が入った。
「どういうことでしょう?やはりこれらの中に本体はいなかったということでしょうか」
なら本体はどうしているのか、
土魔法、障害物を作る
地面を操作、穴を作ることもできる。
もしかして、穴を掘ってこちらに近づいている?
絶対にない。
とはいえないですよね。
一応魔法が突破された時のことを考えておいた方が良さそうです。
ズドッ
「ウッ…」
脇腹に鈍い痛みが生じる。
これは…
攻撃された方を見るとサラさんが立っている。
近くに穴はない。なら魔法の中をそのまま突っ切ってきたということ。
どうして私は彼女を見失っていた?
ブシュッ
サラさんの腕から血が流れ出ている。
さっきの攻撃、サラさんなら避けられるだろうからそれで本物か偽物か見極めようとした。
けれど、サラさんはわざとくらいながら近づいてきたんだ。
土人形を完全に壊していなかった。だから動き続けていても違和感を感じなかったんだ。
「風刃」
これに合わせて私も接近戦をするしかない。
それが唯一の勝利へ向かう行為になるはず。
カーテンを解除して確実に攻め続ける。
ほぼ同時に3方向から攻撃する。
これをずっと続けるように攻撃している。
なのになんで、
普通に捌き切っているんでしょうね。
やっと私の得意で戦えますぅ。
接近戦もサクヤさんはかなり上手く戦っている。
しかし、この分野では私の方が得意なようです。
それに、
さっきと違って攻撃を受ける前に攻撃を察知する事が出来る。
さらに地面の形を変更して体制を崩させる。
「視界遮断」
それは意味ないと思いますが…
さっきのようにサクヤさんと私の距離が離れているわけではない。
これではサクヤさんもカーテンの中へ入ってしまう。
これでいい。
これがいい。
目で見るよりこの魔法で攻撃を感知した方がよっぽど戦いやすい。
それに、この中では相手の様子が分からないのはサクヤさんも知っているはず。
だからこそこれが刺さる。
風魔法だけではできない攻撃。
私は拳をサラさんへ突き出す。
当たり前のようにサラさんの体へ当たった瞬間に手首を掴まれてしまう。
「ありがとう」
やっぱり掴んで止めてくれると信じていました。
サクヤさんが攻撃してきた。
これはもう一度逃げられるのだけは避けたい。
だからもう逃さないようにすべきですね。
手首を掴んで判断する。
「ありがとう」
お礼?なんで急に…
サクヤさんの手が開かれる。その瞬間に私は身体にひどい激痛が生じた。
「え?」
そう私は考えていた。どう攻撃をすれば防がれないか、
そして決めた。
近くにあった土槍のかけらを掴み、サラさんに殴りかかる。
止められた瞬間は手は既にサラさんにかなり近づいている。
この状況であれば風魔法で飛ばしたとしてもサラさんが、弾く前に体の中へ入ってしまう。
でもこれで終わらせはしない。
確実に勝利を得なければチームの勝利はほぼあり得なくなってしまう。
痛い。
何かが体の中深くまで刺さってしまった。
血が止まらない。このままでは倒す倒さないではなくこっちが倒れてしまう。
視界も見えない。
手首を掴んでいるからサクヤさんの位置だけはわかる。
私はこの状況では勝つ方法がほぼ思いつきませんね。
不本意ですが、
ギャンブルですけれど——。
本当にしたくないですけれど、
勝つためにはしょうがないですね。




