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狂気じみた少女

負けられない戦い。普通ならそんなふうに考えながらここに上がるのかもしれない。


「3組代表、7組代表は入場してください」


実況の声を聞き、静まり返った戦いの場へ歩みを進める。

向かいには強そうな男の人が佇んでいる。

やっぱり相手もリストバンドをつけている。


よかった。ちゃんとつけてる。


目の前が少し赤く染まる。


直りますしね。


脳内では殺すという選択が生まれる。


「よろしくお願いしますぅ」


「よろしく」


相手を倒せば勝ち。

殺すか、動かなくするか。

やりやすいのは…”コッチ“ですね。

それにしても、

本気で殺し合う相手に挨拶なんて変な感じがします。

でも、本当によかった。レイさんと戦った時と違ってちゃんとやれます。


相手を見据える。呼吸はゆっくりと静かになっていく。

視界に移る観客席は白く塗りつぶされていき目の前の敵だけが映る。

自分の心臓の音がドクンドクンと音を立てている。


緊張と共に湧き上がる高揚感が達したと感じた瞬間に実況が話し始める。


「それでは初めt——」


足元に亀裂が入る。

岩でできたグローブを腕に生成して走り出す。

風の音を立てながら景色が変わっていく。


相手の人がみえた。


この攻撃を確実にあt——。


サラの拳は自身の思考スピードを超え相手へくり出されていく。


シュッ——。


誰もが予想していなかったであろう速攻での一撃は相手を捉えることはなかった。


あれ?絶対当てたと思ったのですが、


直後サラの視界の周りは黄色く光り、認識するまもなく電気が体を駆け巡る。


バチンッ!


音を立てながら一瞬で電気は消えていく。


痙攣したような体を震えを振り払う。

ビリビリしました…。お相手さんはどこに行ったのでしょう?


右を振り向くと手に電気をまとわせて敵が佇んでいる。


「まだスタートって言ってなかったでしょ。忙しない人だな」


「そんなことないですよぉ〜…スタートを言い終わった瞬間に攻撃しましたから」


「あはっ」


やっぱり一撃で終わらせるなんて無理ですよね。もっとちゃんと確実に壊さないと。

指を絡ませながら静かに笑う。


「な、なんだ?」

戦闘前から常に様子が変化していくサラを前にヴァイドは違和感を感じていた。


電気は軽く足止め程度の電流だったしダメージを負っていないことは問題ない…けど。イメージと全く違う印象だな。速攻してくるとしても開始の合図ギリギリでやってくるようにも見えなかったし…。

あまり時間はかけない方が得策だな。一撃入れて動きを止める。それから勝負を決めよう。


「そっちが来ないならこっちからいくよ!」


サラの瞳は何を捉えているかわからない程歪んでいるような雰囲気を帯びている。

しかし、視界には確実に相手を写す。


次は殺さずに確実に相手を削r——。

いえ、私はこんな戦い方はやめると決めたはずです。


まずはあの魔法を避けて攻撃を当てるところから始めましょう。

ゆっくりと相手を向き歩いていく。

ヴァイドの手はサラを捉えることができず、空間に電気の跡を残していくだけになっている。


サラも攻撃をすることができずあたりにはヴァイドの攻撃をした焼け跡のみが残っている。

同じことが繰り返される中、変化し続けることがある。

1撃目サラはヴァイドの攻撃を後ろへ退くように回避する。

2撃目3撃目と後ろから横へ、移動して避けていた状態から体を傾け避ける。

サラの回避は段々と攻撃に近づいていきギリギリで避けるようになっていく。


時間をかけることなくサラはヴァイドの懐へ足を踏み入れた。


「終わらせます」


サラが拳を振ろうとした瞬間。ヴァイドの魔法の形状が変化してサラへヒットする。


「ガッ!」


猛々しい電気の破裂音と共にサラの動きが硬直する。


「危なかったけどこれで終わらせるね」


ヴァイドの連撃がサラを壁へ吹き飛ばしていく。


ガンッ


壁に打ち付けられ、サラは倒れる。


いたいなぁ。背中もあついし、息もできません。

こんなに痛いことをされたのは久しぶりですね。


「ケホッ」


咳が出てまだ呼吸はままならない状態。


視界は床に伏せたまま走り出す。

土のグローブは解除しただただスピードを上げていく。

サラの意識は風を切る音を置き去りにして相手の懐に向かう。


「また止めて終わらせます!」


サラは避けることなく真っ直ぐに走りこみ前へ手を出す。


「は?」


そのままヴァイドの攻撃を気にせず走りそのまま電撃に当たる。


掠っただけのさっきとは違いまともにぶつかったからかバチバチっと音が長く鳴り響いている。


電撃の中でゆっくりとサラは手のひらを開ける。

その中には尖った土の塊が二つ浮かんでいる。


「なんだ?」


ヴァイドはサラの行動の意味がわからずサラの方へ向き直る。

ヴァイドの視界はサラの歪んだ焦点の合わない目を歪ませた笑みを瞳に映した瞬間に暗闇へ引き込まれた。


サラの視界は黒く、赤く染まっていく。


「一つ目、」


サラの前に立っていたはずのヴァイドの瞳は消えている。


なんだ?

何も見えない何が起こっている?

閉じ込められた?


急な展開にヴァイドは何が起こったかわからず混乱していた。


少し遅れてやってきた眼球の痛みに何をされたか理解する。


まさか…目を潰されt——。


脳が理解をすませる前に当てずっぽうで攻撃を繰り出す。


「うわぁぁ!」


先程まで戦士の声だったはずのヴァイドの声は悲鳴に変わり、サラにはそれが子供が泣いた時にする癇癪に似たもののように聞こえた。

そのまま黙りながら静かに迫ってくるサラを認識できずにヴァイドは暴れている。


ヴァイドの精神は恐怖に支配され逃げ出そうとする。


あ、


集中したサラの前では逃げようと僅かに硬直した足の動きも見逃されずヴァイドの関節を壊す。


スッ


っと音を立てることなく何もできずに倒れるヴァイドの首へ手を触れさせる。


「まだ…続けますか?」


震えた声で、


「お、俺の…負けだ」


これで勝敗は決した。

視界は冷たくなりながら戻っていき、瞳には後悔の色を映す。

そして、サラは視線を上げることなく静かに戻っていく。

観客から刺さる視線から逃げようと早足になりながら。


控え室で試合を見ていたレイ達は、


「あれが?…サラ?」


レイの困惑の声に対して ゼクスは動揺を隠しながら、


「音声まではよく聞こえないけど結構印象変わるね。でもこの勝ち方は誰が見ても危うい感じがするね。下手に痛めつけなくても倒せそうな感じだったし。先生とか許すのかな?」


ゼクスの言葉に冷静さを取り戻しレイは画面へ向き直る。

刹那動きが止まる。


「観客席の人達、反応が全然ない…」


「あれ?本当だ」


見ていなかった。なんてことはないよな。いや、俺が戦っている時も歓声は起こらなかった。多分ただの観客ではないんだろうな。


レイ達が試合の様子を見る中会場には二つの黒い服装男とゴスロリの服を着た少女の二人組が試合を見ていた。


「複雑な魔法を使っている訳じゃないが子供とは思えない程合理的に戦うなあの娘。戦ってみたいものだ」


男の言葉には耳を貸さず少女はヴァイドを見つめている。


「ねぇ、見てみてあの子まだ怖がった顔のまんま!こんなににいい顔を暇つぶし中に見れるなんて!すごいすごい!もっと近くで見たいなぁ」


少女は飛び跳ねながら興奮して見入っている。


「準備は進んでいる。シェリー、お前も参加するか?」


考えるまもなく少し大袈裟に首を振りながら話す。


「それはお断りかな」


「私がしたいことはここ以外でもできるしね!」


ウインクをしながらポーズをとる。


「じゃあさっさとバレる前に帰ろっか」


誰にも気づかれることなく二人の人影は景色に溶け込んでいった。


「ちょっと待った!やっぱ私勝った方の子にも挨拶してくる!」


「捕まったら自分でなんとかしろよ」


1人残った少女ははしゃぎながら闇へ溶け込む。


「どうしましょう〜…」


サラは戻りながら先の戦いを思い出していた。

苦しめるつもりなんて無かったのに戦いが目の前が真っ赤になったらもう行動は終わっていた。


…嘘です。私はあの人の安全を確認した瞬間、死なない相手なら大丈夫と思ってしまいました。

あんなに怖がらせてしまうなんて…。

やっぱり私は、変われない。

さっきの戦いが、相手の恐怖に歪んだ顔が脳内で再生される。


嫌だ。また、あの時みたいに失敗しちゃう。


「ねぇあなた!さっきの戦い楽しかった!」


何もない空間に、気づいたら少女が立っていた。


「だ、誰ですかぁ?」


その瞬間少女はムスッとしたように頬を膨らませ可愛く起こる。


「私はさっきの戦いが面白かったか聞いてるの!答えてよ〜」


さっきの戦いが楽しかったか?あれ見て聞いてくるなんて何を考えているのでしょう?


「はぁ、さっきの試合でしたか?」


「そう、さっきの試合。相手の顔を見て何を思ったの?気持ちいい?楽しい?やってやったって気持ちもあるのかな?それとも、相手を屈服させて愉悦に浸ってた?」


今まで見たこともないようなドス黒い瞳を笑顔で向けている。


気持ち悪いですぅ。こんな、人…初めて見ました。


吸い込まれるような瞳に見つめられる。


これ以上、この人に見られたくない!


鋭利な土の塊を前へ出してサラは懇願するように涙を浮かべ話す。


「すみませぇん。お願いです。離れてくださぁい!」


少女は少し驚いた顔をした後、優しい笑顔を作りゆっくりと歩いてサラへ近づいていく。


「驚かせてごめんなさい。私、シェリーっていうの」


土の塊の前へ来ても歩みを止めず、むしろ自分から刺さりにいきながら少女は続ける。


「どうしても気になっちゃったのもう帰るわね」


無邪気な笑顔で歩いてくる。



その様子にサラは恐怖で顔をしかめ後ずさる。


「少しいい顔になったね」


首筋に汗をしたらせ固まったサラの顔を見ながら、

そう言い残し少女は虚空に消えていった。

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