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認識の差

「それではレイさん。ザインさん試合を始めてください」


実況の言葉により再び試合が始まる。

ザインは確か水系だ。それはともかく今の俺の状態の方が問題だ。さっきのグレンとの試合でできた傷は治すことなく連戦をしている状況。喉も少しだが焼けている。あまり走りたくはないな。


「来ないならこっちから行くよ」


ザインが地を蹴り出しこちらへ向かってくる。能力はまだ発動しない。


何がくるか分からない。ならまずは——

「六花」

冷気と共に薄い六角形の結晶のような氷が空中に生成される。

防御で相手の魔法を見るか。


だんだんと距離は狭まり緊張が走る。未だザインは能力を使用せずこちらへスピードを上げて詰めてくる。


まだか?早く…早く見せろ。

魔力も残り少ない。こいつに勝つには長期戦に持っていかれてはいけない。すぐに相手の魔法を見て対処しなければならない。


早く能力を見せろ。何度も頭を駆け巡るその思考は繰り返されるほど体感時間を狂わせていく。


もう2歩ほどで触れる。その瞬間にザインの手から勢いよく薄い水の刃が回転するように現れた。

その水を発射するでもなくザインは手にまとわせて攻撃を始める。

攻撃を六花で防ぐ。するとガリガリと音が聞こえ中心に亀裂が入る。


まずい。

距離を取ろうとした瞬間水の刃を防いでいた六花が砕け俺の頬を掠める。

痛い。別に相手を舐めていたつもりはないが勝負を急ぐことに気を取られすぎていたな。

息を吐き再び気を引き締める。

まずこいつに確実に勝つことを考えろ。さっき六花は何秒で壊された?焦っていたから正確な時間は分からない。だが、2〜3秒と仮定して動くか。後六花を壊した後に一瞬動きが止まっていた。反動か何かだろう。


レイが思考を巡らせている、その一方で——

ザインもまた、冷静にレイを観察していた。


六花って言ったっけ?あの氷の盾。壊すには4秒かかったな。相手は消耗してそうにも見えるけど基本受け身な戦闘スタイルみたいだしな。魔力がなさそうで意外とあったりしそうだな。もしくはこっちの手札をできるだけ仲間に見せようとしているのか。

まぁこっちはグレンが負けてて戦える人が少ないわけだし。確実にここでレイ君は落とさないといけない。できれば二人目も倒すか削るところまでは持っていかないといけないかな。

長期戦は後のことを考えて避けるべき。けれどあの六花は1枚で舞っているわけではなくさっき壊したのも含め6枚で舞っている。


ふと相手を見ると壊したはずの氷の盾が再びゆっくりと生成されている。


壊しても5〜6秒で修復できるのか。それなら全て壊してから直接攻撃の手段は消えるな。なら隙を作って当てるしか無い。

直ぐに近づいて——


レイもどう戦うか決める。


六花で耐えるのは今の魔力の残量じゃほぼ無理。時間が稼げても攻撃に転じることは不可能だ。それなら六花はもう治さない。最低限防いで確実に距離を詰めて——


一撃で決める。


レイとザインはお互い理由は違えど戦法は似た形へ落ち着く。お互いの考えが重なったことにより二人ともゆっくりと歩いて近づいていく。距離が近づく程相手の動きに過敏に反応し空気が張り詰める。二人とも相手のカウンターを警戒してか、

お互いギリギリまで射程に入っても、どちらも手を出さない。

魔法ではなく、手が届くかどうかの距離まで詰めていく。

静かだった観客席はさらに静かに感じ。火傷などで暑く感じていたレイの肌は驚くほど冷えているようにも見える。


時が満ちる。二人は合わせるでもなくお互いが動くべきだと判断した瞬間に動き出す。しかし初動のタイミングは重なり六花と水の刃が音を立ててぶつかる。

2秒3秒と数えレイは六花を壊されたと思い退かし、自分の攻撃を当てる為に動き出す。

しかし、六花は壊れることなく退かした瞬間に止まると見越していた。

ザインの攻撃は前に出したレイの腕を縦に裂きそのまま腹部を切りつけた。まさに勝負はこの認識の差によって決まった。


「連戦でよく頑張ったと思うよ」


ザインは勝負が終わったと判断して攻撃の手を止める。


「なぁ…この試合の勝負はどこで確定すると思う?」


その瞬間に氷の塊がザインの背中から腹部へ貫通させるように生成される。


「な!?」


驚き倒した筈のレイをザインは再び見つめる。


「さっきのグレンは俺が攻撃した少し後にリストバンドが反応…した。それで…リストバンドの反応が見られて始めて実況が勝敗を確定させたんだ」


掠れた声でレイは続けようとしたがお互いにリストバンドが反応し保健室へと運ばれる。

怪我は消えている。ザインは隣のベッドに横たわっていたがレイと同様に気がついている。


「まぁあそこでお前が攻撃をやめずに確実に殺し切っていれば時間がかかることなくリストバンドはが作動しただろうがな」


まさに認識の差で勝敗は決まったわけだ。


俺たちは体調が問題ないことを検査してもらい控え室へ戻ることが許される。

すでにサラの戦いは始まっているようで ゼクスは少し顔をしかめながら画面を見つめている。


「サラの様子はどうだ?」


ゼクスは俺に気づいていなかったからか少し肩を振るわせてからこちらを向く。


「正直難しそうだね。ヴァイドは電気系の魔法使いだからね」


そう。本当は俺がヴァイドを倒すのが1番いい展開だった。近距離で体術がメインのサラや電気を防ぎづらい水属性のゼクスは相性が悪い。


「読みが外れたからな。サラは流石に負けるか?」


「…少し違うかな。不利なことには変わりないけどいつもの雰囲気とは何か違うというか」


言葉を濁し、話声が小さくなっていく。

どういうことだ?

俺も画面へ視線を向ける。ヴァイドは電気を手に大きくまとわせてサラへ迫っている。あれではサラの得意な受け流しなどは使えないだろうな。


サラは地面から遮蔽を作りながら下がる。しかしそれを相手が待つわけもなくずっと受け身な状況だ。だが、負けそうにも見えない…気がする。いや、ゼクスの言う通り少し様子がいつもと違う?

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