適性
「今日ついに、俺の適性が分かる」
この世界には魔法と、六つの適性が存在する。炎、水、電気、土、風、氷。
すべての人間は五歳になると、その適性を調べることができる。
「私たちの家系はみんな炎の適性を持っているから、レイの適性も炎だといいな!」
父はそう言って、俺以上に楽しみにしている様子だった。
特定の施設に行かなければならない、ということはない。市販の水晶に手を触れ、現れた色で適性が分かる。
炎なら赤色だ。
適性に当たり外れがあるかどうかは、将来何を目指すかによる。
どの適性も大きく劣っているわけではない。
ただ、うちの家系で考えるなら――
炎の適性が一番、好ましい。
兄と母も集まり、俺を含めた四人全員が揃ったところで、
俺は水晶の前に立った。
「じゃあ、触ります」
ゆっくりと手を伸ばし、水晶に触れる。
一瞬、肌寒い感覚が全身を走った。
次の瞬間、水晶が――
淡い水色に変化した。
「水色、つまり氷系か」
父親が少し驚いていたのをよそに兄は意外と冷静に観察している。
誰一人として残念な様子は見せず話しかけてくれる。母は、
「いいじゃない氷も立派な適性よ。なんかこの家でレアって感じもするし」
父も最初に驚いていたとは思えないほど冷静になっていて、
「レイも魔法を早く使いたいだろ? 教えられることは教えるから、なんでも聞いてくれよ」
そう言ってくれた。
俺自身、期待を裏切ってしまったという思いと、
自分の適性への小さな落胆はあった。
それでも――
こうして受け入れてもらえたことで、
少し前向きになれた気がした。
「じゃあ、明日から魔法を教えてほしいです」
こうして次の日から、父や兄に魔法を教えてもらうことになったのだが――
今、俺が受けているのは、
まったく魔法の練習とは思えない座学だった。
父はどちらかというと大雑把で、
正直、脳筋寄りのイメージを持っていた。
(……まさか、ここから始まるとは)
期待していた光景とは違い、
じわじわと睡魔が襲ってくる。
まぶたを閉じかけたその時、
父がゆっくり近づいてきて、低い声で言った。
「魔法をうまく使うためにはな、まず“ルール”を知っておかないといけない。だから最後まで聞こう」
確かに、教えてほしいと頼んだのは俺だ。
どうせなら、上手く使えるようになりたい。
そう思い直し、俺は姿勢を正した。
それを確認した父は、再び話し始める。
「この世界には魔法が存在する。
そして人には適性があり、
基本的に自分の適性以外の魔法は使えない」
「お前の場合は氷の適性だ。つまり、氷の魔法しか使えない」
「例外として複数の適性を持つ者もいるが……今は関係ない。先に進むぞ」
見た目からは想像できないほど、
父の説明はかなりわかりやすいものだった。
(……なんか、いつもよりもしっかりして見えるな)
「次は魔法のルールについてだ」
「魔法っていうのはな、基本的に足し算と引き算の繰り返しでできている」
「たとえば有名な《ファイアボール》。あれは自分に引火しない安全性、連射できる回数、射程距離――そういう“足し算”をしている」
「その代わり、“威力”を引いている」
「つまり――威力を下げる代わりに、扱いやすさを手に入れているわけだ」
「なるほど?」
完全に理解したとまではいうつもりはないがなんとなくはわかる。
そこまで長引かせずに父の授業は終わる。
「明日もやるぞ!」
と最後に楽しそうに言っていた。
そのまま夕飯を食べて自身のベットに横たわる。するとゆっくりと母が入ってきて聞いてくる。
「お父さんの魔法の授業楽しかった?」
「うん」
なぜか少し心配そうにしながら聞いてきた。
まぁあの父ばかり見ていたら心配になるよな。
「じゃあレイは将来魔法を使って何になりたい?」
少し安心したようで嬉しそうに将来について聞いてくる。
「俺はこの国に5人しかいない最上位魔導士になってみたい」
特級魔導士とはこの国に現在5人しかいない最強と呼ばれた魔法使いの総称である。
「レイならきっとなれるよ。応援してる」
一瞬複雑そうな顔をしたように見えたが気のせいだろうか?
次の日も、その次の日も父には魔法について教えてもらい、誕生日には氷系の魔法について書かれている本をたくさん買ってもらった。
こうして俺は魔法を調べ家族に教えてもらって15歳になった。
俺は氷系の魔法の基礎を完全に覚えてもうすっかり一人前だと思っていた。
そして明日からは国で15歳になると通うことを義務付けられている“王立魔導学園“に通うことになる。




