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♢49♢ 魔王ハルデス

「ハルデスだと……?」


 その黒い魔犬の言葉に、大広間に居た全員が、それぞれの色のまなこを見開いて、魔犬ガングルーを見つめる。



 ハルデスはグググ……と邪悪に笑いながら自分の前方、赤い絨毯の上に立つヘルデスにチャッ……と歩み寄り、十七年前のその日の出来事を、語り始めた。





 ♢♢♢


 「十七年前。そこにいる魔女バラが、六歳のおまえの目の前で私を封じた時。

あの時おまえを庇って封じられたのは私ではない。おまえの分身、魔犬のガングルーだ」



 「なに……!?」


 黒い犬の姿をしたハルデスの言葉に、漆黒のマントを脱ぎ棄てたヘルデスが、金の瞳を見開いて、己に隷属しているはずの魔犬を見つめる。




 「どういうこと……?」


 バラに抱きついていたララも母から体を離し、十五年の時をともに過ごし、そしてザリアの森の小屋で自分を殺そうとしたその黒い犬を見る。





 「ククククク……」

 大広間に立つそれぞれの驚きの表情に、満足そうに笑う魔犬の姿のハルデスは、黒く濡れた鼻をぬちゃり、と舐めて続ける。





 「私はおよそ二十年前、いにしえの技の眠る古代都市ダークマターで、己の身体と相手の身体を入れ替える古代魔法を身につけた」


 大広間に立つセスナ、ララ、クラウズ、バラ、ゾーラ、そしてヘルデスの六人全員が、魔犬の姿の前魔王の言葉を、固唾を呑んで聞いている。




 「古代都市の民は初代魔王ザギウスを護るため、いにしえの揺りかごと呼ばれる暗黒の棺を、この大陸の三つの場所に分散させた」



 前魔王ハルデスは続ける。




 「古代都市ダークマターの棺にはザギウスの魂が、西の森の棺にはザギウスの肉体が、そしてエルフの森の棺にはザギウスの武器、魔剣ドラゴニアークが封じられていた」



 黒い魔犬は語りながら前足の先をぬちゃりと舐め、邪悪な金の瞳で、誰も知らぬその真実を語っていく。




 「魔女バラに肉体を封じられた私は、しかしその刹那、魔犬ガングルーの肉体と入れ替わって、バラの封印術から逃れた。そして魔犬ガングルーとして、バラから奪った娘を、西の森で魔女として育てた。そしてその娘……ララに封印を解かせる前に、今も棺に眠るザギウスの肉体に乗り移るため、よく西の森のその棺を訪れていた」

 そして、だが、とつけ加える。


 「犬の姿となった私に、ザギウスの肉体に乗り移ることはできなかった。そして私はダークマターの民をそそのかしてエルフの森を襲わせ、魔剣ドラゴニアークを持ち出させた。だが古代都市の民は、魔剣を街のどこかに隠し、私を襲ってきた」


 

 フハハハ、と、魔犬が高らかな声で邪悪に笑う。




 「だから私は古代都市ダークマターを、一夜にして滅ぼしてやったのだ。私がザギウスの力を利用しようとしていることに、奴らは気づいたのだろう。……クハハハハハ」




 大広間には静寂が流れ、前魔王の邪悪な笑い声だけが響いている。





 「おまえたち、なかなか素敵なボタンをつけているではないか」


 魔犬が金の瞳を見開いて立つゾーラとヘルデスに、グググ……と唸る。




 「そうだ。その青い金ボタンも、この私が、力のある魔族だけに与えたものだ。その心と体を支配するために、な」




 「!!」


 ゾーラとヘルデスは驚いて、自分たちの灰色の魔族服に輝く、金の装飾の施された、青い炎の刻印があるボタンを見下ろす。






 広間の中央、直線状に敷かれた赤い絨毯の上に、旅の仲間であるセスナとララとクラウズ、そしてバラ、魔族のゾーラとヘルデスが、真実を明らかにした目の前の魔犬を見つめている。






 「さて。私の話はこれくらいでいいだろう」

 ハルデスはその大きな黒い尾をゆったりと左右に振り、赤い絨毯の上に立つ六人と対峙する。



 

 「……セルム。おまえには失望したぞ」


 グググ、と呻く魔犬の言葉に、ゾーラと同じ、灰色の魔族服で立つヘルデスがピクリと身じろぐ。





 「――時は満ちた。今こそ魔女ララに、私にかけられた封印を解かせ、そしてお前たち東の剣士と西の魔女を――」

 

 黒い魔犬の体に、ヲオォォ……と、強力な魔力が青い光を帯びながら溢れ出す。



 

 「――まとめて始末してやろう」

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