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♢47♢ 集結

 駆け寄ったクラウズは再び「バラ!!」と叫んで、座り込む友の肩を両手で支える。


 バラは「クラウズ……!!」と小さくその名を呼び、「クロスは、クロスは死んでしまったの」と、十五年ぶりに見たその赤髪の剣士の顔に、涙を浮かべて伝える。



 「すまん。もっと早くに、この城を訪れているべきだった」

 クラウズは悔しそうに頷き、「よくぞ、生きていてくれた」と、目尻にこみ上げるものを抑えて、傷だらけの大きな手をまわし、バラの頭を優しく抱く。


 「クラウズ……!!」

 抱かれたバラも友の広い背中に手をまわし、「バラ。本当に、すまなかった」というクラウズの言葉に、バラはふるふると顔を振って目を閉じる。



 かたく抱き合って再会の涙を抑える二人の背後で、紅い瞳を見開いたララが、おそるおそる、焼けてしまった小屋の中の肖像画で見た女性と同じ顔のバラに歩み寄る。



 「おか……さ……」


 その声にハッとして顔を上げたバラは、声にならない悲鳴を上げる。



 「――ララ……!!」



 ララはそっと立ち上がるクラウズを通り越して座り込んだバラに近づき、「おか……さ……」と、再び声にならない声で、十五年の成長したその姿を、母の前に現した。



 「――おかあさん!!」


 ララが駆け出し、座り込んでいたバラも立ち上がる。




 「ララ!!」


 バラの胸に突進して顔を埋めるララの頭を、バラが抱え込むようにしてきつく抱きしめる。




 「おかあさん……!! 私……、西の森に、攫われていた……の」


 胸の中で泣きじゃくるララの頭に顔を埋め、バラも涙を流して「ごめんね、ごめんねララ」と、ララの背中を撫でさする。



 立ち尽くすセスナを振り返ったクラウズは、抱き合う母子からそっと距離を取り、ゾーラ越しの魔王ヘルデスに向き直る。





 「……」

 

 


 大広間に、母子の嗚咽する声だけが響いている。


 


 クラウズはパキ、と軽く首を回すと、傷だらけの両手を、腰の短剣ではなく、胸の前で組んでそれを静かに鳴らしながら、ゾーラとヘルデスに近づいていく。



 「よう、魔王ヘルデス。お前にゃ言いたいことが山ほどあるんだが。さて、どうすっかねえ」



 肩で息をするゾーラはクラウズに向き直ると後退して、ヘルデスの玉座に近づいてその後ろに控える。




 「……伝説の短剣遣い、クラウズか」



 ヘルデスは仁王立ちのまま、顔を振って目にかかる青髪を振り払い、骨を鳴らして近づいてくるクラウズに正面から向かい合う。




 クラウズは立ち尽くすセスナと抱き合うララとバラ、そしてヘルデスの背後に控えたゾーラの視線を受けながら、褐色の瞳に怒りの焔を灯して、若い魔王の金の瞳を見つめる。




 「魔王だかなんだか知らねえが。子どもを攫ったり、女性を閉じ込めたり。やることがスマートじゃねえんだよ。同じ男の風上にも置けねえ」



 「バカか貴様は。その魔王である私が、目的のために手段を選ぶ理由などないだろう」


 

 ヘルデスが吐き捨てると、クラウズは「ふざけやがって。だから俺は魔族ってやつが嫌いなんだよ」と、ずんずんと歩いていき、ヘルデスの眼前に立つ。




 「!!」


 そしてヘルデスの灰色の魔族服の胸ぐらを掴むと、その白い頬に、握りしめた傷だらけの拳を見舞った。




 ――ガッ。



 殴られたヘルデスはザッ、と、硬い靴先を鳴らして踏みとどまり、「プッ」と鮮血を吐き捨てる。




 「……」



 

 ヘルデスは手の甲で口元を拭うと、「フッ」と、赤い口の端を上げて笑った。

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