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♢40♢ 新たな仲間(1)

 セスナ旅立ちから七日目の、早朝。


 砂の王国サンドウィッチのレタス城。

 そのゲストルームのベッドで目覚めた黒髪の少女ララは、いつも通りねぼすけな金髪の少年、セスナの肩を揺すって起こしながら、声をかける。

 「セスナ。今日はリヴァイアサン女王に、セスナの溶けてしまった大剣のことを相談しに行きましょう」



 先日のこと。

 中ボス、サラマンダーとの戦いにより、いつもセスナが背中に背負っている大剣士クロスの剣先が、溶けてそのまま固まってしまったのだ。


 寝ぼけながら身支度をする東の剣士セスナを急き立て、西の魔女ララは、セスナが幾何学模様の壁紙に立てかけておいた大剣士クロスの大剣を手にして、それをセスナに持っていく。



 「この剣、こんなに重かったのね」

 感心したようなララからその大剣を手渡され、セスナは「ううん」とまだ夢見心地で返事をしてそれを受け取る。


 そしていつもの出で立ち、上下揃いの青いシャツとズボンに、白銀のプラチナメイル、そして青いマントを纏ったセスナと、黒いローブに身を包み、前髪のサイドにピンクの音符のピンを挿したララは、その美しい宮殿の長い廊下を進む。


そしてリヴァイアサン女王と謁見するため、幾何学模様の壁紙の廊下を何度か曲がり、昨日も二人が訪れた「砂丘の間」へと向かった。



 

 ♢♢♢


 午前十時。

 

 再び砂丘の間を訪れたセスナとララは、ほどなくしてリヴァイアサン女王がその超絶な美貌で現れるのを待ち、やがてそこに姿を現した女王に、揃って頭を下げて切り出した。



 「実は、ぼくの扱う大剣の剣先が、サラマンダーとの戦闘中に受けたダメージによって溶けてしまいまして……」


 全長の十分の一ほどがドロリと溶けたまま固まってしまった剣先を指し示しながら、クロスの大剣を抱えたセスナが、リヴァイアサンに事の経緯を説明する。


 リヴァイアサンはその素晴らしく大きな瞳を見開いて「うむ」とセスナの話を聞き、「なるほど。事情は把握した」と、何度か頷いてセスナを見やる。



 「この城の工房に、鍛冶屋のピスタチオという男がおる。その者に依頼すれば、おそらく、その溶けてしまった剣先もなんとかなるかもしれぬ」

 リヴァイアサンはふわりと、その美しい亜麻色の長い髪を手で払って言う。


 セスナとララは女王から鍛冶屋ピスタチオの工房の場所を聞き、セスナは鞘に収まらないその大剣を再び胸に抱え、案内された通りに、その工房へと向かった。




 ♢♢♢


 ――カーン。カーン。



 幾何学模様の壁の廊下を何度も曲がり、やがて辿り着いたその工房では。

 鍛冶屋のピスタチオが、額に汗をして、金属の板の上に並べた古い武器を鍛え直しているところだった。



 大剣を抱えたセスナとララは仕事中のピスタチオに近づき、「お仕事中すみません」と、セスナが前に出て声を張る。



 「んん?」


 声をかけられて振り向いたその男は、白髪交じりの五十代くらい、頑強そうな体格で、茶色の作業着の袖を肩のところまで捲りあげて、発達した上腕二頭筋を振り上げて応じる。



 「リヴァイアサン女王から、あなたのことを伺ってきました。ぼくの壊れたこの大剣を、直してもらえませんか?」

 セスナが単刀直入にもち掛け、ピスタチオが「どれ」と言ってセスナが抱えているクロスの大剣を覗き込む。


 

 「こりゃ、この国の近くの砂漠の、サラマンダーの炎にやられたな? こいつを直すとなると……ううん。少なくとも二か月はかかる」


 溶けて固まった剣先を指先でチョチョッとつつき、ピスタチオが修理にかかるであろう時間をざっと見積もる。


 

 「二か月……」


 セスナとララは顔を見合わせ、そしてララが小さく頷く。セスナも抱いていた大剣を「時間がかかっても構いません。どうぞ、よろしくお願いします」と言って、額の汗を手の甲で拭うピスタチオに差し出した。




 ♢♢♢


 砂丘の間に引き返したセスナとララは、ピスタチオとのやり取りをリヴァイアサン女王に説明する。


 そして女王から「では二か月の間、我がレタス城でのんびりと過ごされるがよい」との言葉を頂戴し、セスナとララは昼食をとるため、食堂へと回れ右をする。

 するとリヴァイアサン女王は「そうじゃ、今日は私の旧知の友が、この城を訪れる日であった」と、素晴らしく大きな眼をパチパチさせて言い、「では失礼する」と、その場を後にした。




 ♢♢♢


 セスナ旅立ちから七日目の、午前十一時半。


 

 レタス城での二か月間の滞在を許されたセスナとララは、昨日と同じ、休日のショッピングモールのフードコートと化している食堂の無料サービスの恩恵にあずかろうと、カウンターの横に設置された籠の中に散らばる、数字の描かれた紙切れを適当に手に取る。


 「1」の数字の紙を手にしたセスナと「4」の数字の紙を手にしたララはカウンターの行列に並び、セスナは「ピラフ定食」、ララは「煮込み定食」を受け取り、大混雑の食堂の中の空いている席を探した。



 「セスナ! こっち!」


 目ざとく空席を見つけたララが小走りでその四人掛けのテーブルに駆け寄り、煮込み定食を乗せた銀のプレートを置いて席を取る。


 やがてララに追いついたセスナも自らのピラフ定食が乗ったプレートを置いて席につき、二人は「やれやれ」といった感じで、「きゃあー」という子ども達の叫び声が響く喧騒の中、「いただきまあす」と手を合わせて食事を始める。



 そして会話もそっちのけでセスナとララがそれぞれの定食を頬張っていた、その時だった。




 「ここ、空いてるか?」



 艶のある中年男の声が、黙々と定食を平らげているセスナとララの頭上から降ってきた。



 その男は二人の返事を待たずに、四人掛けのうちの空いている席の椅子を引き、セスナの隣にドサリと腰を下ろす。



 「あっ」


 その横顔を隣の席から見上げたセスナと、正面の席から見上げたララは同時に、見事なハーモニーを奏でるようにして、揃って声を上げた。

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