♢35♢ カラオケバトル(2)
――ザワザワ。
「どうする? セスナ」
ざわめく参加者の中、セスナとララがとまどいながら顔を見合わせる。
「はい、歌います」
すると先ほどルークと呼ばれた老父とは違う老父が手を上げ、ステージに上がる。
――チャラリ~♪
曲が流れ始め、ハンセム王からマイクを受け取った老父はそれを握り、参加者を見回して口を開いた。
「エデン発の夜行列車降りた時からぁ~」
老父はこぶしを使って見事に歌い上げる。
――83.441点!!
精密EIカラオケが、EI感性と呼ばれるシステムをもとに、老父の歌声を点数で叩き出す。
――ワアァ……。
参加者からまばらな拍手が起こり、老父は照れながらステージを降りた。
「ほかに挑戦したい方、どうゾ!」
「はい」
次の老父が手を上げ、ステージに上がる。
「恋する フォーチュンドーナツ」
若者向けのポップスを、見事なリズム感で歌い上げる。
――89.673点!!
――ワアァ……。
「残~忍~な 天使のベーゼ」
――90.001点!!
「るっせぇ るっせぇ るっせぇわ」
――76.882点!!
その後も演歌、アニソン、ホカロ(崩壊ロイド)ジャンルなどの様々な選曲を、精密EIカラオケマシンは採点していく。
「ぼくも、歌ってみようかなあ」
セスナが呟き、ララが「えっ」と驚いて少し後ろに身体を引く。
――ワアァ……。
パチパチというまばらな拍手の中、セスナは「よっと」と言って、身軽にステージに上がる。
そしてマイクを握り、大きく息を吸って歌い出した。
「いいですネ。エネルギッシュで、フレッシュさもありまス」
セスナの歌を聴きながら頷くハンセム王が、その歌声に合わせて体を揺らす。
――88.119点!!
――パチパチパチ……。
歌い終えたセスナは「えへへ」と頭を掻きながらララの隣に腰を下ろす。
「ララも歌ってきたら?」
セスナの提案に、ララは少し考えてから「やってみるわ」と言って、緊張した面持ちで立ち上がった。
――ワアァ……。
少女のララがステージに上がると、参加者も一気に沸き立つ。
ララはドキドキする胸を抑えながら、マイクを手にしてすう、と息を吸った。
――……!!
――ザワッ……!!
ララの歌声が響き、ざわめいた参加者も一斉に静まり返る。
「これハ……!!」
ハンセム王は両の掌を握って衝撃を受けたように棒立ちになり、ララの歌声を聴いている。
――98、999点!!
精密EIカラオケシステムが採点する。
――ワアァ……!!
その日の最高得点を打ち出し、盛大な拍手の中、ララは頬を染めてステージから降りた。
♢♢♢
「おめでとうございまス。賞品の百万ピニアです」
ハンセム王が微笑みながら、優勝したララにピニア金貨の入った布袋を差し出す。
ララは「ありがとうございます」と言ってそれを受け取るが、「光栄ですが私たちには勇者手形があるので、そのお金はこの街の活性化に役立ててください」と、事前にセスナと打ち合わせた通り、賞金を辞退した。
その夜。城内のゲストルームに通された二人は、ベッドの中でそれぞれ冷めやらぬ興奮を抱えながら、しかし瞬く間に眠りに落ちていった。




