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♢26♢ ぽっきり五百ピニア

 水の国アクア帝国で、聖女ルマリアの生誕祭に参加した、その翌朝。

 「どっちが遅くまで寝ていられるか、勝負しよう」と、およそ勇者の一向らしからぬ取り決めをしたセスナとララの二人は、ララは午前9時半を、セスナにいたっては、待ちくたびれたララがセスナの部屋のドアを叩いた午前11時、という起床時間を記録した。


 「おなかすいたね。なにを食べようか」

 「せっかくだから、街へ出てみない?」


 ララの提案にセスナも頷き、二人は宿屋でチェックアウトを済ませ、柔らかな日差しの降り注ぐ水上都市の大通りへと繰り出した。

 

 手漕ぎ船から様々な飲食店を眺めて選び、二人は「~ランチ限定! 新鮮ビュッフェ☆ ぽっきり五百ピニア~」と書かれたのぼりに目をとめた。


 「あそこにしようか」

 「ええ」

 意見の一致した二人はぐう、と鳴る腹を押さえて下船し、木造りの洒落たレストランへと足を運ぶ。



 ――ワイワイ。

 ――カチャカチャ。


 正午近くのレストランはすでに客で一杯で、セスナとララは席に通されるとさっそく、様々な料理の並ぶテーブルから、それぞれ好みの品を選んで皿に盛った。


 ララは平皿に、サラダ、肉と魚料理、パスタ、果物などを盛り、席に戻った。


 セスナはすでに席についていて、平皿にパスタのみを山盛りにしている。


 「セスナ、せっかくのビュッフェなのに、パスタばかりね」とララが言うと、セスナは「しまった。好物ばかり一度にたくさん取っちゃった。他の料理を食べられるかなあ」と、取り放題あるあるのエピソードに頭を掻く。


 その後ララは、食べてみて味が気に入った料理だけを二度ほど、平皿におかわりをして、ドリンクバーから二人分のジンジャーエールを持ってきた。

 セスナはやっと山盛りのパスタを平らげると、「見て! 焼きたてのオムレツだよ!」と興奮しながら、再び平皿にオムレツのみを山盛りにして戻ってきた。




 ♢♢♢


 「ふう~。もう、食べられないや」 

 「私も。とても美味しかったわ」

 「この国にいると、自分たちが一体なんのために旅をしているのか分からなくなるくらいだね」


 二人は満腹の腹をさすり、ドリンクバーから食後のコーヒーを持ってきて、皿が片づけられたテーブルの上にワールドマップを広げた。



 「この後の進路だけど……」

 セスナは老父が書いたマップ上の現在地である星印を指差し、それを斜め右上の星印に滑らせる。


 「ぼくたちの現在地はここ、大陸中央部やや北方のアクア帝国。ここから北北東に進んでこの音楽の国、ムジカ王国に入るか……」

 そう言うとセスナは再びアクア帝国の星印に指を戻し、それを斜め左上の星印に滑らせる。

 「ここから北北西に進み、砂の王国、サンドウィッチに入るか」

 「そうね……」


 ララもワールドマップを覗き込み、アクア帝国の東西を左右に挟むスペースの星印を指差す。

 「ここはなに?」


 「ああ、そこはエルフの森だよ。ザリアの森よりはずっと小さいけど、迷いの森とも呼ばれる、やっかいな森だ」

 「……」


 ララは少し考え、それから音楽の国ムジカを指差して「ここがいいわ」と言った。

 セスナが理由を尋ねると、ララは「楽しそうだから」、と明るい声で言って微笑み、湯気の立つブラックコーヒーを飲んだ。





 ♢♢♢


 「それじゃあ、行こうか」

 「ええ」


 レストランを出たセスナとララは手漕ぎ船を降りて、水夫に勇者手形を見せる。

 遠ざかっていく水夫の背中を見送り、二人は次の目的地、ムジカ王国の王都エデンを目指すことになった。


 「まずはアクア帝国の関所を抜けて、ムジカ王国の関所に向かおう。今は14時の少し前だから、日が暮れる前に、少し急いだ方がいいかもしれないね」

 



 セスナとララは再び、帝都を流れる清流に沿って歩き出す。



 ララは少し歩くと立ち止まり、振り返ってその美しい水の街を見つめる。


 先を歩いていたセスナが「おおい」とララを呼び、ララは小走りでセスナに追いつき、二人は歩き出した。

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