♢16♢ 旅の仲間(2)
「それできみは、これからどうするの? きみの家……焼けちゃったんだろう?」
プラチナメイルの上、勇者のマントを装備しながら、セスナが尋ねる。
ララはオアシスに置かれている聖典をめくる手を止め、しばらく考え込む。
「あなた、魔王城へ行くのよね? 魔王様についてなにか知っていることがあれば、教えてほしいの」
「え?」
「私……知りたいことがたくさんあるの。自分のこと、お父さんとお母さんのこと、ガングル……友達のこと、そして魔王様のこと」
ララはそれを読んではいないのだろう、聖典のページを右から左へ、パラパラとめくって紙の流れを見つめている。
セスナはマントを着用し、立てかけておいた大剣を背負う。
「ごめん。ぼくはほとんどなにも知らないんだ」
セスナの言葉に、ララはす、と顔を上げた。
「あなた、魔王様のことをなにも知らないくせに、倒しに行くっていうの?」
「えっ……」
セスナがララを振り返る。
「きみは、魔王の仲間なのかい?」
セスナの問いに、ララは寂しげに視線を落とす。
「わからない……私のほうこそ、なにも知らないの」
そしてごめんなさい、と、セスナに頭を下げた。
♢♢♢
「つまり、ぼくたちの状況を整理すると……」
マジックテントの中、セスナとララは椅子に腰かけて顔を突き合わせている。
「きみはあの小屋で、自分の生い立ちを知らないまま、魔女として育てられた。そしてきみと一緒に暮らしていた友達の魔犬に殺されそうになった。その魔犬は自分がきみのお父さんを殺したのだと言い、きみを魔王城へついてくるように誘った」
ララは頷く。
「ぼくは大陸の平和をおびやかす魔王を討つため、魔王城へ行く。きみとぼくは魔王についての情報がほとんどなく、大陸の他の国のことも知らない」
セスナは続ける。
「だからぼくは北へ向かいながら、色々な国に立ち寄り、情報収集をしようと思う。その魔犬がきみを魔王城へ連れて行くつもりだったのならば、きっとなにか目的があったはずだ」
ララは頷きながら考え込んでいるのか、瞬きを繰り返して聞いている。
「きみは……これからどうするかい?」
セスナの言葉に、ララは机に聖典を置いて立ち上がった。
「私は真実が知りたいの。あなたが魔王城へ行くなら、私も一緒に行くわ」
話はまとまった。
二人は見つめ合い、小さく頷いた。
♢♢♢
「ここから北東のアクア帝国は広大な宗教国みたい。なにか有益な情報が見つかるかもしれないね」
セスナは老父手書きのワールドマップを手にして、手櫛で髪を整えるララに言う。
セスナが寝坊したため、日はすでに高い。
森が再び夕闇に包まれる前に、ザリアの森とアクア帝国をつなぐ関所に行きたいところだ。
「さあ行きましょう、セスナ」
ララに名前を呼ばれ、セスナはうん、と強く答えた。




