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第七話 若き王(2)

 バタフライ王はひと通り話し終わると、「旅立ちといえば、これだろう」と、数人の配下に様々な「お宝」を用意させた。

 大広間の中央に出された白銀のテーブルの上には、剣や弓、こん棒や杖などの武器から、鎧や兜、盾にローブといった防具、そして種々多様のアイテム類が並べられた。

 「わあ……!」セスナは年頃の少年らしく、それらを見て目を輝かせる。

 「どれでも好きなものを持っていくといい。君の武器はクロスの大剣だから、他に防具とアイテムをいくつか選ぶといいだろう」

 「本当に、好きなものをいただけるんですか?」念を押すセスナに、王は優しく微笑んで頷く。

 そしてセスナは時間をかけて、以下のものを選んだ。


 ・プラチナメイル――白銀の鎧。非常に軽量だが物理攻撃への高い防御力を誇る。

 ・勇者のマント――大剣士クロスが愛用していたという、青いマント。 魔法攻撃への強い耐性を誇る。

 ・ホウションの瓶――傷を癒し、体力を回復するホウション薬の入った瓶。薬は錠剤になっているのでたくさん持ち歩くことができる。

 ・マジックテント――野宿の時に重宝するテント。材質は頑強だが畳めば畳むほど薄くなり、非常にコンパクトに持ち歩けるという特色を誇る。

 ・ミラクルカンパン――各種栄養素が強化された、非常食のパン。小さく焼き固めてあり、非常でない時に食べてもおいしいという特色を誇る。

 

 セスナのセレクトになぜか王まで嬉しそうに、その場でワイワイと試着式が始まった。

 「似合うよ、少年。まるで往時のクロスを髣髴とさせる」

 プラチナメイルの上に青いマントを羽織ったセスナに、王は目尻にこみ上げるものを抑えてパチパチと手を叩いた。

 「商人のザッパも、旅に必要な防具や道具類を手配してくれると言っていましたが」

 頬を淡く染めたセスナが勇者の出で立ちでそう伝えると、王は頷いた。

 「旅が長引いた場合、アイテム類が不足することもあるだろう。そんな時は大陸各地の「オアシス」と呼ばれる休息所に立ち寄ると言い。私とザッパで定期的に、オアシスに道具類の補填を行っておこう。手紙なんかもそこから出すといい」

 「ありがとうございます」至れり尽くせりの勇者特典にセスナが頭を下げると、若き王は続けた。

 「長い間、魔王が野放し状態で、この国の王としては申し訳ないと思っている。だが大陸最強を誇るこの国の騎士団でも歯が立たない相手だったのだ、魔王ヘルデスは」

 王は眉尻を下げ、自嘲気味に笑った。

 「私にもっと、武力と勇気があったなら。私はこうして椅子に座り、配下に指示を下すことしかできない。だが、約束しよう。私もこの椅子の上で、君と共に戦うことを」

 若き王は握手を求めてセスナに手を伸ばし、付け加えた。

 「私を、仲間と、そう呼んでくれるかい」

 「王様……!」

 セスナは恐れ入り、膝をついて首を垂れる。すると王が再び手を叩いた。

 「その角度だ! あ、もう少し頭を下げて。そうそう、あ。動かないで」

 「え?」

 「君の後頭部、クロスにそっくりだな」

 --やっぱり変わった王様だ。セスナは小さく笑う。


 冬の近づいた昼下がり、マッシュルーム城に爽やかな風が吹く。

 頼もしくも風変わりな仲間を得て、セスナの旅は始まろうとしていた。

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