9話 失敗と成功?
リトルストーンゴーレムを手に入れた以来のスキル<合成>使用。MPが70になり、七回使用できるようになっている。ただそれでも無限に試せるわけではない。そのため二人は少し前回の合成からスキルの概要や傾向を掴もうと話し合っていた。
「前回はネルがくれたスライムの魔核と石でこのゴーレムができたんだよな」
――<リトルストーンゴーレム>――
小型のストーンゴーレム。
魔力を満タンまで補充することで動かすことができる。
知能はないため指示をした行動しかすることができない。
通常のストーンゴーレムよりパワーが弱く、体が脆い。
合成によりスライムの特性を一つ受け継いでいる。
魔力保持量:12/50
耐久値:78/100
特性:頑丈Ⅰ、弱者の証
スキル:ストーンバレット
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「そうだね。あと今気づいたけど、~の特性を受け継いでいるっていうのは魔核の影響なのかもしれないね」
「確かにな。特性ってなると頑丈Ⅰと弱者の証だけど――――」
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頑丈Ⅰ……耐久力が高い。特に物理攻撃に強い。
弱者の証……この特性を持つ個体は持たぬ個体より能力が低い。
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「へ?」
「はい!?」
「「ハズレ特性引き継いでる!!!!!!」」
スライムの魔核由来だと思われる弱者の証がデメリットしかない特性だった。そのことに驚いた二人は思わず叫んでしまう。
「ネル、俺の初合成って地味に失敗だったんじゃ――――」
「そうか――――い、いや、でも実際戦闘で役立ってくれたんだしセーフだよ! セーフ!!」
「確かに、そうか」
「そうそう! だから悲しまないで。それに今から新しく合成できるんだし!!」
二人は新事実が発覚して動揺したものの、すぐに本来の話に立ち返る。
「よし、とりあえず分かったのは魔核を使うと元の魔物の特性を引き継ぐかもってことくらいか」
「だね。何と何で何ができるとかはちょっとサンプルが少な過ぎて分からないや」
「じゃ、一旦試してみるか。素材はてきとーにっと」
サクは合成を発動する。
黒と白の渦が目の前に現れた。そこへアイテムボックスから無造作に取り出したスライムジェルとコケッコーの羽を放り込む。
「何がくるかな~何がくるかな~」
ノリノリなネルがその場で回転し始める。
ボフンッッッ!!!!!
「なんだ!?」
渦から爆発音のようなものが鳴る。
サクが二つの渦に近づこうとすると、どちらもすぐに消滅してしまった。
「き、きえた?」
「えっ、失敗ってことなのかな。というか、使ったアイテムは!?」
「なくなったっぽいな……」
まさかの失敗である。
一度目からリトルストーンゴーレムを合成できたため、まさか失敗が存在するとは二人とも思ってもいなかった。
「そ、そういえば合成の説明に失敗したら素材消滅って書いてあったかも……」
ネルは左頬をぴくぴくさせながら口を動かす。
「おー、確かに。こうなると何でもかんでも放り込むわけにもいかなくなってくるか?」
「流石にレアアイテムとか入れて消滅したら、私だったら耐えられないかも」
「俺もそれはショックだな。ただ、今持ってるアイテムは別にそうでもないだろうし、さっさと次行くかー!」
「えっ、もう!?」
気持ちを切り替えたサクがスキルを発動させる。
隣でネルが驚いているが、サクの方は落ち着いておりアイテムボックスから次なる素材を取り出していた。
「ゴーレムができたときは片方が魔核だった。だから今回もそうしてみるぞ!」
黒い渦へ一角兎の魔核が吸い込まれていく。
「で、こっちの渦には一角兎の角とマウントキャットの毛皮でどうだ! 全部獣っぽいし、相性良いだろ」
「ええ~、アイテム三つも使っちゃうの!?」
「だって合成の説明に二つ以上ってあっ――――」
先程のような失敗演出の様子はない。
――――ピロロンッ♪
「こ、この音は!?」
音を聞いた瞬間ネルが大声を上げる。
「き、きたあああああああああああああああああああああ」
二つが重なり合い消滅する。
そしてその場には額に角の生えた小型の緑猫?が残されていた。
「動物!? かわいすぎる……でも、出てくるのってアイテムだけじゃなかったの?」
サクもネルと同様の疑問を持ったため、目の前の存在の詳細を見ることにした。
――<ベビマイラ(兎猫)のぬいぐるみ>――
魔物の毛皮を使用したかわいいベビマイラのぬいぐるみ。
装飾品として装備可能。
装備している間、スキル:跳躍Ⅰとスキル:脱兎Ⅰが付与される。
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「ゴーレムじゃない、だと!?」
初合成で生まれたものがリトルストーンゴーレムだったため、サクは合成成功時に排出されるものは自身の戦闘に役立つアイテムになると思っていた。しかし、今回のものは自身が戦闘に参加しないサクへあまり恩恵がありそうにないアイテムだったため困惑したようである。
「サク君、私も見るね――――すご!!! 装備するとスキル二つも付与してくれるのこれ!? しかもかわいいし。ねぇ、サク君。私にこれ売ってくれない? 防具一式それなりのもの揃えられるくらいの金額がで買い取るから!!!」
「いいぞ! ついでにMP使い切ったら防具屋でも紹介してくれ」
「おっけい!!!」
残りMPは50。サクはあとどれだけのアイテムの合成に成功するのだろうか。
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