8話 運振り
「ゴーレムのおかげで今日は楽しかったな」
サクのレベリングが終了したため、二人は<ねるのおみせ>へと戻ってきていた。
本人は戦ってはいないものの満足したようで良い笑顔をしている。
「5レべまで上げたもんね~。ステ振りは運メインにしたんだよね?」
「おう! 毎回SP3のうち2は運に回したぞ」
最新のステータスをネルへと見せる。
――――――
サク
Lv.5
ジョブ:合成士
HP:140 MP:70
力:3
魔:3
技:19
耐:10
速:11
運:38
スキル:合成
<装備>
武器:装備不可
頭:―
体上:旅人の装い(上)
体下:旅人の装い(下)
靴:布の靴
装飾品1:―
装飾品2:―
装飾品3:―
――――――
「運がずば抜けてる。有言実行だね~」
「まぁな。あとネルがこのゲームの基礎を教えてくれたときに初期ステータスは10が平均だと思えって言ってたから耐もそこまでは上げといた」
「おっ~、頭パンクしそうになってたわりにはちゃんと覚えてたんだね」
「ちょっとバカにしてね?」
「してないしてない! どうしてそう思うかなぁ」
パチパチパチと大袈裟に拍手するネルと、それを少し怪訝な表情で見るサク。
「ならいいか!」
「そうそう、気にしない気にしない! あ、あとステータス見て思ったのは意外と技術も高くなってきてるね」
「別にポイントは振ってないけどな。レベルアップのとき勝手に上がる分とランダムで決まった初期値が高かったからだな」
「レベルアップ時の自動振り分け分が入るってことは<合成士>にとって技術も重要な可能性が高いね」
レベルアップ時に自動で上がるステータスはそのジョブについて非常に重要なものだとされている。騎士系統なら力や耐、技などに振り分けられるジョブが多い。また魔法使い系のジョブならば、MPが増えやすかったり魔が伸びやすくなっている。ネルのように非戦闘系だと技をメインにジョブごとに他も伸びるといった仕様だ。
そしてサクの<合成士>は技と運に一つずつポイントが入っている。つまりその二つの要素がこのジョブでいる上でポイントを振るべきところだと運営が設定しているということだ。
「えーと、これはどんな様子を示す能力なんだっけか?」
「そこは忘れちゃったんだ。技は文字通り、技術力やきようさを表すものだって言われてるよ。だから私みたいな職人系のジョブの人間にはかなり重要なものなんだ」
「なるほどな。ってことは俺の合成士も何かしら技術がいるってことか?」
「技の値が高いと生み出すアイテムのスペックが上がりやすいから、合成したものの品質に関わるのかな? いや、でもガチャっぽいスキルって考えると運がそっちに作用しそうな気もするし…………う~ん」
ネルの頭から湯気が出始める。
まるで初心者講座を受けていたときのサクのようだ。
「それを解明するためにももっと合成してみるか!」
「えっ、あっ、そうだね! 危ない危ない。分からな過ぎて、思考が完全にフリーズしちゃいそうだったよ」
「分かる。俺もそれよくあるから」
ネルに深く共感しつつ、サクはアイテムボックスを開く。
そこには今回のレベリングで手に入ったアイテムが羅列されていた。
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一角兎の短角 ×2
一角兎の魔核 ×1
コケッコーの卵 ×2
コケッコーの羽 ×3
コケッコーの魔核 ×1
スライムジェル ×5
スライムの魔核 ×3
マウントキャットの毛皮 ×1
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最も多く倒した魔物はやはり最弱のスライム。次にコケッコーという鶏のような外見の鳥だった。鶏との差として大きく発達した爪があるが、リトルストーンゴーレムには通用しなかった。またスライム討伐後にネルが標的としておすすめしていた一角兎とも遭遇し、しっかりと倒している。
マウントキャット以外の魔物からは魔核を手に入れているため、やはりサクは運が良いようである。そこにステータスの運がどう影響しているのかは未だ本人たちも特定できていないが。
「結構いっぱい集まったよね~。MP10で一回合成なら、七回挑戦できるね!」
「うお~、何ができるのか楽しみ過ぎんだろ! よっしゃ、最初は何から放りこもっかな~」
サクはワクワクしながらアイテムボックスとにらめっこするのだった。
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