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6話 レベルアップ

 サクたちは最初の町<ワンス>の北門から外へと出た。門からは真っ直ぐに道が伸びており、人の行き来が盛んなのかしっかりと舗装されている。道の脇には暖色系の花々が咲いており、非常に景観が良くなっている。


「なんか、あんまり戦うぞ! って場所じゃないな」

「こっちは穏やかな場所だからね~。南門の方はもっと大自然!って感じだけど、初心者が戦うには魔物が強いから」

「俺に合わせてくれたのか」

「サク君のゴーレムを試すためにきたんだから当然だよ」

「そっか。でも、ありがと。よーし、なら早速ゴーレム試してみるか!」


 サクはアイテムボックスからリトルストーンゴーレムを取り出す。

 1メートルほどの小型ゴーレムは主人からの命令を待っているのか、二つの淡い青の光を揺らしている。


「ゴーレム、いっちょ敵を蹴散らしてやれ!」


 リトルストーンゴーレムへサクが大きな声で命令する。


 ……。


 しかし、リトルストーンゴーレムは一切動き出す様子はない。


「あれ? どうしてだ?」

「サク君、まず魔物を見つけてからでしょ?」

「そんなのそこらへんにいる……いないな」

「探そっか」


 それから十分ほどが経過した。


「あ、いた! スライム!!」

「ナイス! どいつだ!?」


 ネルはスライムが潜んでいる場所を指す。

 サクがそちらへ視線をやるとひまわりに似た花の影で水色の球体がほよほよと動いていた。


「なんだ、このソーダ味のわらびもちみたいなやつ」

「スライムっていう魔物だよ。初心者が戦うのに丁度良い魔物だね」


 様々なファンタジー作品に出現して基本的に雑魚、たまに最強という極端な扱いをされる魔物スライム。<マジカルルカファンタジー>では最弱の方で有名である。

 攻略サイト等には力のステータスが5もあれば一撃で倒せると書かれている。キャラメイク時に初期ステータスを振る際は10を平均だと考えろと言われていることを鑑みるといかに弱い魔物なのかが分かるだろう。


「なら、早速倒すか! ゴーレム、今度こそ敵を攻撃だ。わらびもちソーダ味をぺちゃんこにしてやれ!!」


 ゴゴゴゴゴ。


 リトルストーンゴーレムは低音を響かせながら歩き出す。

 速さはあまりない。よーいドンで競えばネルはおろかサクにすら勝てないだろう。ただ、標的のスライムもまた遅い。リトルストーンゴーレムの存在に気づいて逃亡を計っているようだが、緊張感の一切ないぽよぽよジャンプでは距離はひらかない。

 数秒後にはリトルストーンゴーレムがスライムを射程範囲内に捉えた。そして石でできた拳を高く上げ、真っ直ぐに振り下ろした。


<レベルアップ! SPを3つ好きな能力に振り分けよう>


――――――

 サク

 Lv.2 

 ジョブ:合成士

 HP:110 MP:55

 力:3

 魔:3

 技:16

 耐:5

 速:10

 運:26

 スキル:合成

――――――


「おお!? レベルが上がったってよ!」

「ということはスライムは一撃で倒せたんだね。初レベルアップおめでとう!!!」

「ありがと! あ、あとなんかSPをどうのとか言われてるんだけど、これなんだ?」

「あー、それはレベルアップが上がったときにもらえるステータスポイントだね。好きな能力に振るといいよ」


 レベルアップ時、ジョブに合った能力が成長する。しかし、それだけでは同じジョブのプレイヤーは同じステータスの者ばかりになってしまう。それだとおもしろくないと<マジカルルカファンタジー>の製作陣はステータスでも個性を出せるよう好きな能力に振れるポイントを用意したのである。


「そんなのがあんのか。だったら、俺は何に振ろっかなー」


 サクはステータス振りに迷っていた。

 武器を装備できないからこそ攻撃に関する能力を少しでも成長させるべきか。逆に攻撃面は完全に諦めて他の要素を伸ばすのか。

 少しの間、黙って一人考える。


「なぁ、ネル。このSPって貯めるのは無理なのか?」

「うん、残念ながらね~。貯められるようにしたらみんな最強ビルドばかりになっておもしろくないからとかいう理由で次のレベルアップまでに振らないとランダムで振り分けられるようになってるんだって」

「かぁー! このゲームの運営は本当にランダムが好きなんだな」

「VRMMOなんて最新技術を扱う人はみんな奇人変人なのかもね」


 ゴゴゴゴゴ。


「ん?」


 二人が話しているとリトルストーンゴーレムが何かを持って近寄ってきた。


「あ、スライムの魔核だ。初めての戦闘でドロップしたんだ。なかなかラッキーだね」

「スライムの魔核って、たしか合成に放り込んだやつか?」

「そー! スライムのドロップアイテムはスライムジェルっていうゼリー状の謎物体の確率が高いからね。基本的に魔核は全部レアドロップ寄りだよ。私はスライムジェルで商品を作ろうと思ってたから逆に魔核が余ってたけど」

「なるほどな。じゃあ、一応俺は運が高いし、魔核が落ちたのはその効果があったのかもな」

「そうかもね!」


 サクはリトルストーンゴーレムから受け取ったスライムの魔核をアイテムボックスへと収納する。


「よーし! ゴーレムがちゃんと戦えるって分かったし、次のターゲット探すか!」

「えっ、SPはどうするの?」

「迷うのも飽きたし、とりあえず腐らなそうな耐と速に振っといた!」


――――――

 サク

 Lv.2 

 ジョブ:合成士

 HP:110 MP:55

 力:3

 魔:3

 技:16

 耐:7

 速:11

 運:26

 スキル:合成

――――――


「そんなてきとーに決めていいのかなぁ……本人がいいならいいんだろうけど」

「ん? なんか言ったか?」

「ううん。なんでもないよ。次の魔物探すんでしょ? スライムよりちょっと強いやつ知ってるからそいつを狙おうよ」


 二人は次なる標的を探して移動を始めるのだった。



読んでいただきありがとうございます。

よければ、ブックマークや下の☆☆☆☆☆で評価をつけてもらえると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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