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武器装備不可縛りで始まるVRMMO  作者: 三田 白兎


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22話 経験不足

 エアーボムを躱した先頭の山賊モンキーがネルのもとへと辿り着く。

 1メートルほどの肉体からすると大きく見える人間用のブロンズソードを横薙ぎに払う。


「あぶなっ!」


 ネルは後ろに跳ぶことでそれを回避する。

 今の一幕を見ていたナツがすかさず銃撃。ピストルから二発の弾丸が放たれて山賊モンキーへと到達。一発はブロンズソードの腹で受け流されるが、もう一発が右肩にめり込む。


 山賊モンキーはキキッと悲鳴を上げて足を止める。


 ネルがベルトに止めていた鞘からナイフを取り出し、隙を晒した魔物へ追撃しようとする。


「ネル、後続がきてるぞ!!」


 咄嗟にサクが叫ぶ。


「大丈夫! 私に任せて。ネルはそのまま攻撃して!!」


 ナツがそのまま攻撃しろと口にする。それを信じたネルは左手で握り締めたナイフを縦に振るう。

 鮮血が飛ぶ。そして顔を斬りつけられた山賊モンキーは光となり消えた。ドロップアイテムはない。


「ダブルバレット!!!」


 先頭の個体を倒し、次に動作に移ろうとするネル。そんな彼女を後続の山賊モンキーが襲う。真っ赤な顔をした魔物は高く跳び上がり、ブロンズソードを振り下ろす。

 ただし、その刃先がネルへ届くことはない。ナツが放った弾丸がピストルから出た瞬間に倍に増えてネルを狙う個体へと襲いかかったのだ。ナツが放った弾丸の数は3発。それが倍になり計6発が一体の山賊モンキーの体を抉った。


「手品かよ!?」

「いや、魔法スキルよ」


 二体目の山賊モンキーが光となり消えていくその間にネルは後続に追いつかれまいと少し下がる。

 山賊モンキーたちも無鉄砲に突っ込めばやられると理解して距離を詰める速度を緩めた。

 それを見たナツはかなりの早業でピストルに弾をこめ直す。


「こっちは残り三体か。このくらいの敵ならやっぱりタンクなしでも勝てるわね」


 ナツはチラッとストーンゴーレムの方を見た。自分たちは戦闘に余裕があるため、味方の戦況を気にしたのである。

 その二体のストーンゴーレムはというと、最初に戦っていた群れをすでに壊滅させていた。サクが使った魔法スキル<スピードアップ>のおかげで猿の速さに勝つことはできなくとも翻弄させることなく攻撃することができたからである。力と耐久が高いストーンゴーレムは速さでかく乱されることさえなければ山賊モンキーレベルの相手であれば容易に倒すことができるようだ。


 しかし、現在相手している二つ目の群れとの戦闘では苦戦を強いられているようだ。サクがかけたバフが切れてしまい、元の鈍足ゴーレムたちに戻ってしまったからである。


「サク、こっちばっか見てないでゴーレムの方も見なさいよ!」

「え?」

「あれどう見てもバフ切れてるわよ?」


 ナツに指摘されてようやくストーンゴーレムたちの状況に気づいたようだ。

 サクは慌てて魔法スキルを使用する。


「ごめん、ストーンゴーレム! スピードアップ!!」


 …………。


 サクが唱えた魔法スキルが発動しない。


「は!? どうなってんだ!!」


 スピードアップ!

 スピードアップ!

 サクは何度も魔法スキルを唱える。

 しかし、スキルうんともすんとも答えてくれない。


「落ち着いてバカ! スキルは魔法かそうでないかに関わらず基本的に有効範囲が設定されてんの。だからその範囲に対象がいなければ不発で終わる!!」


 ナツは残った三体の山賊モンキーへ発砲しつつ、サクへアドバイスを送る。


「なるほど……そっか! じゃあ、行ってくる!!」

「えっ、ちょっと! 反撃手段がないくせに単独で行っちゃダメでしょ!!」


 制止の言葉は聞こえていない。

 サクは真っ直ぐにストーンゴーレムたちのもとへと走っている。


 運特化にしていることでサクはその他のステータスが低いイメージだが、ステ振りで速は14、耐は12まで上げている。そのため決して速くもなければ硬くもないが、それなりに動けてそれなりに攻撃には耐えられるようになっている。もちろんサクの頭の中にそれが情報として浮かんでいるわけではない。がむしゃらに行動しただけである。

 ただ、それでも結果として少しずつ速と耐を上げていたことが功を奏することとなる。


 ストーンゴーレムを襲っている山賊モンキーのうちの一体がサクに気づいた。そして敵と判断し、ブロンズソードを構えながら走り出す。

 サクもすぐにそれを視認。迎え撃つ――ことはできないので、タイミングを見計らい躱そうと試みる。


「あっぶ!」


 速のステータスのおかげか、はたまたそれを最大限まで活かすことのできる運動神経を持ち合わせているからか、初撃の回避に成功する。


「よっと!」


 更に足癖の悪いサクは後ろ蹴りを入れてから前へと走り出した。


 力3の武器装備なしの攻撃。ダメージはほぼなく山賊モンキーはただ少しよろけただけ。


「よし、近づいたぞ! これまでの感覚からして、ここからなら届くだろ!!」


 サクは気づかない。

 背後から追い迫る魔物の影に。


「スピードアップ――――うわああああ!」


 魔法スキルは無事に発動した。

 しかし、直後に先程躱した山賊モンキーに追いつかれて攻撃をされたのだ。


 これはあくまでもゲームである。痛みはほとんどない。しかし、初めて攻撃を受けた感覚とその威力に合わせた衝撃を受けてサクはその場で倒れたのだった。




読んでいただきありがとうございます。

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