20話 スピードアップ
「あ! ブレイドウルフ発見!! サク君、結構足の速い魔物だから魔法スキルを試すのに丁度良い相手だよっ」
サクたちが遭遇したのはブレイドウルフという魔物の小さな群れだ。
「おっ、いいね。じゃあ、早速使ってみるか!」
ブレイドウルフは犬歯が大きく発達していてそれを駆使して戦う狼の魔物である。狼なだけあり移動速度はかなりのもので魔法スキルなしの状態のストーンゴーレムでは絶対に攻撃を当てることはできないだろう。もちろん攻撃してきたところを捕まえたり、広範囲にストーンバレットをばら撒くという力技でどうにかできなくもないが。
「スピードアップ! いけ、ゴーレムたち」
サクはアイテムボックスから二体のストーンゴーレムを取り出すとすぐに魔法スキルをかける。使用した魔法スキル、スピードアップの効果は対象の移動速度上昇。このスキルはステータス値を参照するタイプではなく固定数値分のバフを与えるものである。よって魔の値が低いサクでも問題なく使用できた。
魔法スキルのバフを受けたストーンゴーレムたちは自らブレイドウルフたちの方へと接近していく。
「まあまあ、だな」
「うん。元が遅いからね~」
「これなら私、競歩でも勝てそう」
魔法スキルの効果はあった。だが、ネルの言った通りストーンゴーレムは元の移動速度がかなり遅い。バフを受けてなお、ブレイドウルフに速さで負けるという悲しい絵面になっていた。
「なんか二体くらいこっちくるぞ!」
二体のストーンゴーレムとブレイドウルフの群れが追いかけ合いをしている中。群れからあえて離れたのか、三体のブレイドウルフがサクたちの方へと向かってきている。
「とりあえずエアーボムを――――」
「私に任せなさい」
ネルが魔法スキルを発動しようとする。
しかし、ナツがそれを止めた。そして胸元に手を突っ込むと間からピストルのようなものを取り出した。
「寄るな、ケダモノ」
発砲音が三度鳴る。
耳を劈くような音がサクの鼓膜を叩くとほぼ同時に弾丸がブレイドウルフを捉えた。
「す、すげえ……」
三発三中。
ナツは見事な早撃ちを披露したのだった。
「まぁ、この程度の魔物なら余裕よ」
ナツは得意気な顔で言う。
「あっちももうすぐ終わりそうだね」
三体のブレイドウルフが倒されたことで群れの方にも動揺が走ったようだ。これまで徹底的に速さで翻弄しようと回避優先で動いていた魔物たちが味方が倒された焦りから攻撃的な動きをするようになる。
ストーンゴーレムの体を貫こうと噛みつく。石を砕こうと体当たりする。顔を狙って爪を振るう。どれも生身のサクが受けたならかなりのダメージを与えられるものだが……特性である頑丈Ⅱを持つストーンゴーレムたちには全くと言って良いほどダメージが通っていない。
「ストーンゴーレムってほんと硬いわよね」
ナツが戦ったことがあるかのような口ぶりで呟いた。
「俺の武器であり盾だからな! このくらいやってもらわねえと困るぜ」
「この様子なら山のボスともやり合えそうだし、王都への道中もサク自身のレベル上げでもしておけばそれなりに戦力になれそうね」
サクが生み出すアイテムの質は十分にこの先でも通用する。ナツはそう判断した。
「私も王都まで一緒に連れてってもらうなら何か力になりたいなぁ~」
「ネルはいるだけで楽しいから別にそんな難しい顔で考えなくてもいいぞ?」
「いや、でもな~」
「ちょっとサク? 口にする言葉はしっかり選びなさいよ」
ナツが少し強めの口調でサクに突っかかる。
「事実なんだからいいだろ。あと昔っからナツと遊ぶのも普通に楽しいぞ。うざいことの方が多いけど」
「あっそ。最後のは余計」
三人が話している間にストーンゴーレムたちの戦闘が終了する。二体のストーンゴーレムはそれぞれ全ての攻撃を受け止めながら一体、また一体と確実のブレイドウルフを殴り飛ばしていったのだ。その結果としてストーンゴーレムのたちの周りには大漁のドロップアイテムが散らばっていた。
<レベルアップ! SPを3つ好きな能力に振り分けよう>
<レベルアップ! SPを3つ好きな能力に振り分けよう>
「数がいただけあってレベルが二つも上がったぞ」
「あ、私も一つ上がった。やったー!」
「私はこのくらいじゃもう上がらないわ」
――――――
サク
Lv.10
ジョブ:合成士
HP:190 MP:95
力:3
魔:3
技:24
耐:12
速:14
運:58
スキル:合成
<装備>
武器(右):装備不可
武器(左):装備不可
頭:小鬼の面
体上:劣竜の皮鎧(上)
体下:劣竜の皮鎧(下)
靴:黒兎の跳長靴
装飾品1:シルバーブレスレット
装飾品2:―
装飾品3:―
――――――
「ステータス振るのも終わりっと。流石にレベルが10にもなるとこの作業も慣れてきたな」
「サク君はしっかりと方針決めたからステ振りに迷うことないもんね」
「おう! 運特化ステータス極めていくぜ」
「運特化って……はぁ」
ここで始めたサクのステ振り方針を聞いたナツが大きなため息を吐く。それと同時にどうして今回ドロップアイテムがこれほどまでに多いのか理解したのだった。
読んでいただきありがとうございます。
よければ、ブックマークや下の☆☆☆☆☆で評価をつけてもらえると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。