2話 合成士
複数話投稿は息切れしちゃいそうなので毎日投稿目標にがんばります。
「まず俺のステータスがこれです」
サクは自身のステータスウィンドウを呼び出し、ネルに見えるよう角度を変える。
「どれどれ…………見えないですね。あ、そうだ。私たちまだフレンドになってないからだ」
「ステータスって誰のでも見られるわけじゃないんですか?」
VRMMO初挑戦のサクは<マジカルルカファンタジー>におけるステータスの重要性をまだ理解していない。そのため誰のものでもステータス表示中に覗き込んでしまえば見えると思っていたようである。
「はい。ゲームの仕様上一部例外を除いてフレンドになった相手にしかステータスは見せられないようになっているんです」
「なるほど! じゃあ、なりましょうか。フレンド」
「もちろんです!!」
ネルにフレンド欄の開き方から申請の送り方まで一通り教わる。
「よしっ、これで完了です! あと無事フレンドになれたわけですし、そろそろ敬語やめませんか?」
「俺は全然おっけーですよ! むしろ敬語苦手だし」
「じゃあ、今から敬語なしで! よろしくね、サク君」
「こちらこそよろしく! ネル」
「よ~し! じゃあ、そろそろ本題に取りかかろっか」
ネルがほっぺをパンっと軽く叩き表情を引き締めた。
「よろしく頼む!」
サクは今度こそステータスウィンドウをネルの方へと向ける。
「ふ~むふむ。なるほど? ちょっと待って。ステータスおかしくない? 武器装備不可っていうのもそうだけど、ステータスの振り方も変だし、何より<合成士>なんてジョブ聞いたことないよ?」
「え、俺のステータスって武器装備不可以外も変なの?」
「もちろん!!!」
ネルは首がもげるのではないかというくらい頭をブンブンと振る。
「もしかしてランダム設定って失敗だったのか?」
サクは設定することが面倒だからと髪色と身長を10センチ盛る以外は全てランダムを選んだ。つまりステータス面は完全ランダムで決まっているのである。その結果、ネルが驚くほど偏ったものが完成してしまった。
自身の過ちを理解した彼の額から、ツーっと冷たい雫が垂れる。
「当たり前だよ!? アカウント作成のインターバルが三ヶ月のゲームでランダム設定を選ぶなんて正気じゃないから!!!」
「マジ、か。俺やっちまった」
サクは思わず頭を抱える。
「気を落とさないで、は無理か。でも、まだ救いがある可能性はあるよ!」
「え、マジで? やったぜ!」
「立ち直りはやっ!」
何事もなかったかのような顔に戻っているサクを見てネルは思わず突っ込んでしまう。
「それが数少ない俺の取り柄だからな!」
「それあんまり自信満々に言うことじゃないと思うよ? でも、まいっか。ずっと落ち込んだままだと私も話づらくなるし」
更に良い笑顔とサムズアップを返されて、ネルはサクがどういう人物かようやく理解し始めた。
「だろ? で、その救いっての教えてくれよ! 気になって仕方ないって」
「サク君のジョブみたいことないってさっき言ったよね? それのことだよ」
「<合成士>のことか?」
「うん。私、けっこう攻略サイトとか見るタイプなんだけど、どこにも<合成士>って載ってないんだよね。それでサク君がランダム設定を使ったって言うからもしかしたらレアジョブかもしれないなって思ったの」
<マジカルルカファンタジー>はその膨大な量のジョブやスキルを売りにしている。
その中にはほぼ一点ものと言っても良いものも存在する。そのうちの一つがレアジョブだ。レアジョブはランダム設定を選んだ場合のみ、超低確率で就くことができるジョブのこと。そのほとんどはレアなだけあり、それ相応の優秀なスキルを得られるため誰もが羨むものである。
ただし、このゲームはネルの口にした通り新たなアカウントを作成するために前回作成時から三ヶ月経過していなければならない。よって多くのプレイヤーはそのような博打をせずに選択可能なジョブの中から好きなものを選ぶ。
「ほ~ん。もし<合成士>がレアジョブだったら、武器装備不可だとしても何かすごいことができるかもしれないってことか」
ネルからランダム設定について説明を受けたサクはステータスをじっと見つめながらそう口にした。
「そういうこと! というかジョブとスキル以外に怪しいところはないから、武器装備不可の理由にもそこが関係してそうだし。だからとにかくスキルの詳細を見てみてようよ」
促されるままサクは自身が唯一所持するスキルの詳細を開く。
――――――
合成……スキルを発動すると合成の渦が現れる。そこへ二つ以上のアイテムを捧げるとそれをもとに新たなアイテムが合成される。なお、合成は失敗することがあり、その場合捧げたアイテムは消失する。消費MP10
――――――
「う~ん、わからん」
スキルの詳細を見てもサクはいまいちピンとこなかった。
一方でネルの方は先ほどまでと違い手をワキワキと動かしながら、興奮気味である。
「これってガチャみたいなものだよ! ガチャ! しかもリアルマネー使わずにゲーム内のアイテム適当に放り込むだけでいい!! サク君さっそくスキル使っちゃおう!!!」
「お、おう。でも、俺アイテムまだ何も――――」
「そんなの私が持ってるのあげるから! 早くやるよ!! 捧げるものによって排出されるアイテムは固定なのかとか、合成の成功率はどのくらいなのかとか色々調べないいけないんだから!!!」
ネルの勢いに押されるままサクはスキルを使うことにしたのだった。
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