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19話 ストーンゴーレム

 一行は山に辿り着いた。

 早速、ストーンゴーレムの性能とサクの魔法スキルの効果を調べる的を探している。


「サク君あそこにワイルドボアがいるよ~」


 ネルが見つけたのは深緑の体毛を持つ大型の猪だった。

 ワイルドボアは足元に生えているキノコを食べていて、サクたちに気づく様子はない。


「了解! 早速ゴーレム出すわ」

「ねぇ、だからゴーレムって何のこと?」


 ナツは<ベビマイラのぬいぐるみ>の件でしか合成について知らない。そのためゴーレムという魔物は知っていてもアイテムは知らない。よってサクとネルの会話の意味を理解できずにいた。


「ま、見てりゃわかるって」


 サクはアイテムボックスからストーンゴーレムを二体取り出した。


「はぁ!?」


 自身の幼馴染が突然アイテムボックスから魔物を取り出した。そう勘違いしたナツは驚きのあまり顎が外れそうになる。


「どうだ、すげーだろ?」

「すげー、とかじゃないわよ! アイテムボックスってアイテムしか入らないようになってるのよ? どうしてそこから魔物なんて出てくるわけ!?」

「魔物? 何言ってんだ。アイテムボックスから取り出せたってことはこのゴーレムはアイテムに決まってんだろ」


 フゴッ?


「「「あ」」」


 大声で言い合いを始めたため、標的であるワイルドボアが三人の存在に気づいてしまった。


「二人とも構えて! ボア系はバカだからいきなり突進してくるわよ」

「まぁまぁ、ナツちゃん。そう焦らなくて大丈夫だよ。ね? サク君」

「たぶんな!」

「私は別に焦ってないって。ただ、二人が突進されたらヤバいかなって思っただけ!」


 ナツの言葉通りワイルドボアが駆け出した。

 サクとネルはその場から一切動く気配がない。


「よし、ゴーレムたち止めてくれ」


 主からの命令を受けたストーンゴーレム二体が重い体を動かし始める。砂埃を上げながら動く二体はワイルドボアの進路に立ちふさがる。


 そして次の瞬間重々しい音を発しながら衝突した。


 フゴ?????


 自慢の突進が止められてしまったワイルドボアは困惑の鳴き声を上げる。


「そのまま反撃だ!」


 一体のストーンゴーレムは突進を受け止めた体勢のままワイルドボアを捕まえる。そしてもう一体がスキルを発動させた。ストレートパンチだ。リトルストーンゴーレムの頃は持っていなかったスキル。効果は通常攻撃より威力の高いストレートパンチを繰り出すというもの。シンプルだが、癖のない扱いやすいものだ。


 ワイルドボアは一生懸命に体を捻り拘束から逃れようとする。ただ、ストーンゴーレムに力で勝つことはできない様子。

 ストーンゴーレムは身動きを取れない標的の顔へと右ストレートを叩き込んだ。


 一撃瞬殺。


 ワイルドボアは倒されてドロップアイテムだけが残る。


「やっぱりリトルが取れると段違いに強くなるんだな」

「そもそもリトルストーンゴーレムとワイルドボアを戦わせたことがないから、どれくらい強くなったかはあんまり分からないけどね~」


 二人が吞気に話している隣でナツが真顔になっている。


「あのさ、本当に何が何だか分からないんだけど」

「あぁーっと、どれから説明すればいいんだ?」

「まずはサク君が特別な理由からじゃないかな」


 これ以上ナツだけ置いてけぼりにするのは可哀想だと感じたサクが説明をしようとする。だが、彼はそういった役割に不向きな上、どれが説明すべきことなのかも分かっていない。それを見かねたネルが助け船を出した。


 ネルの助言通り、サクはゲームを始めた段階で起こった悲劇をナツへ伝えた。そしてここへ到るまでの道のりを順番に話していく。


「――――なるほど。サクがやっぱりバカだったって話ね」


 全てを聞いたナツの感想がこれである。


「おい、バカって言うなよ。そもそも誘ったナツが注意事項くらい教えとけばいい話だったろ?」

「変に情報伝えて初めてのVRMMO体験に水を差したくなかったのよ。だってネタバレとか嫌いじゃない」

「まぁ、それはそうだけど」


 サクは不満そうな顔をしながら、ストーンゴーレムが拾ってきたドロップアイテムをアイテムボックスへと取り込む。


「まぁまぁ。今となっては結果オーライだったわけだし、いいんじゃないかな~」

「確かにな! 合成のおかげで武器は装備できないけど、ゴーレム作れるし。こういうちょっと変な遊び方するのもまたおもしろいし」


 サクがニカっと白い歯を見せて笑う。


「ほんとおめでたい頭してるわ。でも、ゲームやめるって言われなくてよかった。そもそも私がこのゲームに誘ったのは楽しんでほしいからだし」

「安心しろって。やめねえよ。せっかくだから何かしら一つくらい一番乗りした実績でも手に入れられるといいな!」


 この発言をした理由は特にない。ただ、純粋にそう思ったからサクは言葉を口にした。


「いいね~、その調子だよサク君! 私は流石に戦闘ではついていけないかもだけど……これからも何か力になれるといいなぁ」

「一番乗りってそんな簡単なことじゃないんだけど――――はぁ。まぁ、いいわ。これはゲームだし、サクが楽しい思えるようにするのが一番だから」


 一つ目的ができたサクは魔法スキルを試すために次なる標的を探し始める。先程の戦闘では使うまでもなかったため、次はもう少し強い敵がいいなと思いながら。




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