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武器装備不可縛りで始まるVRMMO  作者: 三田 白兎


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17話 襲撃者?

「ネルいるか~?」


 朝7時、優斗は早速<マジカルルカファンタジー>を始めていた。

 前日に約束した通りネルを呼ぶために彼女の店を訪ねている。

 店には既にオープンのパネルが立っていたため、サクは店内へと入った。


「いらっしゃいま――ってサク君か! おはよ~!!」

「おう! おはよ」


 笑顔のネルがサクを迎え入れる。

 そしてネルはなぜか外へと向かった。


「閉店のお時間で~す!」


 店内にはサク以外人がいないため、すぐに店を閉めるようだ。


「ネルの店って実はあんまり客いないのか?」

「えっ? 失礼だなぁ、サク君は。ちゃーんとお客さんはいるよ? ただ扱っているものが美術品寄りだからね。値段も結構するし、そういうお客さんは先にアポ取ってからくることが多いの。だからそれ以外のときはふら~っと気になって入ってきた新規さんくらいしか姿がないの」


 ネルは無神経な質問にも嫌な顔を見せずに答える。


「なるほど。じゃあ、今日は客から店に行くって連絡はきてないわけか?」

「うん! そもそも予定があったら昨日あんなこと言わないよ。ちゃんと時間を確保できるから一緒に遊ぼうねって言ったの」

「ならいいや。早速山に行こうぜ!」


 二人は<ねるのみせ>から出ると南門へと向かう。

 道中の青果店でネルが青いぶどうのようなものを購入して食べ始める。


「それうまいのか?」

「もちろん! 基本味は見た目通りぶどうっぽいんだけど、甘さが段違いなんだよねー」


 サクの質問に答えながら、一つまた一つと小さな口へと果実が運ばれていく。


「今度、俺も買ってみるか~」


 サクがなんとなく口にした言葉を聞いたネルは立ち止まる。


「どうしたんだ? 急に止まって」


 ネルが足を止めたため、サクがそちらを振り返る。


「好物。おいしい。でも、サク君友達だし…………うん、これ一つあげる」


 自身が手に持つ果実をサクへと差し出す。


「え、いいのか?」


 相当迷ってから差し出す一連の流れを見ていただけに、本当に受け取っていいものかとサクは戸惑う。


「うん、いいの。また買えばいいし!」

「そっか。なら、もらうわ。ありがと!」


 サクはネルから青いぶどうのような果実を受け取る。そしてそのまま口へと運んだ。


「うっっっっっま!!!!!!!!」


 噛んだ瞬間溢れる果汁。

 特濃の甘味と僅かな酸味が口いっぱいに広がる。

 そして噛み締めるたびに鼻へと抜ける独特の風味。ぶどうのようなでも違うような。とにかく良い香りが口内を満たしていた。


「サク君にもこの良さが分かったかね?」

「あぁ! 今日、魔物を倒してドロップアイテムが出たら売ってこれ買うわ」

「いいね! でも、いくらおいしいからって全部これに注ぎ込んじゃだめだよ?」

「流石に分かってるって。合成の素材も置いときたいし、他にも金を使うところはあるから」

「ならよし」


 南門へ辿り着く頃には果実はなくなっていた。


「よしっ、この辺はスライムメインだし私が倒すね。ストーンゴーレムで戦いながら進むと移動が遅くなりそうだし」

「え、せっかくスピードアップを覚えたんだし戦わせたかったのに」

「サク君MPは無限にあるわけじゃないんだよ? 節約はしておかないと」

「わかった」


「いたああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 方針が決まり、二人がいざ出発しようというところでとんでもない大声が響き渡る。


「げっ!? この声は」

「あんたの大好きな幼馴染のナツよ」


 大声の主の正体。それはサクの幼馴染のゲーマー女子――川口夏希だった。ゲームのアバターであるため髪色などは変わっているものの、顔や声はほぼそのままである。

 現実同様に10cm上からサクを見下げている。


「分かってるわ、バカ。俺こっちだとサクな」

「そのままじゃん」

「そっちもな」


「あの~、その子お友達?」


 突然、目の前に現れた青髪ロング超絶美人とサクが親し気だったため、ネルは知り合いかと問う。


「そう。俺をこのゲーム誘った幼馴染だよ。ただ、今日はネルと予定があるからってこいつの誘い断ったはずなんだけど……」

「なーんか嫌な予感したんだよね。悪い虫が寄ってきてるような感覚? とにかく探し回って正解だったわ」

「悪い虫ってなんだよ。人の友達のこと悪く言うな」

「はいはい、ごめーんね」


 憎たらしい顔で口だけの謝罪をするナツだが、外見が整い過ぎているせいかそれすら様になる。


「ま、まぁ、私は気にしないからサク君も怒んないでよ」

「いや、今のは失礼にもほどがあるからさ」

「へぇ~、二人結構仲良さそうだね」


 ナツの額にピキピキと青筋が立つ。


「まぁ、昨日知り合ったばっかとは思えないくらい仲良くなったかもな」


 サクはナツの様子に一切気づかず火に油を注ぐ。

 一方、ネルはナツの反応を見て一つの事実に気づいた。

 あ、この人サク君のこと大好きだ。と。

 一度、そう気づいてしまうともう止まらない。ぐいーーーんと口角が上がり、目尻が下がる。カプ厨として、このような素晴らしい二人組を近くで見られるチャンスを得られたことを神へ感謝した。


「サク君、いいの。ぜーんぶ大丈夫。私は今とても幸せだよ」

「はい? おい、ネルどうしちまったんだよ。にやにやしながらおかしなこと言うなよ……どうすんだ、ナツ! お前が酷いこと言ったからネルが壊れたじゃねえか!!!」


 ネルが急にニヤつき始めたため、サクは困惑する。


「た、たしかにヤバそうな顔してるけど、わ、私のせいじゃないでしょ!」

「うっせー、バカ! 反省しろ。そして謝れ!!」

「いいんだよ二人とも。サク君もナツちゃんもこれからもよろしくね~」


 ネルの満面の笑みは一切崩れることなく保たれている。


「よ、よろしく?」


 おかしな状況のせいか、ナツの態度も先程までと少し変わる。ネルと直接話そうとしなかった彼女が素直に返事したのである。


「うんうん、さいこ~」


 ネルは<マジカルルカファンタジー>初めて以来最高の幸福を感じていたのだった。




読んでいただきありがとうございます。

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