15話 スキルスクロール
「うお~、すげー! 巻物みたいなのが大量にあんのな!!」
近場のNPCのショップでドロップアイテムを売り捌いた後。
二人はスキルスクロールが売っているスクロールショップを訪れていた。現状、スキルスクロールを作れたというプレイヤーは見つかっていない。そのため二人が訪れたのはこれまたNPCのショップである。
「ファンタジー感あっていいよね、ここ」
少し狭めの木造店舗。
古い紙の匂いが漂う店内。
壁一面に棚があり、巻物状態のスキルスクロールが所狭しと陳列されている。
落ち着いたBGMも流れており、どこか赴きのある場所だった。
「あぁ! あと地味にスキルスクロールがカラフルで綺麗だな」
「これはね、外側の色によってどんなスキルが載っているか分かるようになってるんだよ~」
「へ~、ちゃんと色分けに意味があるのか」
スキルスクロールについての説明を受けつつ、サクは店内を見て回る。
「ちなみに私がサク君におすすめするのは白、黒、紫のやつだよ!」
「それがバフだかデバフだかってやつなのか?」
「正解! 白がバフで黒がデバフ。あと紫は状態異常系かな」
ネルはいくつかスクロールをピックアップし、サクに手渡す。
「その中でも特にサク君に合うかなっていうのがこれ」
サクは手渡されたスキルスクロールの詳細を確認する。
――<スピードダウンのスキルスクロール>――
このアイテムを使用すると魔法スキル<スピードダウン>を習得することができる。
一度使用すると消滅する。
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――<スピードアップのスキルスクロール>――
このアイテムを使用すると魔法スキル<スピードアップ>を習得することができる。
一度使用すると消滅する。
――――――――――――――――――――――
――<ポイズンショットのスキルスクロール>――
このアイテムを使用すると魔法スキル<ポイズンショット>を習得することができる。
一度使用すると消滅する。
――――――――――――――――――――――
「どう? どれも良さそうでしょ?」
「すまん。肝心のスキルの効果が載ってない」
「えっ? あぁ、そういえばスキルスクロールってちょっと不親切な仕様になってるんだっけ?」
スキルスクロールを鑑定しても覚えられるスキルの効果は見られない。これは<マジカルルカファンタジー>プレイヤーたちから運営へ多くの改善要求が出ている要素である。
スキルの効果を知るためには攻略サイト等の外部情報へ毎回アクセスする必要があるのだ。唯一の救いはゲーム内からでも外部サイトへアクセスできるようになっていることだろう。仮に調べるたびにログアウトして現実へ戻らないといけなかった場合かなり面倒である。
「じゃあ、今回は私が三つのスキルの効果を教えてあげるね」
ネルが最初に教えたのは白のスキルスクロールで習得可能なスキルの内容についてだ。習得可能なバフ系魔法スキル<スピードアップ>は名称通りで、指定した対象の移動速度を上昇させるもの。リトルストーンゴーレムたちの移動が遅かったことを加味してネルはこれをおすすめした。
次に説明したのが黒のスキルスクロール。デバフ系魔法スキル<スピードダウン>を習得できるものだ。こちらもまた名称通り、対象の移動速度を低下させるというもの。これをサクへ勧める理由は<スピードアップ>と同じである。敵のスピードを落としてゴーレムの足の遅さという弱点をなくそうという考えである。
そして最後は紫のスキルスクロール。これは状態異常系の魔法スキル<ポイズンショット>を習得できる。<ポイズンショット>は拳ほどの大きさの毒の塊を狙った場所へ飛ばすというもの。命中すれば対象を毒状態にできる。毒状態になると一定時間経過するごとに割合でダメージを与えることができるため、魔の値が低いサクでもしっかりと効果を期待できる。
「――――確かに俺にぴったりかもな」
ネルから一通りの説明を聞いたサクは素直に思ったことを呟いた。
「でしょ?」
「あぁ。ただ、どれにするかが問題だよな~。ドロップアイテムを売ったとはいえ、俺の手持ちじゃ一つ買うので精一杯だし」
合成にアイテムを使用し、残りものを売っただけである。マグマゴーレムの魔核以外全てを手放したがそれほどの金額にはならなかった。
「どれが一番使ってみたいとかある?」
「特にないかなぁ」
「なら、私的に特におすすめなのは白のスキルスクロールだよ!」
「スピードアップって魔法スキルのやつか?」
「そう! これだけ唯一味方を対象にする魔法スキルだからさ。戦闘始まる前にあらかじめ使用しておいたりとかできて便利かなって」
一度目のバフは戦闘開始前にかける。
これは<マジカルルカファンタジー>における定石だ。
攻略サイトや掲示板等で口酸っぱく言われ続けている。
「へ~、そういう使い方もあるのか。だったら、これに決定だな!」
サクは白のスキルスクロールを手に取りカウンターにいるNPCへと手渡す。そして代金の支払いを済ませてショップを出るのだった。
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