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12話 北門の先

 防具を手に入れたサクは強敵を求めて北門から町の外へと出た。


「風景が全然違うな!」


 南門から出た先は整備された道と綺麗な花畑だった。

 しかし、北門の外は違う。


「道も整備もされてないもんね~。あとあっつい!」


 北門から伸びるは魔物が通り作られたであろう歪な道。

 先に待つのは活火山である。

 門を出た瞬間から熱風が吹き荒れるため、町民のNPCはまずこちらから外へ出ることはない。


「確かにな! でも、夏の体育館よりはまだマシだ」


 サクが思い出すのはバレー部だった頃の景色。

 夏休みは合宿や遠征等があるものの、基本は体育館で練習である。彼が高校生だった頃はまだギリギリ体育館にエアコンがついていなかったため、業務用扇風機が回っていてなお蒸し暑い地獄のような空間だった。

 今、歩いているエリアも相当暑く汗が出る。それでも空気はカラッとしているため、体育館よりはいくらかマシだった。


「おっ、もしかしてサク君運動部?」

「高校のときはな。今は大学生でサークルにも入ってない」

「ほえ~、だったら私より先輩だよ。敬語に戻そっかな~」

「やめろやめろ。今まで通りがいいよ」

「分かってる。冗談だよ」


 二人が和気あいあいと話しながら進んでいると、他のプレイヤーが数名立ち止まっているところに遭遇する。


「ネル、あいつら何してるんだ?」


 プレイヤーたちは皆、一生懸命にツルハシのようなものをそこら中にある岩へと振るっていた。


「あれはねー、アイテムを採掘してるんだよ」

「マジ!? 岩殴ればアイテム手に入んの?」


 サクの目がキラーンっと輝く。


「そうだよ。ただし、あの人たちみたいにツルハシっていうアイテムを使わないといけないけどね」

「ちなみにネルは――――」

「持ってないよ? あれ使うの結構重労働で疲れるんだもん」


 サクが全てを言葉にする前にネルから返事がくる。彼の輝く瞳とこれまでの言動から何を言わんとしているか予測されたのだ。


「ないのか。くそぉ……」

「あってもサク君が採掘するのは私以上に大変だよ? あれ力と技と耐のステータス値を参照するらしいから」

「げっ、俺が高いの技だけだ」

「そういうこと。もし欲しい素材があるなら知り合いに頼むなり、店やオークションで買う方がいいの」

「くっ、今回は諦めるか」

「えらいえらいっ」


 汗を大量に流しながら、熱心に採掘するプレイヤーを横目に二人は先へと進む。


「にしても敵と遭遇しないな。道が整備されてないからもっと危ないと思ってたのに」

「この辺りは有名な採掘スポットだからね。みんなここへくるとまず周辺の魔物を狩ることから始めるんだよ」

「全部狩り尽くされたってわけか」

「そっ。だから魔物と戦うならもう少し奥だね」


 ――――そして北門から歩いて一時間弱。

 ついにサクの待ち望んでいた瞬間が訪れる。


「サク君、魔物がいるよ。しかも私たちに丁度いいのが」


 ネルが指で示す先には二足歩行の溶岩の塊がいた。

 グツグツと熱気を放つ体は歩く火山と言っても良い。


「あれは……なんだ?」

「ゴーレムだよ。ゴーレム!」

「あれもそうなのか!? ってことは、ドロップアイテムを集めればあいつを俺も……」


 ゴーレムという言葉を聞いたサクはすぐに合成のことを思い出す。初めて合成したのがリトルストーンゴーレム。ならば種類こそ違うものの、同じゴーレムであるあの溶岩の塊も手に入るのではないかと。


「作れるかも! ただ、マグマゴーレムはここに出る魔物で一番強いから倒すのが大変だけど」

「まぁ、そこはうちのゴーレム二体が戦ってくれるから問題ねえって! ネル早速、倒そうぜ!!」

「おっけー! 私も今回から参戦するね」


 ある程度接近したところで二人の存在にマグマゴーレムが気づく。


「頼むぜ、ゴーレムたち! あの敵を倒してくれ」


 サクはアイテムボックスからリトルストーンゴーレムを二体取り出し、マグマゴーレムを倒せと指示を出す。


 指示を聞いたリトルストーンゴーレム二体は同じタイミングで魔法スキルを発動する。ストーンバレットだ。大量の小石がマグマゴーレムへと放たれる。


「当たってるな。これであと1分もしないうちに倒せるだ――ええ!? あいつ撃たれながら近づいてくる!!」

「今までみたいに簡単には倒せないよ。マグマゴーレムはサク君のゴーレムたちと同じ特性を持ってるから!」


 これまで相対してきた魔物は全てストーンバレットに対抗できずに倒されてきた。しかし、ここにきて初めてこの魔法スキルを真正面から受け止めながら攻撃をしようとしてくる魔物が現れた。

 サクは少しばかり動揺しているが、ネルの方は落ち着いている。敵の強さを知っていたため、こうなることも予測していたのだろう。


「サク君はもっと下がった方がいいよ。防具のおかげで一撃で倒されたりはしないけど、有効な反撃手段もないから」

「そう、だな。よし、こっからが本番だ。俺はもっと下がるから頼むぞ、ゴーレムたち!」


 これまで一方的な戦いを繰り広げてきたサクたち。そのため彼にとって初の強敵との戦闘が幕を開けるのだった。




読んでいただきありがとうございます。

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これからもよろしくお願いします。

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