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11話 防具を手に入れた

感想についてですが、他作品含めて返信しないスタイルでやっています。ただ、しっかり読んでいますし、もらえると喜びます!

「ウェルシーさ~ん、やっほー」

「ども、はじめまして」


 <ねるのおみせ>から歩くこと数分。ネルの店舗がある地域よりワンランク上の高級志向店舗が並ぶ地域。そこにひときわ目立つガラス張りの<メルヴェーユ>という店がある。

 サクは防具を揃えるためにネルの紹介でここへ足を踏み入れたのだった。


「あら、ネルちゃ~ん。相変わらず小動物みたいできゅ~とね」


 店に入ると一人のプレイヤーが立っていた。

 紫のツインテール、ゴスロリっぽい服。そしてかなりの低身長。顔のキャラメイクも幼い寄りである。

 ただし、声は渋みのある四十代の男性それ。


「それからそっちの坊やははじめましてね。ワタシはこの<メルヴェーユ>の店主、ウェルシーよ。よ・ろ・し・く」

「オーマイガー!」


 個性のちゃんぽんのような存在が目の前に現れたことでサクはフリーズした。そして言葉に詰まった挙句、素直に浮かんだ言葉は吐き出してしまう。


「ちょ、サク君!?」


 隣にいるサクが明らかに壊れてしまっているため、ネルは困惑する。


「あら? 坊やにはワタシという存在自体が早かったかしらね」


 若干失礼な返しをされたウェルシー本人は気にする様子もなし。結果として一番あたふたしているのはネルという状況が生み出される。


「それでネルちゃん、今日はどういったご用件で?」

「えっ、あっ、そうだ。隣にいるサク君の防具一式を買いたくて」

「まぁ、うちにくるってことは防具関係よね。でも、その子初期装備だけど大丈夫? ここの装備がお高めだってことはネルちゃん知ってるわよね」


 防具を取り扱う店の店主なだけあり、サクの装備から懐事情をすぐに察する。実際にサクの手持ちで<メルヴェーユ>の商品は小物ですら買うことはできないだろう。


「そこは私が支払いをするので問題ありません」

「へ~、ネルちゃんが。ま・さ・か、ほの字なわけ?」


 ウェルシーは体をくねくねとしならせる。ゴスロリ少女の外見ですら中和できない絶妙に気持ち悪い動き。これまでこれを見たものの半数近くは即座に退店している。


「あの~、ほの字ってどういう意味ですか?」


 ただネルはそんな動きのことなど欠片も気にしていない。むしろほの字という言葉がひっかかり、意味を問う。


「あらっ、ネルちゃん知らないの? これがジェネレーションギャップってやつかしら。つまりはその子に惚れてるのってこと」

「へぇ~、そういう意味だったんですね。勉強になります!」

「いや、覚えなくていいわよ? こんな言葉の意味。どうせおじさんおばさんしか言わないし。それより! どうなのよ」

「サク君のことですか? 今日出会ったばかりですし、好きも嫌いもないですよ。ただ、おもしろい人だし、これからもフレンドとして一緒に遊べたらいいなとは思いますけど」


 ネルの素直な言葉を聞いたウェルシーは内心で『ネルちゃんってやっぱりいいわぁ』と叫んだ。


「なるほどねぇ。でも、それならなおさらどうして出会ったばかりのその坊やにお高い防具なんて奢ってあげるの?」

「別に奢るわけじゃないんです。私はすでに対価としてアイテムをサク君からもらっていますから。そのお返しとして防具一式をプレゼントするってことになったんです」

「ちゃ~んとお互いにメリットがあるってわけね。ならいいわ」


 ウェルシーはそのアイテムとやらが気になったが、あえて口にすることはなかった。ネルが何か言わずにぼかしたということは知られたくないということだろうと察したのである。


「坊や、そろそろ起きなさい! さもないと濃厚なチッスしちゃうわよ?」

「ふぇあ!?」


 ちゅっちゅじゅる。

 ウェルシーがその場で唇を鳴らした。起きなければ直接するぞと言わんばかりの熱い視線がサクへと注がれる。

 あまりに不快な音だったため、サクの意識が戻る。


「ネル、俺どうなってた!?」

「う~ん、わかんない」

「坊や目覚めたわね! だったら、早速防具選ぶわよ。どういったタイプのものが欲しいのか言ってごらんなさい!!」

「はい? はい。はい!」

「はい、は一回!」

「はい!」


 ネルは隣で繰り広げられるやり取りを笑顔で眺める。


「それで注文は?」

「えと、そうだな……防御力はしっかりあるけど、動きやすいものがいいかな?」

「防御力と機動力どちらも欲しいなんて中々強欲な注文ねぇ」

「俺ちょっと事情があって戦闘強くないんで、望む基準が上がるんすよ」

「ふ~ん」


 ネルちゃんがうちの店の商品奢るくらいのアイテムを手に入れられる。もしくは作れるって考えると、戦闘系ジョブじゃない可能性が高いわ。前者の場合は戦闘でそのアイテムを得た可能性もあるけど、そんな子が今まで初期装備でいる理由がないしね。


 ウェルシーは即座にサクの背景や状態を予測する。

 これまで数多のプレイヤーへ防具を売ってきた彼女からすると簡単なことだった。


「よしっ、坊やの要望に応えるなら……これとこれとこれ。あとこのブレスレットはおまけよ」


――――――

<装備>

 武器(右):装備不可

 武器(左):装備不可

 頭:小鬼の面

 体上:劣竜の皮鎧(上)

 体下:劣竜の皮鎧(下)

 靴:黒兎の跳長靴

 装飾品1:シルバーブレスレット

 装飾品2:―

 装飾品3:―

――――――


「ネル、どう? 全部装備してみたんだけど」


 緑の鬼の面を顔ではなく頭に。

 煤けた黒いに近い赤の皮鎧でしっかりと全身を守り、右腕にはごつめの銀のブレスレットを。

 足元も黒を基調としたブーツのような靴で。

 それまでの安い布切れのような装備とは見てくれから大きく違う。


「サク君肩幅あるから鎧に合うね~。あと靴かわいい」

「あざす。褒められると嬉しいな」


 サクは恥ずかし気に頬をかく。


「私の目から見てもお似合いよ? 坊や」

「ど、どうも」

「性能も次の町でも通用するようなものだから安心しなさいな」


 こうしてサクは防具を手に入れることができたのだった。




読んでいただきありがとうございます。

よければ、ブックマークや下の☆☆☆☆☆で評価をつけてもらえると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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