天候悪化、俺、死亡
俺は星が好きだ。
星が好きな高校2年生だ。友達はいない。彼女なんてものはもちろんいない。1年と半年前、天体観測部に入部した。
入部した頃は、こんなに友達も彼女も出来ないとは思わなかった。
「来週は野外観測!」とデカデカと書かれた黒板を見て、俺は絶望する。
3ヶ月に1回ある野外観測の時は、観測の1週間前に必ず2人組みを作る時間があり、その2人組みで当日観測する。
とにかく俺は絶望する。
天体観測部に所属するメンバーは17人。つまり1人余る。俺はコミュニケーションが嫌いだ。ここで俺が余り、1人になれば余計なコミュニケーションを取らずに済む。って、こっちに近づいてくるあの三つ編みは…!
「天音さん、元気出してくださいよ!折角の野外観測ですよ!」
あぁ、やはり朝比奈部長だ。俺に話しかけてくれる唯一の赤の他人。それ以上俺に話しかけないでくれと言いたい。返事しないと感じ悪く思われると言われるが、極力返事はしない主義なんだ俺は…。
「天音さん?聞いてますか?」
もう返事するしか選択肢はないのか…
「き、聞いてます先輩…」
「良かった!じゃ、またペア決めの時にね!」
……返事できた。今日の部活内で初めて話した気がするのは何故だろうな…
◇◇◇◇◇◇◇◇
思ったとおり、俺は1人になった。さぁ、今日の観測場所はどこだ、部長?
「今日は裏山で観測です。夜8時にジャージで正門前に集合です。必ず名札をつけてきてくださいね」
部の活動が終わる6時頃、野外観測の時は必ずと言っていいほどそう言われる。
ジャージに名札をつけて……名札がいるのか!?聞いてないぞ!?
なんでも顧問がなんかに配慮してつけろと言ったらしい…
とにかく早く帰って夜食を買いに行かないとな…名札も探す必要があるしな…
◇◇◇◇◇◇◇
俺は『和ノ川』と刻印された名札をつける。やはり1人で野外活動するのは楽な気がする。そんなことを思いながら、夜食を入れたビニール袋を持って玄関のドアを開ける。晴れている、いい観測日和だ。学校に向かう道、なぜか逆ナンパされたが無視無視。俺の使う通学路は治安が悪すぎる。そんなことを考えてると正門に着いた。まさかの一番最後…だと!?
「全員揃ったので、山登りを開始します。今回は山の南側を使い観測します。」
南側か…とにかく俺は山頂を目指すとするか……ん?急に曇ってきたな…、さては天気予報をしっかり見なかったなあの顧問?
空からゴロゴロ言ってるし、雷…?
ドッカーン!!
…え?
う、撃たれ…!?
死因が雷とか信じたくないんだ俺は!
全身ビリビリする…やべぇ頭も回んなくなってきた……
まだ死にたくない!彼女だってまだいないんだ!
「天音さん!」
最期に聞いた声は朝比奈部長の声だった。
そして、俺は意識を失った